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SPACE LABOをみに行こう! 対話のスタディツアー開催レポート

秋田駅前の商業施設内の空きスペースを“クリエイト・スタジオ”と見立てて展開するプランの公募事業「SPACE LABO」。11月3日(日)から始まったラボ・フェローのプラン公開に合わせて、「SPACE LABOをみに行こう!―対話のスタディツアー」と題したガイドツアーを開催しました。

2020年秋に開館予定の秋田市文化創造交流館(仮称)のプレ事業の一つとして開催中のSPACE LABO。秋田駅前の商業施設において、展示やパフォーマンス、対話、リサーチの成果発表など、消費・購買する以外の体験を提供することで、中心市街地を訪れるいつもとは異なるきっかけを創出し、まちなかの空きスペースの使い方の可能性を拡張することを試みています。
書類選考を通じて選ばれた7組のラボ・フェロー。11月3日(日)から順次プランの公開が始まっています。11月10日(日)には公開中またはリサーチを行っているラボ・フェローとの対話を通じて、プランやプランに込められたメッセージに対する理解を深める取り組みとして、「SPACE LABOをみに行こう!-対話のスタディツアー」と題したガイドツアーを開催しました。

真似をすることで蓄積された身体と、真似されることで抱く違和感

フォンテAKITA7階の特設会場で、映像資料を中心とした展示を行っているのは、居村浩平さん。「目が合った人の真似をする」と題し、11月2日(土)から約1週間、秋田市と雄勝郡羽後町でリサーチとパフォーマンスを行った成果を映像とテキストにまとめて公開しています。

ツアー中も目が合うと真似される

制作する過程で考えていたことがそぎ落とされていくような感覚のある造形物よりも、考えや感覚を取りこぼさない即興パフォーマンスに強い関心を持つという居村さん。商業施設フォンテAKITAと秋田駅前の大通りでは、目が合った人の真似をする即興パフォーマンスを展開しました。また、羽後町では、西馬音内盆踊りの講師の方の踊りを即興で真似をし、さらには土方巽に実際に会ったことがあるというおばあさんからお話を聞いて、その姿を真似するという重層的なパフォーマンスを行い、それぞれを記録映像にまとめました。

商業施設では、途中警備員に遮られるというアクシデントなどを経ながらも、「商業施設で行なったせいか、秋田の人たちは反応が良く、まちが健康的なのかな」と飄々と居村さんは話します。

人は、小さい頃から何かの真似をして社会的身体を獲得しているとすれば、居村さんのパフォーマンスによって真似されたことによって覚える違和感や、完成された西馬音内盆踊りが、居村さんの身体を通して下手になり、失敗する過程の中に、新たな踊りが生まれる可能性があるのかもしれません。

Information

居村 浩平|目が合った人の真似をする

目が合った人の表情、動作、ふるまい、口調などを真似する即興パフォーマンスを展開。普段人びとが何気なく行うふるまいを、身体やその場所に落とし込み、視線を交わすことをきっかけとした新たな秋田の踊りを生みだす。

https://imura-kohei.tumblr.com/

≪パフォーマンス≫
■期間:2019年11月3日(日)~11月9日(土)
■会場:
フォンテAKITA6階情報発信コーナー、6階市民学習スペース外側、秋田市内各所

≪記録資料展示≫
■期間:2019年11月10日(日)~12月22日(日)
■会場:フォンテAKITA7階特設会場

秋田にほしいもの、いらないものを考える

次に訪れたのは、秋田オーパ5階の特設会場を会場に、「無いものねだりフェスティバル」を開催中の酒井和泉さん。

会場内では、巨大な秋田県をかたどったぬいぐるみが配置され、壁面には来場者が書き込んだ「秋田にほしいものといらないもの」のアンケートが貼りだされています。アンケートで提案された「秋田にほしいもの」を酒井さんがぬいぐるみに仕立てて、“秋田県”を更新していくという試み。約1週間のうちに、「秋田市にディズニーランドがほしい」、「かわいいうさぎが由利本荘にほしい」や、「同調圧力は秋田からいらない」など、多様な意見が集まっていました。

秋田がイージス・アショア配備の候補地になっていることに関する議論を端緒に、秋田にいるものといらないものを考えるようになったという酒井さん。「ここに関わることから、秋田についての議論がはじまれば」と話します。今回のプランでは、曜日は時間帯によって変わっていくような軽い願望も大切に「ほしい」と「いらいない」を遊び感覚で考え、自分たちが秋田で幸せに暮らすために必要な行動を思うきっかけを作ることを狙いとしました。

秋田にいらない「同調圧力」!?
立場によって異なる、ほしいものといらないもの。

Information

酒井 和泉|無いものねだりフェスティバル

日常をせわしなく生きていると、昔はあったはずの素敵なものがなくなっていたり、突然迷惑極まりないものがつくられてしまったりすることに気づくことができない。「現在の秋田県ぬいぐるみ」を会場内に設置し、来場者に秋田にあってほしいもの・なくなってほしいものをメモしてもらい、日々“秋田県”をアップデートすることで、自分たちが秋田で幸せに暮らすために必要な行動を思うきっかけを創出する。

■ 会場・会場:
11月3日(日)~11月27日(水) 秋田オーパ 5階特設会場
12月3日(火)~12月(月)秋田市にぎわい交流館「まち発見・発信ステーション」(予定)
※(2019年11月27日追記)会期・会場が一部変更となりましたので、ご了承ください。

秋田と北海道をつなぐ

最後は、11月8日から秋田県内でのリサーチをはじめたばかりの佐藤さんにお話しを伺いました。北前船や、アイヌ民族を描いた平福穂庵・百穂親子などを辿り、秋田と自らの出身地である北海道の関係を探っています。

はからずも、秋田県立博物館では、11月17日(日)まで企画展「北前船と秋田」が開催され、11月16日(土)からは、秋田県立近代美術館において「没後130年 平福穂庵展」が開催されるという、強い引きを持った佐藤さん。今後のリサーチの進展が大いに楽しみです。

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた 事務局長

三富章恵

静岡県生まれ。名古屋大学大学院国際開発研究科修了。2006年より、独立行政法人国際交流基金に勤務し、東京およびマニラ(フィリピン)において青少年交流や芸術文化交流、日本語教育の普及事業等に従事。
東日本大震災で被災経験をもつ青少年や児童養護施設に暮らす高校生のリーダーシップ研修や奨学事業を行う一般財団法人教育支援グローバル基金での勤務を経て、2018年4月より現職。

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