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秋田からはじめる。秋田からはじまる。 「SPACE LABO」プラン展・ポスター展が11月3日(日)開幕

秋田駅前の空きスペースを”クリエイトスタジオ”と見立てて展開するプランの公募事業「SPACE LABO」。書類選考を経て採用されたラボ・フェロー7組のプランが、11月3日(日)より順次公開されます。

秋田駅前に立地する3つの商業施設内の空きスペースを、“クリエイトスタジオ”と見立てて展開するプランを公募する「SPACE LABO」。応募のあった14組のプランをポスター展形式で公開し、さらにその中から選ばれた“ラボ・フェロー”7組が、コーディネーターのサポートを得て、パフォーマンスが展示、リサーチ、滞在制作などのプランを展開します。

9月中旬からの約1ヵ月半、7組のラボ・フェローと4名のコーディネーターが、プランの実現に向けて対話と調整を重ねています。11月3日~12月22日の間に、秋田駅ビル アルス、フォンテAKITA、秋田オーパのクリエイトスタジオにおいて順次ラボ・フェローによるプランが公開されます。

失敗を恐れずにやってみること、試してみること、その試行錯誤や実験性は完成された成果物と同じように豊かな時間を生み出すかもしれません。ラボ・フェローたちの挑戦にご期待ください。

12月15日(日)には、ラボ・フェロー7組の中から審査員特別賞(1名)とレジデンス賞(若干名)を選出し、発表します。

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出身地、居住地、年代も異なるラボ・フェローたち

ラボ・フェローは出身地や居住地、年齢もいろいろ。プラン内容も作品展示やパフォーマンス公演、リサーチの成果発表など幅広い形式で展開されます。

ラボ・フェロー一覧

  • 居村 浩平|目が合った人の真似をする
  • 酒井 和泉|無いものねだりフェスティバル
  • 熊谷 海斗|参加型オブジェ制作展示「木製幾何学パズル」
  • 植村 宏木|もの考-秋田―
  • 佐藤 拓実|秋田と北海道をつなぐ
  • 虻川 彩花|秋田から始まるファッション~個人ブティックを訪ねて~
  • 岡﨑 未樹|「なくなった」ものを一緒に探しに行くプロジェクト

Information

秋田市文化創造交流館(仮称)プレ事業 「SPACE LABO」

<ラボ・フェロープラン展>
2019年11月3日(日)~12月22日(日)
会場:
・秋田駅ビル アルス (秋田市中通七丁目2-1)
・フォンテAKITA (秋田市中通二丁目8-1)
・秋田オーパ (秋田市千秋久保田町4-2)

<ポスター展>
2019年11月3日(日)~12月22日(日)
会場:フォンテAKITA6階情報発信コーナー

リサーチを重ねたり、コーディネーターと対話を重ねる中で刻々と変化するラボ・フェローのプラン。11月3日(日)より、順次プランの公開が進みますが、公開当日までにはさらにプランの内容が変化しているかもしれません。それも公開までのお楽しみ!

居村 浩平|目が合った人の真似をする

  • 企画概要
    私と目が合った人を対象にして、その人の表情、動作、ふるまい、口調などを真似する即興パフォーマンスを行う。パフォーマンス中は常に誰かを観察し、真似をし続け、その行為を映像やスケッチ、文章にしてアーカイヴする。普段人びとが何気なく行うふるまいを、身体やその場所に落とし込みたい。 また、このパフォーマンスの他に、秋田の地域性についてもリサーチしたい。暗黒舞踏を生んだ土方巽や、その土方の故郷にある西馬音内盆踊りなど、秋田は「踊り」が生まれやすい文脈にある空間なのかもしれない。秋田の人びとと視線を交わすことをきっかけに、これまでとは異なる秋田の踊りを生み出したい。
  • 会期・会場
    <パフォーマンス>
    2019年11月3日(日)~11月9日(土)
    フォンテAKITA6階情報発信コーナー、6階市民学習スペース外側、秋田市内各所
    <記録資料展示>
    2019年11月10日(日)~12月22日(日)
    フォンテAKITA 7階特設会場

Profile

居村 浩平

高知県生まれ。大学では近代以後の美術を専攻。「アートとは何か?」という問いを軸にジャンルにとらわれない制作活動を行う。その制作の中で、東日本大震災から影響を受けたこともあり、卒業後は福島県に移住。近年は人として地域に関わることと、アーティストとして関わることのちょうど良いバランスを探している。

▸コーディネーター 島崇

秋田ではよく人と目が合う。なぜだろう。人が少ないからだろうか。私たちは生まれてから周りの人の真似をして成長してきた。赤ん坊がこちらを凝視するのもそのためだろう。居村は目があった人の真似をするという。そうして秋田の新しい踊りを生み出したいという。この秋田では何人の人と目を合わすことができるだろうか。きっと死者とも目を合わさなくては数が足りないだろう。そういえば、あんなに多くの人が暮らす東京では人と目が合わないのはなぜだろう。あれは人でないのだろうか。居村を通じてこの町の表情や身振りが知りたくなった。それは一体誰のコピーなのか。どんな背中で、どんな指先なのだろうか。

フォンテAKITA6階情報発信コーナーは、市民の憩いの場

酒井 和泉|無いものねだりフェスティバル

  • 企画概要
    日常をせわしなく生きていると、昔はあったはずの素敵なものがなくなっていたり、突然迷惑極まりないものが作られてしまったりすることに気づけない。
    人間サイズの「現在の秋田県ぬいぐるみ」をショッピングモールに設置し、来場者にはぬいぐるみ上に、秋田にあって欲しいもの・なくなってほしいものを思う存分メモしてもらい、1日ずつぬいぐるみで秋田県をアップデートしていく。曜日や時間帯によって変わっていくような軽い願望も大切に「ほしい」と「いらない」を遊び感覚で考え、自分達が秋田で幸せに暮らすために必要な行動を思うきっかけを作る。
  • 会期・会場
    2019年11月3日(日)~11月27日(水)
    秋田オーパ5階特設会場
    2019年12月3日(火)~12月16日(月)
    秋田市にぎわい交流館AU1階「まち発見・発信ステーション」
    ※(2019年11月27日追記)会期・会場が一部変更となりましたので、ご了承ください。

Profile

酒井 和泉

幼少の頃より母の精神科での療養に付き添っていた経験から、人を癒すための芸術や、人同士のこころの繋げ方を探り、主に病院でボランティアをしながら、五感に訴えるような立体を制作している。人と人を柔らかく繋ぎ、どうすればより多くの人が心地よく幸せに生きられるかについて関心をもっている。

コーディネーター 宇野澤昌樹
人の意識とは、目に見える形をもっていないから、本当にはどういうものなのかわからない。とはいえ、人の意識の集合が世界をかたちづくる要素であることを否定もできない。
秋田の人が何を欲していて、何をいらないと思っているのか。「いる/いらない」の基準は個人によって違うだろう。形になる前の秋田、秋田の予感、ありえるかもしれない秋田の姿。秋田の最大公約数が導き出す「秋田の人」のイメージも興味深いが、そこから外れる一人ひとりの個性が実は秋田の豊かさではないだろうか。秋田に住む人、秋田を訪れる人のバリエーションの多様性が、秋田の可能性の大きさになるだろう。

熊谷 海斗|参加型オブジェ制作展示「木製幾何学パズル」

  • 企画概要
    来場者がパーツを選び任意の場所にはめ込むことで、大きさを増していくオブジェ「木製幾何学パズル」を展示する。バランス良く組み合わせるのか、あえてアンバランスな形を選ぶのか。参加者の選択によって、偏りやいびつさを含み面白みのある造形へと変化していく。来場者が造形に手を加え、また別の来場者によって前者が予想していた造形を打ち壊して新しい造形になる。日々、かたちを変えていく参加型オブジェの展示を通して、他人とのつながりの中にあるからこそ今の自分の選択肢があるのだと来場者に意識させる。SNS が台頭し、目には見えないかたちでの人とのつながりが普及していく中で、物質的な物を通して人とのつながりを感じてもらいたい。
  • 会期・会場
    2019年12月7日(土)~15日(日)
    秋田駅ビル アルス2階特設会場

Profile

熊谷 海斗

秋田県秋田市出身。宮城県在住。人と人との繋がり方が変わりつつある近年、個人の人や物に関しての判断基準も変化しつつあり、物事を評価する機会が増え、「いいね」やgood/bad、星マークの数で他人の行動にまで評価することが当たり前になっている。そんな中で物事や出来上がった形態が参加者を定義するような展示はできないかと考え制作に取り組んでいる。

コーディネーター 藤本悠里子
訪れた人の選択行為の連続によって成長していく完成形が決められていないパズル。参加者が手を加えることで大きさを増し、選択によってかたちを変える。中心の位置は常に移動し、複数の線が交錯し、そして多方向に伸びていく。変化の過程にて偏りや歪さ、あるいは美しさを含む点は、植物の成長と似ているのかもしれない。植物の根のように不規則に、偶然的に、多様な流れへと広がっていく。個人の選択の積み重ねで出来上がったオブジェクトは、最終的に物質を通して行われた人同士のつながりを証明する。子どもも、大人も、社会人も、学生も、買い物に来た人も、通りすがりの人も、誰もが参加できる。商業施設の中に現れた特異な体験。

秋田駅ビル アルス2階のクリエイトスタジオ
秋田オーパ8階のスケルトン空間がラボ・フェローのプランでどう変容するか

植村 宏木|もの考える―秋田―

  • 企画概要
    秋田における風土や空気感、歴史や暮らしの中にある思考や感覚についてリサーチを行い、制作された作品を展示する。リサーチを通して秋田の土地における記憶や時間、空気、それらとともにある気配といった「目には見えないが知覚できるもの」について考察をする。本プランでの作品によって秋田という土地を感覚的に捉える場をつくりたいと考えている。
  • 会期・会場
    2019年12月7日(土)・8日(日)・14日(土)・15日(日)
    12:00~20:00(12月15日は17:00まで)

Profile

植村 宏木

北海道生まれ。秋田公立美術工芸短期大学卒業後、名古屋芸術大学大学院修了。 空間に漂う空気、気配、時間、あるいは人の魂や感受性といった不可視の”もの”を、硝子(ガラス)によって表わそうと試みている。硝子のほか、土地のリサーチと考察をもとに、石・木などの自然物、糸・縄など人の手による物、ドローイング等を組み合わせて作品を制作する。

コーディネーター 小熊 隆博
商業施設にはどんな記憶が積み重ねられるのだろう? 特にファッションビルにおいて、過去とはただ更新されるものかもしれないが、このフロアにあった映画館の記憶が、惜しむ人々によって今も空間に留められるように、どの空間にも誰かの顧みる記憶がある。 植村宏木はそのような、「目には見えないが知覚できるもの」を捉え、視覚的に表そうとする。自在に姿形を変え、向こう側を透き通す硝子だからこそ表せるものを探求し続けているのだ。 秋田で計4年間暮らし学んだ植村は、約10年ぶりに訪れる秋田の土地に着想を得たいという。展示空間の記憶も重要な要素になるはずなので、秋田オーパ8階に愛着を持つ人にはぜひ足を運んでいただきたい。

佐藤 拓実|秋田と北海道をつなぐ

  • 企画概要
    私は北海道に生まれ育ち、主に北海道の歴史を題材としながら作品制作を行っている。その活動において、特に東北の諸地域と北海道とは長い歴史のなかで深い関係をもってきたことをたびたび感じていた。今回は蝦夷地を旅し秋田で没した旅行家の菅江真澄や、秋田を含む大阪-北海道間の各地を繋いだ北前船、アイヌを描いた平福穂庵・百穂親子などをヒントに、北海道との関係という視点から秋田にてリサーチを行い、その成果を発表する。秋田にあるという自分の「佐藤家」のルーツ訪れることも目的の一つである。これらのリサーチを経て、これまであまり顧みられてこなかった秋田像、北海道像、日本像の輪郭の一部を描き出すことを目指す。
  • 会期・会場
    2019年12月14日(土)~12月22日(日)
    フォンテAKITA 6階情報発信コーナー

Profile

佐藤 拓実

北海道について知ることを通して見えてくるものについて調査や制作を行っており、北方交易、北前船、開拓移民などに関心を持っている。自分が見聞きしたものを主に絵画や散文の形で表現している。最近は「風景」への興味から風景画を描いたり、絵馬に興味をもち、見た絵馬の写真と簡単な来歴を「絵馬ブログ」にまとめている。

コーディネーター 藤本 悠里子
「ここ」と「あそこ」の間には距離がある。「秋田」と「北海道」もそうだし、「過去」と「現在」の間にも時間的な距離が発生している。「自分」と「家族」もそうだろう。ある事象同士をつなげようとした時には、事象同士の間にある距離にも目を向けなくてはいけない。物理的な遠さや近さ、使う言語の相違点、共有している時間(時代)によっても事象同士の距離は変わってくるかもしれない。佐藤拓実はこれまで自身が行ってきた北海道でのリサーチを踏まえた上で、秋田にてリサーチを行い、秋田と北海道との関わりを探る。それに加え、今回のリサーチには秋田にある佐藤自身のルーツを探るという目的も加わっている。秋田と北海道にルーツを持つ彼だからこそ描くことができる、秋田と北海道のつながりがあるはず。

虻川 彩花|秋田から始まるファッション~個人ブティックを訪ねて~

  • 企画概要
    秋田市内には多くの個人ブティックやリサイクルセンターが存在する。そのような店の個性的で特殊な販売形態に興味を持った。例えばリサーチを行うきっかけとなった「まるきょう」が作り出す空間は、現代に生きる私たちにとって、忘れていた大切な何かを思い出させてくれるような気がする。その正体を掴みたいと思った。そのためにも、店員のおばちゃんたちがいる空間に私が入ることでどうなるのか? 何が生み出されるのか? そのようなことに気を使いながらリサーチを進めたい。そして、秋田におけるファッションセンターの現代における機能を考え、秋田から新しいファッションのあり方を提案したい。
  • 会期・会場
    2019年12月14日(土)~12月18日(水)
    フォンテAKITA6階市民学習スペース外側

Profile

虻川 彩花

秋田公立美術大学在学時代、人の記憶をテーマに作品作りに取り組む。卒業制作では時間の経過と共に水槽に溶ける写真を制作。卒業後、秋田市内でSoZoRoという名前で制作活動を開始。人の記憶から、ものがとどめる記憶の作品化を試みる。主にプラスチック素材の装飾具を作り、ものと人の関わりを常に観察している。

▸コーディネーター 島崇
半年くらい前だろうか、東京の家の近くにあったブティックが閉店して、やきとん屋になっていた。閉店セールの札が貼られていて、いつもの閉店商法だと思っていたら、本当に閉店したのだ。おばちゃんが着るような服を売っていた店である。別に閉店したブティックに思い入れがあるわけではない。そこにブティックがあったなんてすぐに忘れてしまうだろう。虻川は秋田のブティックをリサーチし、新しいファッションのあり方を提案したいと言う。「新しいファッション」とは何だろうか。それは単に身に着けるものだけを指すのだろうか。ブティックが見てきたもの、担ってきた役割とは何だろうか。虻川が仕掛けるこの町のファッションに期待したい。

フォンテAKITA6階の市民学習スペースは、日々中高生や社会人でにぎわう

岡﨑 未樹|「なくなった」ものを一緒に探しに行くプロジェクト

  • 企画概要
    目に見えているものが「なくなる」と人は様々な悲しさに襲われる。しかしその「人」「物」「場所」を想い、考え、行動したという事実から、目には見えないけれど「ある」ものとして捉えられるのではないかと考えた。人口減少、空き家など秋田に暮らしていく中で「なくなる」を感じる。地元の方は「なくなった」ものに対して何を感じているのか、一緒に想い、考え、行動して目には見えないけれど「ある」ものを探してみたい。公開に向けて、住民へのインタビューにより収集したメッセージを何らかのものに届けてもらう。また、メッセージをくれた方がそれを空に放つ様子を記録撮影する等を予定している。
  • 会期・会場
    2019年12月13日(金)~12月15日(日)
    12:00~20:00(12月15日(日)は17:00まで)
    秋田オーパ 8階特設会場

Profile

岡﨑 未樹

秋田公立美術大学3年生。岡山県生まれ。 「いなくなってしまうもの」に対する興味と、それが「あるもの」として感じられていく過程に関心を拡げ、「死の文化」「埋葬方法」を対象に調査と考察を重ねている。主に絵画を制作してきたが、映像も活用して対話した方々の言葉を汲み取るなど、表現の幅を拡げつつある。

コーディネーター 小熊 隆博
岡崎未樹の関心は、「なくなるもの」「なくなったもの」を想い、どのように行動することで、それらが「あるもの」として感じられていくか、にある。 「終わり」に向き合う機会が減るにつれ、私たちのそれに向ける意識もまた薄れつつあるようだ。 愛着ある物の終わり、住み慣れた家の終わり、大切な誰かの人生の終わり。「終わり」の看取り方。東西の文化はその機能をどのように実装してきたのだろう?岡崎の探求は緒についたばかりで、今回はそのささやかな実践かもしれない。 「なくなったもの」に耳を傾けること。送り出す場を作ること。そしてその場に立ち会うこと。アートの「始まり」を予感させるふるまいの先に、送り出す人の「始まり」が立ち現れて欲しい。

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた 事務局長

三富章恵

静岡県生まれ。名古屋大学大学院国際開発研究科修了。2006年より、独立行政法人国際交流基金に勤務し、東京およびマニラ(フィリピン)において青少年交流や芸術文化交流、日本語教育の普及事業等に従事。
東日本大震災で被災経験をもつ青少年や児童養護施設に暮らす高校生のリーダーシップ研修や奨学事業を行う一般財団法人教育支援グローバル基金での勤務を経て、2018年4月より現職。

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