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「AKIBI ARTs MARKET 2025」終了! 今年の様子をレポートします

2月22日(土)、23日(日)の2日間、秋田公立美術大学サテライトセンター(フォンテAKITA6階)で「AKIBI ARTs MARKET 2025」が開催されました。秋美生が自ら制作・販売を行うこのイベントは今年で6回目。今回はどのような作品が出展されていたのかレポートします!

「AKIBI ARTs MARKET」が今年も開催されました

秋田公立美術大学の学生が展覧会形式で作品を展示販売する「AKIBI ARTs MARKET(アキビ・アーツマーケット)」が2月22日(土)、23日(日)にフォンテAKITA6階の秋田公立美術大学サテライトセンターで開催されました!
主催は秋田公立美術大学。秋美生の作品を鑑賞・購入・所有することを通して、アートやデザインをより身近に感じてもらうことが目的です。
このイベントでの売り上げは直接学生の手に渡り、今後の活動の資金になります。

例年より1年生の参加が多く、初参加の学生が8割を超えた今回。どのような作品が出展されたのでしょうか。

 


健気に生きる生命たちの物語

ビジュアルアーツ専攻4年の岩田沙久良は、動物実験、品種改良、愛玩動物など、動物と人間との関わりをテーマに制作活動を行なっています。

先日開催された卒展では、人魚を作る実験の失敗作として成長途中のまま捨てられてしまった半魚人たちのストーリーというテーマで絵画3点を展示。

本イベントでは、卒展および2024年9月に秋田市文化創造館で開かれた個展「小さな生命たち展」出展作品の複製ポスター・ポストカードのほか、初公開の自主制作作品も販売されました。

絵本に登場するような愛らしい姿とは不釣り合いに、過酷な世界に生きている半魚人たち。現実に起こっている問題をモチーフにしており、強いメッセージが込められています

学部1年の甘利勇太は金魚や海をモチーフにした表現活動を行なっており、ここでもそれらに関連した自主制作作品を出展。台上は海のブースで、秋田県の海岸を巡って収拾した珍しいガラス類やフィールドワークの成果が並んでいます
《金魚団扇》シリーズは、絵はもちろん、骨組み部分も竹から一本一本手作り

ものづくりデザイン専攻3年杉本瑞月はガラス工芸、陶芸を中心に活動。水や自然物から着想を得ているというグラスや器、アクセサリー類は、柔らかく透明感のある青系統の色が印象的です
スタッキングできる器一式《添う》シリーズ(手前)と、植物と土をモチーフに授業課題で制作した《溜包》(奥)。残念ながら非売品ですが、触ることができます

学部1年生の石井里來の展示販売場所は、迫力のある大きな油絵が目印。人間に内在する自然的な美と社会的抑圧との葛藤をテーマに制作されたものです
9月に開催された4大学連携事業〜秋田駅前合同学祭〜に出展した作品や、今回作成した小サイズの絵画、ポストカードも販売。風景画を描くことが多く、モデルがあるものもあれば、空想で描くことも

羅雪薇、呉芸舟、馬尚の3人は複合芸術研究科に属する留学生同士で合同で出展しました。修士2年の羅雪薇は苔を使ったアートやアートセラピーについての研究を行なっており、先日の修了展でも巨大な苔玉を展示していました。このイベントではその修了展でも展示された冊子を販売
博士1年の呉芸舟が出品したのは、現在行なっている呪術文字の研究、および修士で行なった縄文時代の紋様に関する研究を踏まえたグラフィックデザイン作品など。宗教に関心の強い修士1年の馬尚は、道教やキリスト教、悪魔をモチーフに作品を制作しており、しおりや蔵書票をイメージした作品を展示しました

学部2年生のhiyumanityは、中学生の頃から描き続けている「HUMAN」というキャラクターを中心とした制作活動を行なっています。今回もそのイラスト原画やポストカードを中心に出品。今後もこのキャラクターを発展させていきたいそうです
一緒に出展したmioriは初挑戦の一眼レフ写真をポストカードにして販売。撮影したのは秋田に来てその大きさに驚いたという雪かき用シャベルの持ち手です。こういったイベント参加も初めてで、今後も色々と挑戦し、発信していきたいと語ります

 


キャンバスのかわりに……?

壁に掛けられ異彩を放つブリーフたち。アーツ&ルーツ専攻4年赤石美久の『ブリーフ画』です。このイベントや卒展で目にして「何故?」と思った人も多いのではないでしょうか。

実はここにたどり着くまでにはさまざまな苦悩があったそうなのですが……作者はそんなことは気にせず笑ってほしいと語ります。

現物のブリーフに加え、それらをプリントしたステッカーも販売。2日目には卒展でも展示した着用イメージの映像も流されました。

ブリーフ一枚でポージングしたりジャンプしたり。繊細で切なげなイラストとの対比も含め、なんともシュール。小さい方のステッカーの絵柄はランダムです

ファンシーポップな空間を展開した学部2年生ごしゃ未知は、かわいいということ、どうしたら物事にやさしくあれるかを考えながら、絵や立体、ぬいぐるみなどの制作を行なっています
購入者をモチーフにしたゆるキャラを描く企画も。2日間で30を超えるゆるキャラが誕生したそうです

ビジュアルアーツ専攻3年の小谷真夕は、出身地から移り住んだ経験を通して魅力を感じた秋田での生活を写真に残しています。今回も地域性を色濃く写した写真を販売し、馴染みのある場所を新しい視点で捉えていて面白いと地元の方々にも好評
何気ない日常やその日の心情を切り取ったスナップ写真と、秋田の中心地から1〜2駅電車に乗っただけで全く景色が変わることに衝撃を受けたことから作製した写真集《秋田駅からふた駅》

学部1年生の松本遥はテーマの異なる2種類の作品を販売しました。1つは自分の断片的な記憶と正確な記録である写真の差異をテーマに、油絵が乾く前にレジンを塗り、故意に滲ませることで廃れゆく記憶を表現
こちらは点字をモチーフにした作品ですが、本来の用途とは逆に、目が見える人に向けたもの。真ん丸の形から文字情報を読み取るという点字のビジュアル的な魅力を、普段使わない人にも知ってもらおうという試み

学部1年生のimaとささきや屋はカラフルで温かみのあるものをコンセプトに共同出展。普段からニット帽を被ったり作ったりしているというimaは、帽子やイヤーマフなどのニット作品を作製しました。今後は春夏に向けて製作したいとのこと
ささきや屋は猫の絵やグッズ制作を中心に行なっており、今回はイラストとキーホルダーの販売です。パネルにあるのは油絵のようにも見えますがクレヨン画。今後も様々な表現技法に触れながら猫に関わる制作活動を続けたいといいます

コミュニケーションデザイン専攻3年生とものづくりデザイン専攻4年生の2人グループ、なすまいもはポストカード、キーホルダー、およびブレスレットを出品。コミュニケーションデザイン専攻3年生いけはたしずくは授業をきっかけに描き始めシリーズ化したお菓子の妖精をイメージしたキャラクターのポストカードやキーホルダーなどを販売しました
ブレスレットを作ったのはものづくりデザイン専攻4年生、三明時也。普段は金属加工や彫金でアクセサリー等の制作を行なっていますが、本イベントではいつもとは異なる試みとして、伝統工芸の組紐を自ら編みました。家の中という、設備や広さに制約のある環境でどこまでできるか、その限界のアクセサリー作りを目指しているとのことです

 


甘くてラブリーな世界

可愛らしい女の子のイラストが目を引く一角を展開するのは、コミュニケーションデザイン専攻4年生、もぴ。『女の子の憧れをぎゅっと詰め込んだ甘くてラブリーな世界』をコンセプトに、インスタグラムを中心に活動しています。

ここでは主に卒展の作品を、イラストだけではなくポストカードやチェキ、キーホルダーなどにして販売。フリルやリボン、ストーンをふんだんに使ったフレームも作品の一部です。

来場者からは「世界観がかわいい!」という声がよく聞かれました。

もぴの「好き」がたくさん詰め込まれたスペースはまさに「もぴわーるど」! 気分が上がって、自分も好きなことをを目一杯楽しみたくなってきませんか?

夢見るハリネズミは、専攻の異なる3年生2人による雑貨屋です。1人はコミュニケーションデザイン専攻で、学祭や専攻展でのアニメーションやキャラクターのステッカー、ハンドメイドのアクセサリーやグッズを出展
もう1人はものづくりデザイン専攻。2日目からの参加で、バレンタインデーのある2月開催のこのイベントのために制作した樹脂粘土でお菓子を象った装飾品などを販売しました。かわいいとキラキラが詰まった雑貨は見るたびに笑顔になれそう

学部2年の翅綿(しわた)は絵画、イラストや詩などを出展。アクリルスタンドやぬいぐるみも自作です。その場で描く似顔絵も人気で、写真から描くことも可能です
《机の上の放課後たち》シリーズ(テーブル上)は学校の廃材を利用した作品。学校の机に落書きする感覚で描いたそう。線が重なり合う複雑な色合いは、12色のクレパスを使って色に深みを持たせようとして生まれたものだといいます

hokuは学部1年生2名によるグループで、「雪解け」をテーマに共同出展。テーマにふさわしく、ほっこりと温かみのある作品たちが並びます。1人は編み物を販売し、春の訪れをイメージしたミニブーケや、帽子などの服飾品、小物などを出品
もう1人はポタリーサークルで活動しており、今回に向けて冬眠している動物を描いた器を制作。縁の茶色い部分は土を表現

学部1年生のはるか♡はメルヘンチックな色合いのアクセサリーやオブジェを作製。今回のために用意したというアクセサリーは、作者の好きなアイドルの世界観が反映されているそうで、色違いで揃えたくなります
ちょこんと座る小さなオブジェは、架空の世界の生き物たち。フリルやリボンの細かい部分も全て粘土で出来ています。しょぼしょぼのお目目が特徴的でかわいいですね

新屋保護猫癒し処は新屋で猫を保護する活動を行なっているサークルで、このイベントでは里親募集中の猫たちのプロフィールを配りながら猫モチーフのグッズの販売を行いました
売上は保護活動に貢献されるとのこと

 


好きなものを自由に研究

複合料理研究科は複合芸術研究科の修士2年生の佐藤ことみ、呂昭遠、劉孟琛、蔡雨によるスペースです。

本イベントでは写真作品を使用したポストカードやトートバッグ、ぬいぐるみ、立体構造作品など多岐に渡る作品が並びました。

それぞれの研究課題のもと修了展に出展した4人ですが、このグループはご飯を食べながら各々自由に研究するというコンセプトで、修了展作品とは一味違ったものも多かったのではないでしょうか。

メンバーの1人、呂昭遠は自らのアクリルスタンドやステッカーも展示しました。人気者です

学部1年zakuは冬虫夏草をイメージした水彩画、ステッカーやネイルチップなどを販売。高校生の頃からSNSで活動しており、配信を行うのに加え依頼を受けて制作することもあるとのこと
フォロワーの方々に喫煙者が多かったことから、今回のためにタバコを吸う人も吸わない人も使えるライターも作ったのだそう。頽廃的で耽美な世界観に、つい見入ってしまいます

まりもは、普段は個人でSNSなどで活動している学部1年生3人が、本イベントに向けて結成したグループです。デジタルや透明水彩で描いたイラストとポストカード、キーホルダー、粘土マスコットなどを出展
普段デジタルイラストを描くことの多いメンバーが立体や水彩画に挑戦するなど、今回は3人それぞれがいつもと違うことをやってみたそうです

学部1年生の四川暖、あまみの2人グループ、お砂糖ゆーとぴあは自主制作作品を中心に出展。四川暖はポストカードの販売に加え、授業課題のドローイングブックなども展示。ガラス瓶や光るものの収集が趣味とのことで、ガラスモチーフの作品も
あまみは原宿デコラファッションに感化されて制作したイラストの色紙やポストカードや、本物の卵の殻をデコレーションした《夢光るミライ卵》、夢で見た景色に佇む馬を描いた《跡》、《世》を出品しました

写真や立体の制作活動を行い、イベントにも積極的に参加する学部2年生小森翔生は、自主制作作品をメインに販売。大学構内で開催した個展で展示した写真パネルとそれらをキャンバスボードに転写した作品は、写真という媒体を通して、上手いだけではない、新たな表現を探求したものです
隣のテーブルの上に並ぶのは、仙台クラフトフェアに際して作成した《はにわもどき》。それぞれ顔つきやポーズが異なっており、お気に入りを見つけたくなります

AUA Craftersは、学内展示だけでなく、クラフトフェアやコミックマーケットなど県内外のイベントに参加し作品を発表しているサークルです
イラスト、油絵、立体などジャンルを問わず、各自の好きなものを探求しており、ここでは各メンバーが持ち寄った漫画本やイラスト、グッズを販売しました

撮影者:須田菜々美、佐々木愛莉
編集:佐々木愛莉

Information

AKIBI ARTs MARKET 2025

イベントは終了しました
期 間|2025年2月22日(土)~2月23日(日)
時 間|10:00~18:00
会 場|秋田公立美術大学サテライトセンター(秋田市中通2-8-1フォンテAKITA6階)
入 場|無料 ※作品購入は当日現金払いのみ
主 催|秋田公立美術大学
企画・運営|NPO法人アーツセンターあきた

お問い合わせ|秋田公立美術大学サテライトセンター TEL.018-893-6128

Instagram|akibi_satellite
https://www.instagram.com/akibi_satellite/

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