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【未来の生活を考えるスクール】第2回レポート
「個性と多様性とー自由にふるまい表現することー」

2020.12.23

【#秋田市文化創造館プレ事業】
新しい知識・視点に出会い、今よりちょっと先の生活について考える
「未来の生活を考えるスクール」(全4回)。
第2回は、「個性と多様性と―自由にふるまい表現すること―」。

子どもや障がいを持つ人をはじめ多様な個性を持つ人々が自由にふるまい表現できる場所を、デザインし、生み出してきた活動をふり返りながら、コミュニケーションの方法を見つめ直しました。
ゲストは、静岡を拠点にアートディレクションや場づくりの実践を行う(株)大と小とレフ取締役で、静岡県文化プログラムのコーディネーターもつとめる鈴木一郎太氏と、アーティストとして全国各地の人々と関わることをテーマにプロジェクトを展開しながら、子どもたちが自ら考え行動し、創造力を養うカマクラ図工室に見守り師として参加する柚木恵介氏。第2部のトークセッションの進行は、アートプロデューサーでもあるNPO法人アーツセンターあきたのディレクター橋本誠がつとめました。

※「未来の生活を考えるスクール」は、「秋田市文化創造館」プレ事業〝乾杯ノ練習〟の一環です(秋田市委託事業)。詳しくは#乾杯ノ練習

鈴木一郎太 Ichirota Suzuki(写真右 (株)大と小とレフ取締役)
静岡県浜松生まれ。20代をアーティストとしてロンドンで過ごしたのち、認定NPO法人クリエイティブサポートレッツで障害福祉と社会をつなぐ文化事業に携わる。その後、ソフト企画からハード設計までを扱う(株)大と小とレフを立上げ、文化、福祉、まちづくりなどの分野において、主体者の思いを整理し未来を見出す手助けをしている。 静岡県文化プログラム・コーディネーター、NPO法人こえとことばとこころの部屋理事。

柚木恵介 Keisuke Yunoki (写真左 アーティスト、秋田公立美術大学准教授・つくりかたつどいかたデザイン)
1978年生まれ。東京藝術大学デザイン科修了。インテリアデザイナーを経て、東京藝術大学、法政大学にて勤務後、2019年から現在秋田公立美術大学ものづくりデザイン専攻准教授として在籍。その土地に定期的に通い、人々と関わることをテーマとしたプロジェクトを展開。「島の家プロジェクト」「小豆島高校おみやげクラブ」などの瀬戸内国際芸術祭(2013)への参加をはじめ、「物々交換プロジェクト at タイ+だいご」(2015)、「物々交換プロジェクト at KENPOKU」(茨城県、2016)など、全国各地に活動の場を広げている。

橋本誠 Makoto Hashimoto (写真中央 NPO法人アーツセンターあきたディレクター、アートプロデューサー)
1981年東京都生まれ。横浜国立大学教育人間科学部卒業後、フリーランス、東京文化発信プロジェクト室(現・アーツカウンシル東京)を経て2014年に一般社団法人ノマドプロダクションを設立。2020年よりNPO法人アーツセンターあきたディレクター。多様化する芸術文化活動と現代社会をつなぐ企画に制作・広報・記録など様々な立場で携わる。KOTOBUKIクリエイティブアクション(横浜・寿町エリア/2008~)、生活と表現(東京・台東区/2015〜)。EDIT LOCAL LABORATORY アートプロジェクトラボ(2019〜)など。共著に「これからのアートマネジメント」(フィルムアート/2011)。

ポートレイト:草彅裕

 

【第1部】鈴木一郎太氏と柚木恵介氏によるプレゼンテーション

●すごく好きなプロジェクト「こどもはなうたコンテスト」

鈴木 鈴木一郎太と申します。今日はよろしくお願いします。さっそくですが自己紹介替わりに、自分は一切関わってないけれど、すごく好きな企画を最初に紹介させていただこうと思います。

「こどもはなうたコンテスト」という、岐阜県安八郡の企業が実施されている企画なのですが、スマホなどで子どもたちの「はなうた(鼻歌)」を録音した作品を募集・審査して賞を決めるプロジェクトです。審査で優劣をつけるわけではなく、ただ大賞だけは必ず決める。それ以外は「いい声だったで賞」という感じ。

このコンテストは既存の曲を歌うのではなく、オリジナルの楽曲であることが応募条件で、グランプリになると審査を担当する「あいのてさん」という音楽家のグループが伴奏をつけてくれるそうです。

全然テンポが違う曲なのですが、実は2013年、2014年と同じ子が優勝しています。審査は名前などの情報を伏せて行ないます。ちなみにこの子は連続でグランプリをとって殿堂入りをしたと聞きました。

私はこの企画がとても好きなんです。単純に「子どものはなうたって面白い」ということもありますが、これを主催しているのが昭和技研株式会社という産業廃棄物処理業者です。業務として、もう誰も住まなくなった廃屋の片付けをしたり、一人で住んでいて亡くなられてしまった方の家の片付けをしたり、そこから発展して「おもひでや」という部署を立ち上げて、思い出にまつわるさまざまなプロモーション活動をされています。

例えば、おばあさんが大事にしていた桐のタンスがあって、大きいし、もう着物も着なくなっているし、大事にしていたけれどもさすがに残すのは大変だということで、そのタンスを材料にしてミニチュアの桐ダンスを作ってプレゼントする。あるいは亡くなった方の生涯の話を聞いてそれを漫画にしてのこす。その一環として「“おもひでを閉じ込める”コンテスト」という名前で始まったのが、この「はなうたコンテスト」で、2018年まで開催されていました。この事業を行なっているのが産廃業者さんで、思い出を自分たちが扱っているから、その思い出を大事にするという主旨の企画の立ち上がり方に筋が通っていて、そこが一番好きな理由なのです。

まだ一度も主催してる方々にお会いしたことがなくて、いつか会いに行きたいなと思っています。企業がCSR (Corporate Social Responsibility)事業として本業と違うことをするのではなく、自分たちの本業とちゃんと紐づいている。そういう筋道の通り方が好きです。

●「黒板とキッチン」というコミュニティスペース

ここからは自分がこれまでやってきたことを少しだけ紹介させていただきます。

高橋匡太さんというアーティストが、静岡市にある駿府城公園というもともとお城があった公園で制作した作品のディレクションをしました。

また「しょうらいのくらし」という、上智大学の笠原千絵先生や天理大学の森口弘美先生が「ケアの文化研究所」と共同で行なっていた調査事業の、成果物のデザインプロデュースや編集をしました。知的障害のある人と研究者が協働で取り組んだ研究になります。

静岡芸術劇場が毎年行なっている「ふじのくに⇄せかい演劇祭」では、2015年に鳥公園の西尾佳織さんと一緒に演劇作品をつくりました。

他にも、浜松市林業振興課が、東京のビックサイトで開催される展示会に出展する際ブースのデザインをしたり、「鳥取藝住祭」の実行委員会のWEBマガジン立ち上げに携わったり、長野の上田市では劇場付きのゲストハウスのリノベーションをやったり、大阪のココルームのゲストハウスの計画などを経験してきました。

冒頭で「場づくり」という名目のご紹介がありましたが、「黒板とキッチン」というコミュニティースペースの運営をかれこれ6、7年やっています。いろんな人が来てそれぞれ思い思いに過ごしていくような場なのですが、特に主催企画をやるわけではなく、とにかく場を開いていって、中学生がなぜかここのスペースの運営を職場体験しにきたり、それに便乗して普段出入りしている大人たちが一緒に食事会をしたり、あるいは子どものワークショップに申し込んでいる人がいたり、おにぎりの食べ比べの企画を持ち込んでいる人がいたり。

いろいろな人が自分の思いついた企画をどんどん試せるような場所です。

●出会うと思わなかったものと出会う

「黒板とキッチン」は、日常的には大学生以上の人が多い印象です。近所の学習塾の警備員の方がタバコを吸いに休み時間に来るようになって、そのうち忘年会にも来るようになりました。近所のさまざまな職業の人たちが集まってきて、さらに県外からもいろんな人が来たりするので、ここでは出会うと思わなかったものと出会うきっかけが生まれたらいいな、という思いがあります。「この場所は〇〇のスペースですよ」と明言すると、〇〇ファンの人は集まりやすいのですが、そういうことを言わずに、できるだけ色を付けずにスペースの運営をしています。

貸切はあまりできないようにしてあって、貸切よりは場所を譲りあい幾つかの活動が同時に起こるのが理想です。例えば「コミュニティナース」に関心がある看護師の人たちが奥でミーティングをしている一方で、手前では商店街の視察に来た内閣府の人たちを商店街の人たちが出迎えている。そんなふうに、できるだけ違う話が自然と耳に入ってくるような場所にできたらいいなと思っています。

amazonで買い物をすると、目当てのものを買うには便利なのだけれども、例えば街の本屋さんに行くと背表紙や表紙に惹かれて全然興味を持つと思わなかった本をパラパラめくりだして買ってしまう、とよく言われますよね。自分が興味あるものを選び取るのではなくて、たまたま出くわしてみることが物理的にできるような場所は、意図的に作っていかないと、今はなかなかそうならないのかなと思いながらこの場所を運営しています。

●偶然出会った人たちが新しい活動を始める確率を上げる

万年橋パークビルという立体駐車場のビルがあります。2階から8階までが駐車場で、上の方に住居があるビルなのですが、ちょっと変わっていて8階の駐車場は駐車場として機能させずにフリースペースになっています。7階には作業場のようなアトリエがあったりして、建物全体がいろんな人の活動の受け皿になっている。こちらも主催事業は極端に少なくて、多様な活動が基本持ち込みで行われている場所がこのビルです。

これが7階です。8階は本当にフリースペースで、なにもない。中心に古民家二間分が移築されていて、ちょっと見えづらいですが囲炉裏があって、実際に薪をくべて火もおこせます。この場所がいろんな活動の受け皿となって、いろんなタイプのものが出会いやすい状況になっている。そういう多様な状況が生まれることが担保されている。偶然そこで出会った人たちが何か別の活動を始めたりする確率が少し上げられている。確変が起こるようなイメージです。「オシャレなコンテンツを提供しますよ」と呼びかけるとそれを受け取りに人が集まりますが、何を提供しているかわかりにくい所にわざわざ足を踏み入れる人は、比較的前のめりで能動的な人が多く、そういう人たちが出会うと何かおもしろいことが生まれる。確証はできないけど、その確率は上げられるんじゃないかということでビル全体が動いています。

発達がゆっくりな子どもたちのケアをする療育施設にアーティストが関わる事業に携わり10年以上経ちます。基本的に子どもの育ちについては、子どもには自分自身で育っていく力がもちろんあるし、そこに親のサポートと先生のサポート、三者で関わっていきますが、例えば先生の研修にダンサーや作業療法士が関わったり、親子の関係のところに音楽家やアーティストが関わりワークショップを行なったりします。これは美術家の深澤孝史さんが2007年から13年まで月1回のワークショップを行なっている中から生まれた、「おべんとう画用紙」という企画です。お弁当の枠が印刷された画用紙を子どもたちに渡して絵を描いてもらい、その絵をもとにお母さんやお父さんが実際にお弁当を作るというものです。もともとお弁当を持ってくる施設ではないのですが、今は夏休みの恒例企画になっていて、毎年、年少さんが夏休みの間にやる宿題になっています。

これは、川口淳一さんという作業療法士の方が、父親参観会のコミュニケーションを円滑にする相談を受ける中から作られた「幸福度グラフ」というコミュニケーションツールです。ここの園長先生がよくおっしゃっていたことで「わたしたちは福祉しか知らない」と。皆さん福祉の仕事をしているし、今の若手だったら大学や専門学校で福祉の勉強をしてここに就職する人が多いなかで、子どもが育っていく環境や社会に出ていくときに、自分たちは福祉のプロ、養育のプロではあるけれども、社会をよく知っているわけではない。自分たちはそのことを自覚したうえで子どもたちに関わっていきたい。アートに限らずですが、さまざまな業界の専門家、プロとやり取りをしていくことで、自分たちの仕事やあり方を見直す機会が生まれるんじゃないか。そういう思いからこのアーティストたちとのプログラムを続けています。

障がいのある人、まったく関係ない一般の人、福祉職の人も参加する社会福祉法人ひかりの園の企画があります。

1講師につき2会場で行なうことにして、一方はアクセスの良い駅の周辺の会場で、もう1つはややアクセスは悪いけれども高齢者施設の多目的室を借りて開催しました。駅からアクセスが良い会場では10歳から63歳ぐらいまでの幅だったのが、高齢者施設では0歳から92歳まで参加者の幅ができました。

ケアの側にいる福祉職の人たちが、例えば障がいのある利用者を連れてきたりしていましたが、こういった場ではその利用者の姿が普段見ている姿と全然違ったと驚いて、これだけ多様な人が集まっている場は普段の生活の中にないので、そうした場における反応がとても面白かった、新鮮だったと。「自分たちは利用者のことを過小評価してたんじゃないかとすごく考えさせられた」という感想をいただきました。

●「やせたいひと〜!」

最後に、これは良いなと思った「声がけ」について。宮崎県日向市にある大人の障がいのある人たちの施設「風舎」の女性スタッフが、昼食後のエクササイズをするためにYouTubeなどでノリの良い曲を利用者と一緒に選んで、大きな音でかけて思い思いに踊ります。その際に「踊るよ〜!」ではなくて、大きな声で「やせたいひと~!」と声がけをしているところに出くわしました。それがとても良いなと。やせたいと思ってない人はやらなくて良い。この声がけはこうした施設で意外と聞かないなと思いました。「踊る時間だよ」「エクササイズの時間だよ」と言ってしまいがちですよね。なんなら手を引いて連れ出してしまったり。実際「やせたいひと~!」と言って、最初は若手の女性スタッフだけがはりきって踊っている状況でしたが、だんだんと何人かが立ち上がって参加する。もちろん、最後は全員が躍るなんていうことにはならない。これが多様性の話にどこまで関係しているかはわかりませんが、良い声がけだなと思ったので、最後に紹介させていただきます。