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NEOびじゅつじゅんびしつ 自分で作ったお皿でおもてなしする店員さんに!

【こどもアートLabレポート④】
子どもたちが自分たちの手で自分たちの夢を叶えるプロジェクト「NEOびじゅつじゅんびしつ」。2021年度の「NEOび」レポートその2は、「自分でデザインしたお皿で料理を出すレストランの店員になりたい」の活動報告です。メンバー5人は、自作のお皿でみんなをおもてなしできるでしょうか!?

こどもたちが夢の実現に挑戦する
こどもアートLab「NEOびじゅつじゅんびしつ」

秋田公立美術大学が主催する「こどもアートLab」のプロジェクト「NEOびじゅつじゅんびしつ」。柚木恵介Labリーダー率いる2021年度の「NEOび」は、
プロジェクトA「しぜんのものを使ってサバイバル生活をしたい」
プロジェクトB「みんなでデザインしたお皿で料理を出すレストランの店員になりたい」
この2つを実行することになりました。みんなでデザインしたお皿で料理を出したいプロジェクトBは、どんな展開になったのでしょうか?

自分たちでお皿をつくって、
レストランの店員さんになる作戦会議、スタート!

快晴の7月31日、夢に挑戦するメンバーが初めて集まって作戦会議を行いました。プロジェクトBはそれぞれ自己紹介のあと、あかりのリードでスタートです。テーブルの上には図書館から借りた本がたくさん置いてあります。器の作り方や釉薬の調合の仕方…自分たちでお皿を作るための参考にするようです。一方、まっちはスクラップしたオリジナルのレシピ本を持ってきました。

本を眺めたあとは作戦会議の会場である文化創造館の外に出かけてみたり、ブランコに乗ってみたり。館内には川連漆器の職人さんもいて、いろいろ質問をしてみたようです。ついでにお箸をもらっちゃいました。

お皿の作り方やレシピ本などを持ってきてくれました
川連漆器の職人さんからお箸をいただきました。うれしいね!

女子トークで盛り上がったりみんなで「香水」を歌ったり、お昼休憩時間にすっかり仲良くなった5人。午後はお皿について作戦会議です。

お皿の素材は陶器やガラス、テーマはそれぞれが決めて紙粘土で試作していきます。あかりが家から持ってきてくれたのは、紙粘土とラップ、そしてキラキラビーズ! みんなテンションが上がります。ちゃんと人数分用意してくれてました。
その後はメニューを決めたり、担当を決めたり…と思ったらおやつを買いに外へ走り出しました。見守り師たちも必死に追いかけます。計画しなければいけないことはいっぱいあるけれど、まずは仲良くなること優先の5人。

紙粘土とビーズを使って試作していきます。アイデアがいっぱい!
計画を立てながら仲良くなっていく5人。お皿のこと、メニューのこと、それから…

お皿のこと、メニューのこと、場所のこと…

作戦会議2日目! やることがいっぱいあるプロジェクトBですが、まずはお皿をどう作るか調べてきたことをひとりずつ発表することになりました。陶芸家さんのところに行ってきたというみやは、オーブンで焼く陶土でお皿を試作して持参。これに絵の具で絵付けをすれば完成のようです。
それぞれが発表したのは、みやは陶土で作る案と既成のお皿にデザインを転写する案、まっちは陶器のお皿にペンでデザインする案、ひなはガラスで作る案などなど…。さて、どんな方法に決まるのか!?

プロジェクトBには大きな課題がありました。それはどこでレストランを開くか、ということ。あれこれ考えた5人は、思い切って文化創造館のカフェのキッチンが使えるかどうか勇気を出して聞いてみました。どうやらいい返事はもらえなかったようですが、思い切って行動に出ることで見えてきたことがあるようです。

カフェのお姉さんに相談に行った5人。ちゃんとお話ができてよかった!
外に出て、食器専門店の「食器のさかいだ」さんをのぞかせていただきました。5人は店内にあるたくさんのお皿を見て、自分はどんなお皿にしようか、どんなおもてなしをしようか参考にしているようです
しっかり手洗いをしてお昼休憩。おいしいお弁当を食べたら、やっぱり素敵なお皿とお料理でおもてなししたくなりますね

お昼休憩のあとはメニュー表を作成しながら真剣な話し合いが続きます。そして再び、お皿問題に。それぞれの思いがぶつかり合い、認め合い、話し合うほどにお互いの思いを受け入れていきます。
そんな折り、文化創造館のスタッフからキッチンが使えそうな場所の資料をもらいました。電話番号も付いています。でも「電話すること」にハードルがある様子。場所のことよりまずはメニュー表作りを進めていきます。

勇気を出して一歩を踏み出せれば、きっといろいろなことが動き出していくのかも…。

文化創造館のスタッフに相談に行った5人。アドバイスをいただいて、自分たちの行動に移せるかどうか…

オンライン作戦会議!

コロナ禍によって夢の実行日はやむなく延期となりました。本当はいろいろな人を招いて自分たちのレストランを開きたかった5人ですが、この状況ではその場で作って料理を振る舞うことは難しい…。

オンライン作戦会議でメンバーたちは、オーブン粘土で作ったお皿を見せ合いながらアイデアを出し合います。「個包装のお菓子をお皿に置いてスタンプラリーをしたらおもしろそう!」「スタンプは消しゴムハンコはどうかな?」「スタンプ台はショップカードのようにしたらどう?」「スタンプを全部集めた人には何かプレゼントするのもいいかも!」「余った粘土で何か作れないかな?」

延期にはなりましたが、子どもたちの挑戦は続きます!

メンバー5人と見守り師たちがお皿を見せ合いっこして話し合ったオンライン作戦会議

自分でデザインしたお皿を使って、
お菓子スタンプラリーを開催!

作戦会議は真夏だったのに、もうすっかり秋の気配。いよいよ本番が近づいてきました!
オンライン作戦会議で話し合った通り、自分で作ったお皿を持ってきた5人。お菓子スタンプラリーに向けて、それぞれが着々と準備を進めてきたようです。まずは先に、これからみんなですることを確認しました。
①スタンプラリーのスタンプカードを作る
②お菓子のことを考える
③疑問点について考える
コロナ下ではありますが、自分たちにできることを考えていきます。レストランの店員さんではないけれど、お菓子スタンプラリーという新たな目標を設定した5人は8月の作戦会議の時よりもさらに仲良くなって、楽しそう!

どんなスタンプラリーがいいか、どんなスタンプカードがいいか。カードはそれぞれが作ってみることに
おやつタイムとランチタイムには怖い話クイズで盛り上がっていた5人は外へ。アトリオン地下にお土産やさんがあることを発見! お菓子スタンプラリーに招く家族の好きなものはあるかあれこれ探し始めました

お昼休憩後はなかいち、アトリオン、コンビニなどを回って文化創造館に戻ってきた5人。スタンプラリーの時に押してもらうスタンプカードのアイデアを見せ合いっこしながら、おやつを食べたり、おしゃべりしたり…。カードはどんなサイズにするのか、MAPを入れるのかどうか、そもそも会場はどうするのか時間帯はどうするのか…確認事項の多さにあらためて気が付いたようです。タイムラインを書いて、予定を立て始めました!

確認事項はたくさんあるけれど時間があまりないことに気づいて、タイムラインを書き始めました
お菓子スタンプラリーの会場になる文化創造館のスタッフに、場所のこと、広さのことなどを相談中

もう時間があまりないことに気づいて、あっちへ行ったりこっちへ行ったり歌ったり走り回ったり。そしてやっぱりおやつタイム…。そんなこんなではありますが、文化創造館のスタッフに相談してようやくお菓子スタンプラリーの予定が見えてきました。
お菓子スタンプラリー実行の日は文化創造館の利用者が多いため、子どもたちが使える場所は限られていることも分かりました。使える場所のなかからスタンプの設置場所を考えます。地図担当の2人は設置場所を回って手描きの地図に書き込み、残った3人はお菓子を食べながらスタンプカードを制作。どの場所を借りるかの最終決定を総合案内に急いで伝えに行って…1日目は終了!

家族を招いて、文化創造館内5カ所をめぐる
お菓子スタンプラリー!

お菓子スタンプラリーに向けて最終チェック!

いろいろな予定変更を経て、プロジェクトBの5人がたどり着いたのが、家族を招いて開催するお菓子スタンプラリーでした。お菓子とスタンプ台を置く場所のことを文化創造館のスタッフと確認したあと、それぞれが作ってきたスタンプ台紙などを見せ合って楽しそう。そして、お目当てのお菓子を買いに出かけました。
戻ってきてからはテーブルの上を片付けて準備を始めます。受付はどうするか、どこのブースに誰のスタンプを置くのか、スタンプラリーのルールをどう説明するのか…大事なことを5人で話し合います。
スタンプ台を置く場所には、NEOびの家族以外の人ももちろんたくさんやってきます。NEOび関係者のものだと分かるようにサインを考えて、そして設置が始まりました。いろいろな布地、いろいろなお皿、いろいろなお菓子。これにあかりが持ってきた小物を選んで各ブースに置くようです。カラフル〜!

本当はもっともっといっぱいの人たちに自分で作ったお皿でお菓子やお料理を差し上げたかったのですが、個包装のお菓子に決めて、スタンプラリーにすることに決めて、各自がお皿を作ってきて、この日のために準備してきました。さあ、始まります!

お菓子とお皿だけでなく、メニューやスタンプカードもじっくり見てくれました
「NEOび」スタンプも素敵!

お菓子スタンプラリーは、お招きしたそれぞれの家族の皆さんが館内をめぐってくれて写真を撮ったりお菓子を食べたり、お皿を眺めたりしながら30分ほどで終了。準備は大変だったけれど、あっという間でしたね。「これどうやって作ったの?」「このテーブルクロス素敵ね!」と興味津々な家族の皆さんと話しながら、仲良し5人はちょっと名残惜しそう…。

「メンバーたちの結束力が、回を追うごとに高まっていったプロジェクトB。 自分たちで作ったお皿でレストランを開きたかった5人ですが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、『自分たちでレストランを開く』というところを変更しなければならなくなりました。 想定していた夢の実現が難しい状況になったとき、どうやって課題をクリアしていくか。ここがメンバーたちにとって、大きな山場だったように思います。 延期の期間に自宅で一人一人考え、急遽開いたオンライン作戦会議の場で、メンバーたちはアイデアを出し合いました。見守り師とも実現可能な方法を調整し、家族のためのお菓子スタンプラリーへ変更しました。参加した家族には、とても喜んでもらえましたね。 報告会の終了後、一緒にいる時間が終わってしまうのが寂しくて『終わっちゃった…』と5人で集まっている姿が印象的でした。メンバーは通っている小学校も学年もバラバラでしたが、お互いになんでも言い合える関係になって、一緒に過ごした時間はとても充実していたようです。 この経験をきっかけに、これからも自分たちの力でいろんなことに挑戦してもらえたらと思います」(見守り師代表 有馬寛子)

プロジェクトA・Bが集まって報告会開催後、みんなで記念撮影。「報告会で話したことよりも写真で見るよりもたくさんのハプニングがありました。それを乗り越えるたびに、クリエイティブの芽が伸びてくるんです」とLabリーダーの柚木さん。写真や言葉よりも圧倒的な経験の数々が心と体に刻まれたことでしょう

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

高橋ともみ

秋田県生まれ。博物館・新聞社・制作会社等に勤務後、フリーランス。取材・編集・執筆をしながら秋田でのんびり暮らす。2016年秋田県立美術館学芸員、2018年からアーツセンターあきたで秋田公立美術大学関連の展覧会企画、編集・広報を担当。ももさだ界隈で引き取った猫と暮らしています。

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