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建設予定である3つの展示室は、発見された無声映画を軸に構成される計画

展覧会では、先述したレクチャーパフォーマンスの記録映像に加え、建設予定である三つの展示室についての関連資料が、部屋ごとに分けられガラスケースの中で展示されている。会場でループ再生される45分の解説映像は、実際のパフォーマンスとは違い、時間の経過に沿って最初から鑑賞される方が稀なものとなり、いかに視聴するかはタイミングと鑑賞者に委ねられる。

ガラスケースの中には、本当に坑道で発見されたかのような実物のフィルムが展示され、レクチャーパフォーマンスで語られた個々の展示室が、にわかに現実味を帯びて立ち現れてくる。ミュージアムにおける体験型展示の最新動向でもある「マインクラフト」での特徴的なシーンも解説文と共にデモ再生される。そしてレクチャー内では写真スライドとして紹介された伝説やエピソードは、断片的なイメージとして陳列される。写真ではなく当時の新聞記事などの資料であれば、もっとフィクションが真実味をましたのかもと思わなくもないが、それは取り立てて問題にならないだろう。いずれにせよここでは、三つの展示室のテーマが、レクチャーでの紹介された順番のように決してリニアに展開していくものではなく、個々の要素が関係し合っている様子が空間的に示されている。

鉱山にまつわる資料

鉱山開発、写真術と同じく、近代が生み出した装置であるミュージアム(資料館)の形式を借りている本展覧会。かつてアンドレ・マルローは「空想美術館(le musée imaginaire)」という概念 を提示したが、現在ではありふれて特に意識されることも少なくなった複製技術の恩恵を多大に受けているという点においても、これを(本企画に沿うよう訳出して)「想像のミュージアム」と呼びたくなってくる。

1945年に発生した花岡事件の犠牲者を祈念して建てられた花岡平和記念館は、事件発生から45年後の2010年に完成した。現実のミュージアムを建設することの困難さが感じられる年月である。アーティストの想像力は、時に政治的な現実を易々と乗り越えてしまうものだが、それでもこの展覧会からは、リサーチにきちんとした時間が割かれていることが覗える。佐藤は、秋田公立美術大学が企画した、AKIBI複合芸術プラクティス『旅する地域考』2018夏編「秋田で着想する」という、若手アーティストが旅を通して、新たなプロジェクトを構想するワークショップに参加し、異物として土地に訪れるアーティストという感覚と、鉱山、映画サークル(活動写真弁士)に出会い、今回のプロジェクトに発展する着想を得たようだ。その後、BIYONG POINTの企画公募で採用され、展覧会が実現した。

秋田という土地をリサーチすることで浮かび上がったモチーフは、一つのシナリオとなって近代の鉱山に光を当てるフィクションに結実する。そのシナリオによるレクチャーパフォーマンスは「資料館についての解説映像」として、展覧会のなかでオブジェクトを伴いながら、再生され続ける。このように、メディアごとに少しずつ露光の仕方を変えながら「想像のミュージアム」のなかで、語りは繰り返されていく。フィクションの語りが、真実のように聞こえるとするならば、それは佐藤の適正露出の為せる技だろう。

建設計画中の資料館に関する解説映像。佐藤によるレクチャーと、活動写真弁士・片岡一郎による無声映画の上映が行われている(上映時間:45分)

近年、その土地をリサーチし、一種の地域資源としてその土地の文化や歴史を表現に取り入れる動きがますます顕著になっている。実際、アーティスト・イン・レジデンスでの活動を通じて、私もそのような制作のサポートをする機会が少なくない。地産地消ではないが、そこで展示されるべき作品が制作され、関わりの深い人々を中心に見られることは意義のあることだと思う。しかし今回の例で言っても、近代化と鉱山については秋田だけでなく日本全体、ひいては世界中で考えられることであり、それぞれの土地で、語りのきっかけとなるような興味深い出来事が見つかるに違いない。一つの地域におけるプロジェクトをどのように他の場所で展開もしくは発展させるか。様々な要素を貪欲に繋げながら、過去と現在の人々をフィクションで接続させてゆく語りのあり方に、可能性を感じている。

慶野 結香(青森公立大学国際芸術センター青森(ACAC)学芸員)

Profile

慶野 結香
1989年生まれ、神奈川県出身。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。2014年から2016年まで秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻、社会貢献センター(現・アーツセンターあきた)助手。BIYONG POINTでの主な企画に、安西剛「事象の再発明」(2015年)、岩井優「習慣のとりこ―踊り、食べ、排便する。(2015年)/―見つめ、再生、指しゃぶり(2016年)」、飯山由貴ワークショップ+リサーチプロジェクト「ありのままごと」(2016年)など。サモア国立博物館を経て、2019年より青森公立大学国際芸術センター青森(ACAC)学芸員。

Information

佐藤朋子「MINE EXPOSURES / 鉱山の露光」

チラシダウンロード(PDF)
■会 期 2019年8月30日(金)〜11月4日(月祝)9:00〜18:00
■観覧料 無料
■閉館日 9月14日(土)、15日(日)
■会 場
秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT(秋田市八橋南1-1-3 CNA秋田ケーブルテレビ社屋内)BIYONG POINT
■主 催 秋田公立美術大学、NPO法人アーツセンターあきた
■協 力 CNA秋田ケーブルテレビ、東京藝術大学大学院映像研究科、RAM Association、和田信太郎
■出演・映像資料協力 片岡一郎(活動写真弁士)
■助 成 秋田県芸術文化振興基金助成事業

【関連イベント】
ギャラリーツアー+オープニングパーティ
■日 時 8月30日(金)18:00〜20:00
■会 場 BIYONG POINT

レクチャーパフォーマンス+トーク
■日 時 10月20日(日)18:00〜20:00
■会 場 BIYONG POINT
■内 容
①佐藤朋子によるレクチャーパフォーマンス
②トーク「ドキュメントと創作(フィクション)について」
登壇者:佐藤朋子、服部浩之(秋田公立美術大学准教授)

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