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再生する旧県立美術館は、どんな性格? 新たな施設のあり方とは

2013年の閉館から5年、再生に向けて動き出した旧県立美術館。その利活用を話し合う第2回目のワークショップでは、ありたい未来を描きながら施設のあり方を探りました。旧県美再生!ワークショップ「せばなるあきた」の報告(2)です。

2013年の閉館から5年。旧県立美術館は2020年をめどに、芸術文化によるまちおこしの拠点「(仮称)秋田市文化創造交流館」として、再生に向けて動き出しています。

まだ蒸し暑さの残る8月26日には、旧県美再生!ワークショップ「せばなるあきた」の第2回目を山王一丁目食堂(秋田市役所2階)で開催。20~70歳代の44名が参加しました。

ファシリテーターからのちょっと変わった問いかけに戸惑いながらも、活発に繰り広げられたワークショップの様子をレポートします。

会場は秋田市役所2階の山王一丁目食堂
篠原幸子さんのファシリテーションで、和やかなムードで進みました

(仮称)秋田市文化芸術創造館のあり方とは?

ワークショップは前回に続き、篠原幸子さんのファシリテーションと平元美沙緒さんのグラフィックレコーディングで進行。

第2回目は
●旧県美のあり方ができている。
●ここにいる皆さんの関係性が少し深まっている。
●3回目も来よう・誰かを誘おう・この後の懇親会に出ようと思っている。
がゴールです。

参加者ひとりひとりが簡単に自己紹介した後、今回のワークショップの目的と、旧県美を含めて秋田市で進行しているまちづくりの計画について説明。そしていよいよ、ワークショップのスタートです!

話し合う前に体をほぐしてウォーミングアップ
平元美沙緒さんのグラフィックレコーディングは見応えがあります

2017年度は、天井が高く、独特の空間を持つ旧県美の場所利用の可能性を話し合い、改修設計に生かすワークショップを行いました。
そして2018年度は、施設のあり方や運営方法、事業計画といった運営管理計画にワークショップで出た意見を反映させていきます。

そこで重要になるのが、旧県美の「あり方」です。

旧県美は市民に対して、どんな態度、どんな振る舞いで接するのか。その蓄積が、施設の姿として見えてくるようになるからです。
今年度のワークショップではまず、旧県美の施設としてのあり方を大切にしたいと考えました。

自分の未来を1枚の絵に

ウォーミングアップでちょっと体をほぐした後、篠原さんが問いかけたのは、

「皆さんひとりひとりが思う、ありたい未来とはどんな未来ですか?」

という質問でした。
自分の未来を考えた先に、旧県美の未来を描いていく方法です。

10年後、20年後に生き生きと暮らしている自分の未来を想像して、それがどんな未来なのか1枚の絵にしてもらいました。
未来を思い描きながら、ポジティブな感情になったのか、しみじみとした感情になったのかー。
どんな感情が沸き起こってきたかは人それぞれ。その感情や気づきを大切にして、グループ内でありたい未来を語り合いました。

この後、篠原さんから質問が次々と投げかけられます。ワークショップはどんな進行を見せるのでしょうか。

あなたはどんな態度や振る舞いの人と付き合いたいですか?

絵を描いたり、タイトルを付けたり、説明する言葉を付け足したりしながらワークショップは進行。
故郷のこと、街のこと、家族のこと、趣味のこと、年齢のこと…。
篠原さんの問いかけに答えていくうちに、自分の未来と、その周辺の未来が徐々に見えてきたのではないでしょうか。

そして、さらなる問いかけがありました。

「そんな未来であなたが付き合いたい人は、どんな態度や振る舞いをしている人でしょうか?」

どんな人と付き合いたいのかーと問われると、なぜか顔がほころぶ参加者の皆さん。そしてここから、ワークショップの内容は旧県美の施設としてのあり方へと移っていきました。

「旧県美がもし人だったら、どんな態度や振る舞いならあなたは付き合いたいですか?」
「そんな旧県美さんは、どんな性格をしているでしょう?」

さらに、たたみかけるように問いかけが。

「そんな性格を持つ旧県美さんは、どんなことを大切にしているでしょうか?」

旧県美の人格=施設のあり方

誠実であること、楽しいこと、面白いこと、おおらかであること。懐が深いこと、相手を尊重すること、実験的で革新的であることー。
たくさんの言葉のなかから、自分たちが求める旧県美の人格=施設としてのあり方が浮き彫りになっていきました。

そして最終的に出されたのが、各チームがまとめ上げた10のあり方です。

一人一人の感性を五感で楽しむことのできる旧県美さん
リラックスできる自分の時間を大切にしている癒し系の旧県美さん
訪れる友達(市民)が旧県美に何を期待しているのかを感じ、見極め、行動することができる旧県美さん

柔軟性はあるがぶれない旧県美!
どんな人も認めることを大切にしている旧県美さん
母ちゃんのようなあたたかさと、父ちゃんのようなやんちゃ心を併せ持つ旧県美さん
偏見を持たずに、相手にも自分にも素直な気持ちを持つことを大切にしている、鋭い観察眼を持って、相手の話を聞きつつ、自分の意思表示ができる旧県美さん
自分も楽しみつつ、周りに貢献するのが好きな旧県美さん
多くの出会いやつながりを作るために開放的で誰でもwelcomeな感じを大切にする旧県美

皆さんの言葉から浮かび上がってきたのは、ハード面とソフト面両方における、旧県美の新たな姿でした。この10の成果に至るまでに、それぞれが悩みながら模造紙に書いた言葉の数々にもたくさんの思いが詰まっていました。

これらを紐解き、編み直して、旧県美の大きな枠組みにしていきます。

参加者からは、ワークショップに対する疑問や質問も寄せられました。それらも踏まえて10月までに、運営管理計画のラフスケッチを描いていきます。

第3回目のワークショップではそれを参照しながら、専門家陣を交えて旧県美を存分に使った企画を作り出していきます。参加者の思いが専門的な知識の上でどんな企画を練り上げていくのか、ご期待ください。

撮影:伊藤靖史(クリエイティブペグワークス)

運営管理計画素案を発表!

旧県立美術館が新たな施設として再生されるにあたって、どのような施設で、どのような運営が望まれるかを考えた「せばなるあきた」。

ワークショップの成果をまとめた「運営管理計画(素案)」をより良いものとするため、現在の素案を報告するとともに意見をいただく機会を設けます。

開放的な場や学びの場、鑑賞の場、活動の場などが盛り込まれた施設になろうとしている「(仮称)秋田市文化創造交流館」。さまざまな視点からのアドバイスをいただきたく、ご参加をお待ちしています。

Information

(仮称)秋田市文化創造交流館運営管理計画素案報告会

開催日:2019年1月26日(土)
時 間:10:00〜12:30(9:45開場)
会 場:にぎわい交流館AU 2階展示ホール
定 員:60名

お申し込み・お問い合わせ
①参加者全員のお名前②代表者のお電話番号をTEL・FAX・MAIL・FBメッセンジャーのいずれかにてご連絡ください。
TEL 018-888-8137
FAX 018-888-8147
MAIL info@artscenter-akita.jp
(仮称)秋田市文化創造交流館運営管理計画素案報告会

プログラム概要
1)運営管理計画(素案)の紹介、説明
2)内容への感想、意見のメモ
3)共有(小グループ)
4)全体での意見確認・応答

※お車でお越しの方は「エリアなかいち駐車場」など近隣の駐車場をご利用ください。
※バスでお越しの方は、「千秋公園入口」あるいは「木内前」バス停をご利用ください。

★パブリックコメント★
ただいま秋田市では、以下にて(仮称)秋田市文化創造交流館運営管理計画(素案)に関する意見募集(パブリックコメント)を実施しています。
パブリックコメントはこちら

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

高橋ともみ

秋田県生まれ。博物館・新聞社・制作会社等に勤務後、フリーランス。取材・編集・執筆をしながら秋田でのんびり暮らす。2016年秋田県立美術館学芸員、2018年からアーツセンターあきたで秋田公立美術大学関連の展覧会企画、編集・広報を担当。ももさだ界隈で引き取った猫と暮らしています。

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