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秋田公立美術大学 公募企画展「ビヨンセレクション 2025」のラインナップ公開

2021年よりスタートした秋田公立美術大学の学内公募事業「ビヨンセレクション」。個展・グループ展などの形式による展覧会の開催を通じて、意欲的な学生による日頃の研究・創作の成果を発表します。秋田公立美術大学の教員による審査を経て、今年度の4つの採択企画が決定しました。

ビヨンセレクションとは?

2021年よりスタートした秋田公立美術大学の学内公募事業。個展・グループ展などの形式による展覧会や実験、公開制作を行い、意欲的な学生による日頃の研究・創作の成果を発表します。展示期間中に専門家によるレビューを受ける機会を設け、作品の撮影記録とともに評論を公開し、学生の将来の作家活動を視野に入れた支援を行っています。

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ビヨンセレクション2025 ラインナップ

約1ヵ月の公募期間を経て応募のあった企画の中から、秋田公立美術大学の教員による審査を経て4つの展覧会企画の採択が決定しました。
それぞれの展覧会について、作家の過去作とともに紹介します。

「土壇場草木塔」(仮)

会期予定:2025年10月4日(金)~11月3日(月・祝)

撮影:黄敏 Huang Min

供養塔としての⽯造物「草⽊塔」を起点に、植物と⼈との関係性を問い直すインスタレーション展⽰。
草⽊塔は、⼭形県置賜地⽅に多く集まり、現存する供養塔でありながら、その建⽴理由には不明な点が多い。現在では時代に合わせて解釈され、変遷しながら親しまれている。
根を失いながらも⽣きようとする切り花のように、草⽊塔の存在は⼈の思いに寄り添いつつも、どこか宙づりで、曖昧な存在である。
本展では、そうした「草⽊塔」の周縁に「庭」をつくることを試みる。
鑑賞⽤植物の屈性、光や重⼒への反応に着⽬し、植物と⼈の⾮対称で相互的な関係に「庭」という仮想的空間を⾒出す。切り花が動くように、⼈もまた植物に動かされている。その気配を絵画・映像・絵⽇記によって表現し、可視化する。
⼭形県⽩鷹町深⼭地区は天蚕や紙漉きなどの生業が現代でも引き継がれている土地であり、草木塔群も存在している山間地域であり、住⼈の生活と植物との関係が深いと考える。2025年6月1日から7月4日までの約1ヶ月、深山地区の空き家に滞在しながら制作とフィールドワークを⾏い、地区に住む住⺠と植物との距離を測り、作品が緩やかにつながっていくような展⽰空間を試みる。

撮影:津島岳央
秋田公立美術大学大学院 複合芸術研究科 2年

曽田 萌 Moe Soda

広島生まれ。秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科在籍。2021年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業後、美学校「現代アートの勝手口」を受講。同年9月から花屋でのアルバイトを始め、植物と人の関係性を「庭」として捉え、作品制作を続けている。2024年10月からは山形県内に多く集まっている草木塔の調査を起点に、人や環境に対して巻き込み・巻き込まれながら、地域に入り込んでいく形で、数珠繋ぎにフィールドワークを行っている。

「風の流るるほとりに」(仮)

会期予定:2025年11月10日(月)~12月8日(月)

薄暗い中、ぼんやりとした明かりをたよりに歩みを進める。
場所を見渡し、作品に視線をうつし、他にもひとがいることに気づく。 ゆっくりと、気配を感じとっていく。
おおきな流れのようなものがここに。
確かにここにあると。
そして、その流れのなかに私たちはいるのだと。

ふとしたときに、そう、思うのだろう。

秋田公立美術大学大学院 複合芸術研究科 1年

藤原櫻和子 Sawako Fujiwara

兵庫県生まれ。秋田公立美術大学ものづくりデザイン専攻 卒業。秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科 在籍。 主に土を用いて「風通りのよい形」をつくっています。生きることとつくることが混ざり合う生活の中で、出会うものごとや人たちがいます。その関係性のあいだに細い風をすっと通し、縁をながく繋いでいけたらなと思う今日この頃です。

「虎日記」

会期予定:2025年12月13日(土)~2026年1月20日(火)

私は現実と夢の内容を日記として毎日記録し、その中から印象的な事象を取り上げ、意識と無意識の関係性を分析しながら作品を制作している。今回の展示では、今年の2月4日に小説家・内田百閒の『虎』という特異な短編小説を読んだことをきっかけに虎に関する夢を何度も見、現実でも虎を意識し、最終的に動物園まで虎を見に行くことになる一連の記録を油彩画やオブジェによるインスタレーションで表現する。古来、虎は動物という枠を超えた超自然的な存在として人々に認識されることが多く、民話や慣用句などにも頻繁に登場する。本展覧会は、人々の心に棲む「心像としての虎」を探りつつ、日記の記録に見られる意識と無意識の相補性や統合性などに焦点を当て、日々我々の内部で繰り広げられている両者の興味深い働きについて深く考えようとするものである。

秋田公立美術大学 美術学部 アーツ&ルーツ専攻 3年

今野 嵩琉 Takeru Imano

2004年兵庫県生まれ。秋田公立美術大学3年、アーツ&ルーツ専攻在籍。夢や無意識を人類のルーツと捉え、現実と夢の内容を交互に記録した日記をもとに意識・無意識の関係性についてリサーチや制作を行っている。昨年は秋田県の若手アーティスト支援事業である「アーツアーツサポートプログラム」に採択され、個展「喋る羊の夢」をアトリオンにて開催した。

「重 な る 記 憶 / 隔 た る 風 景」

会期予定:2025年2月26日(火)~3月29日(日)

本展では、秋田の空き家に残されていた持ち主不明の古い写真を「記録」ではなく「記憶を想起させる素材」として捉え、絵画によってその記憶を再構成し、過去と現在、自己と他者をつなぐ表現を試みています。いずれ忘れられてしまうかもしれない写真と向き合い、その中に映る人物や風景と、作家自身がどのような関係を築けるのか。その問いのなかで生まれた作品群を展示します。

秋田公立美術大学大学院 複合芸術研究科 1年

河塚彩和 Sana Kawatsuka

2002年生まれ。佐賀大学芸術地域デザイン学部芸術地域デザイン学科卒業後、2025年より在学。「描く」という行為を通して他者の記憶と向き合い、過去と現在をつなぐ絵画表現を模索している。

ビヨンセレクション2025に採択された展覧会の詳しい情報は、アーツセンターあきたのWebサイトや公式Facebookにて順次発表予定です。

Information

秋田公立美術大学ビヨンセレクション2025 採択企画

■会期 I 曽田萌 個展「土壇場草木塔」(仮) 2025年10月4日~11月3日
■会期 II 藤原櫻和子 個展「風の流るるほとりに」(仮) 2025年11月10日~12月8日
■会期 III 今野嵩琉 個展「虎日記」 2025年12月13日~2026年1月20日
■会期 IV 河塚彩和 個展「重 な る 記 憶 / 隔 た る 風 景」 2025年2月26日~3月29日

■いずれも会期中無休、入場無料
■会場:秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT
   (秋田市八橋南1-1-3 CNA秋田ケーブルテレビ社屋内)
■時間:9:00〜17:30
■主催:秋田公立美術大学
■協力:CNA秋田ケーブルテレビ
■企画・制作:NPO法人アーツセンターあきた

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