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研究報告展「新波神社・北辰妙見像の仮想修復」を 秋田公立美術大学サテライトセンターで開催

現在秋田公立美術大学サテライトセンターにて、井上豪教授(美術教育センター)と熊谷晃准教授(ものづくりデザイン専攻)による研究プロジェクトチームが取り組んだ「新波神社・北辰妙見像の仮想修復」に関する研究報告展が開催中です。新型コロナウィルス感染拡大の予防措置として、ご来場いただけない方に向けて、研究の一端をご紹介するレポートをお届けします。

文化財指定以来、45年ぶりの調査が実現

秋田市雄和の歴史ある古社・新波神社に保管されている「北辰妙見像」(秋田市指定文化財)は、なんと平安時代作とされる木彫像です。貴重な文化財ながら保存状態が悪く、鑑賞はできない状態にありました。なんとか像の元の姿を安全な形で拝むことができないか。そんな問いかけからスタートした仮想修復に向けたプロジェクト。東洋美術史を専門とする井上豪教授と、漆が専門の熊谷晃准教授が研究プロジェクトチームを組み、調査に着手しました。

2019年12月に写真撮影や計測等のために調査が行われました。今回の調査は、1972(昭和47)年の文化財指定以来、なんと45年ぶりのこと。
像を詳しく調査すると、まだ元の表面が残っている箇所があり、破損箇所を埋めて元の表面に合わせていけば、ある程度の復元が可能な状態であることが判明しました。しかし、北辰妙見像は直接手を振れることができない貴重な文化財です。そこで、プロジェクトチームは、3Dデータ技術の活用に向けて動き出しました。

北辰妙見像(一部)

3Dデータ技術と伝統技術の融合

”3Dスキャナーを使ってデータを取得し、データ上で破損個所を埋めることができれば、本来の姿に近い像が再現できるのではないか”

”さらには、3Dプリンタで出力した複製を使って、実際に「修復」することも可能になるのではないか”

そんな仮説を検証するために、デジタルファブリケーション協会の協力を得て、2018年9月12日~13日の2日間、高精度のハンディスキャナー「Ein Scan Pro」を用いて像の形状のデータを取得し、その後コンピューター上で修復シミュレーションを進めました。

さらには、3Dデータを3Dプリンタで出力し、作成されたレプリカを用い、漆を使用した伝統技術による修復作業にも挑戦。3Dプリンタによる樹脂で造形された像に漆で加工することによる苦労、損傷が激しい像の欠損部を補うにとどめ、顔の表情などは細部まで再現せず、別に推定図(展示中)を作成した修復作業の過程も展示では紹介されています。

北辰妙見像の3Dイメージ
コンピュータ上で仮想修復した像

今回の研究報告展では、現状を複製した像、コンピュータ上で仮想修復した像、さらには現状の複製を、漆を使用した伝統技術で修復した像の3体を展示するとともに、調査から仮想修復を行う過程を写真や映像とともに紹介しています。

本来であれば、多くの方にご覧いただきたい展示ですが、新型コロナウィルス感染拡大の予防が大切です。少しでも体調が悪い場合は無理をせず、来館をご遠慮いただけますようお願いいたします。

Information

研究報告展「新波神社・北辰妙見像の仮想修復」

会期:2020年4月1日(水)~4月10日(金)10:00~18:50
会場:秋田公立美術大学サテライトセンター
(秋田市中通2-8-1 フォンテAKITA 6F)
主催:秋田公立美術大学・研究プロジェクトチーム(井上豪、熊谷晃)

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた 事務局長

三富章恵

静岡県生まれ。名古屋大学大学院国際開発研究科修了。2006年より、独立行政法人国際交流基金に勤務し、東京およびマニラ(フィリピン)において青少年交流や芸術文化交流、日本語教育の普及事業等に従事。
東日本大震災で被災経験をもつ青少年や児童養護施設に暮らす高校生のリーダーシップ研修や奨学事業を行う一般財団法人教育支援グローバル基金での勤務を経て、2018年4月より現職。

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