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旧県美を舞台に実現したい 「夢の企画」を発表

2020年のオープンに向けて動き出した「(仮称)秋田市文化創造交流館」。ありたい未来とともに、実現したい「夢の企画」を提案した旧県美再生!ワークショップ「せばなるあきた」の報告(4)です。

2020年秋のオープンを目指して動き出した旧秋田県立美術館。芸術文化によるまちおこしの拠点「(仮称)秋田市文化創造交流館」の運営管理計画策定を目的に開いてきた全4回のワークショップ「せばなるあきた」は、11月18日(日)、最終回を迎えました。

回を重ねることで思いはより明確になり、参加者同士の関係性も深まったなかで行われた最終回では、旧県美を舞台にした「夢の企画」が提案されました。

全4回のファシリテーターを務めた篠原幸子さん(NPO法人 場とつながりラボhome’s vi)。「旧県美を活用するだけでなく、ありたい“まちの未来”を考え、思いが溢れ出す場になればと思ってやってきました。参加者同士が仲良くなって、これから楽しいことを企画したり助けっ合ったりしてもらえればと願っています」
平元美沙緒さん(まちづくりファシリテーター)のグラフィックレコーディングは、全4回のワークショップで模造紙32枚! 「言い足りないことがあったら何でも言ってくださいね。全て書きます!」
もう知った顔もあれば、初めて参加の人も。これまで通り和やかな雰囲気でチェックイン

「夢の企画」の実現に向けた第一歩

第4回目のワークショップは
・運営管理計画のイメージが共有できている。
・明日からも企画の実現に向けて動いていこう!と思っている。
・ここにいる皆さんの関係性がさらに深まっている。
・懇親会に出ようと思っている。
がゴールです。

第3回目には、ワークショップを運営するアーツセンターあきたが旧県美の大きな枠組みを描いたステイトメントを発表。今回はこのステイトメントや活動方針をもとに、「クリエイティビティ」について、市民企画事業や人材育成事業、コーディネーターやメンターなどの体制、アーカイブ、各施設との連携、柔軟な組織運営をしていくことなど現段階の運営管理計画素案を解説しました。秋田市企画調整課からは、施設周辺の空間のしつらえの方向性について話がありました。

前回からスタートした「夢の企画」づくりも、いよいよ大詰め。
参加者それぞれが情熱と主体性をもって提案した企画をもとに、「この指とまれ」方式でグループになり、話し合いを続けました。

グループになったり、離れて別々の企画として模索したり。
メンターからのアドバイスや、参加者同士の意見交換によってブラッシュアップされた「夢の企画」。提案された10の企画がこちらです!

旧県美で実現したい「夢の企画」

  • 若者を対象にした公募による作品発表事業「見ればー(仮称)」
    高校生〜大学院生を対象に映像・平面作品等を公募し、スタジオAの大画面を発表の場とする。大空間で映像、演劇などとのコラボレーションも。
  • 統一テーマによる全館イベント
    月ごとに水、色、食など統一テーマを設け、舞踊、料理、作家の講座などを開催。全館を使って子どもたちが料理、音楽、舞踏、美術等のホンモノに触れ、「好き」が見つかる場になればいい。テーマに可変性を持たせる。
  • 民俗芸能×パフォーミングアーツ
    後継者不足が課題の民俗芸能と、パフォーミングアーツの担い手が協働するワークショップを開催。民謡とダンス、シェークスピアの日本版と番楽を組み合わせたり。民俗芸能学校で担い手を育成し、民俗芸能で食べていける環境を秋田に整備したい。資料のアーカイブも。
  • まちをめぐる数珠つなぎトーク
    まちの歴史を知ることで秋田をもっと好きになる。まちの達人が知り合いを紹介しながらリレー形式でトークイベントを開催。明治〜昭和のまちの歴史紹介とまち歩き、昔あった本屋等、毎回テーマを変える。外から見える空間だったり、テーマによって会場を変えるのもいい。
  • 平野政吉について調べるなべっこ遠足
    世代を超えて平野政吉のことを学びながら屋外空間を使用してみんなで楽しくなべっこ遠足。藤田嗣治の絵をコレクションするなど平野の人生を知り、お腹もいっぱいになってもらう企画。
  • 移動コタツ
    人と人をつなぐコタツで旧県美のいろいろなスペースをハッキングし、偶然居合わせた市民が語り合える場を創出する。街中に出張あり。数珠すなぎトーク、遠足など他のイベントともコラボできる。
  • あきたキッチンスタジアムー文化としての食と酒の再発見ー
    秋田の文化を掘り起こし、芸術文化に興味のない人も旧県美に来るように、食や酒をテーマにイベントを開催。「きりたんぽvsだまこ」など県内の人だけでなく観光客も参加できる仕掛けをつくる。施設をオープンにしていろいろな人が集まる場としたり、キッチンスタジムがでるような設備に。
  • ジャンル・時代・国境を越えた多分野同時多発的移動パフォーマンス
    全館を使って、ちびっこアート劇場、ダンス、民俗芸能、コスプレ大会、昭和のインスタレーションやファッションショー、大壁画制作などを開催。多分野・多世代のパフォーマーが集結し、サーカスのような1週間を繰り広げる。
  • まちのアイデアが生まれるシェアアトリエ(クラフト市)
    旧県美を中心に、まちにアートやクラフトがあふれ出す。中心市街地に点在するパブリックアートや作家のオープンスタジオ、シェアアトリエやクラフト市が展開され、人の回遊が生まれる。旧県美がポータルな情報発信の場として機能し、動線をつくっていく。
  • 家族でお散歩
    旧県美・明徳館・千秋公園でおはなし会や体操教室、芝生で秘密基地、星空見学会、マルシェ、洋服・玩具の交換会等を同時開催。1日中親子で遊べる空間に。育児したいまちナンバーワンの秋田市に。
“実現した”企画として、グループごとにニュース形式で発表。メンターからのアドバイスを受けて、より実現性の高いものとなりました
「これら全ての企画が実現できるのではないかなと思いました。企画は寝かせてしまうと、死んでしまう。いかに動かし続けるかが大事です。分解して小さなステップに分けてもいいので、ぜひ動き続けてほしいですね」(秋田市地域おこし協力隊 石井宏典さん)
「企画提案者同士が関わり合いながら、一緒にやっていけるような企画だなと思いました。自分たちの案を実現することだけにこだわらず、提案者と市民が関わり合いながら持続的な可能性を探っていけたら面白い。それぞれが企画をあたため、運営者、市役所の方にも協力してもらいながらぜひ実現してほしいと思います」(秋田工業高等専門学校 助教・博士 鎌田光明さん)

旧県立美術館が新たな施設として再生されるにあたって、施設の使い方や事業展開の方向性、役割などを考えてきた旧県美再生!ワークショップ「せばなるあきた」。4回のワークショップの成果は今後、運営管理計画素案に反映されていきます。

撮影:小田嶋了是

「せばなるあきた」ファシリテーター

NPO法人アーツセンターあきたが運営した全4回のワークショップ「せばなるあきた」では、ファシリテーターの2人が運営を支えてくれました。ワークショップの準備、進行、そしてグラフィックレコーディングと大活躍。参加者も顔なじみとなり、参加者と語らうお昼休みも楽しいひとときとなりました。

Profile

篠原 幸子

2008年、home’s viが企画運営した京都市未来まちづくり100人委員会に参加。各々の意見や生き方を尊重して主体的に行動すること、共に未来を創り出す土台としての対話や関係性構築の必要性を確信し2011年から活動開始。組織や地域がありたい未来に向かうための場づくり等を分野や手法にこだわらずに行なっている。

Profile

平元 美沙緒

1983年徳島市生まれ。奈良女子大学大学院修了。学生時代は伝統的な建造物・景観を軸にしたまちづくりに関わる。結婚を機に夫の出身地である秋田に移住し、教育委員会勤務等を経て現在、秋田県内のまちづくり活動やワークショップにおけるファシリテーター、グラフィック・レコーダーとして活動中。

「せばなるあきた」メンター

旧県美で実現したい「夢の企画」に対し、専門的立場からアドバイスをしていただいたのがメンターの3人です。参加者の企画を実現に近いかたちにしてくれました。

Profile

鎌田 光明

男鹿市生まれ。「空間計画」を専門として、建築・都市空間の持つ雰囲気や意識を人間を主体とした科学的・客観的な手法を用いて研究。特に秋田県内を対象にした研究・デザイン提案に一貫して取り組む。著書に「建築・都市計画のための空間学事典」など。日本建築学会、人間・環境学会所属。

Profile

東海林 論宣

仙南村(現美郷町)生まれ。大学在学中にデザインを学び、ウェブ、インテリア、グラフィックデザイン等の政策を通してデザインのトータルディレクションの重要性を確信。2006年、株式会社See Visions設立。エリアリノベーションの手法で、亀の町ストア、かメバルなどを展開する。

Profile

石井 宏典

北海道函館市生まれ。国際教養大学卒業後、三井住友銀行を経て学生の起業を支援するNPO法人ETIC.勤務。2017年から秋田市地域おこし協力隊として、秋田で起業を目指す若者の支援を行う。

撮影:伊藤靖史(クリエイティブペグワークス)

運営管理計画素案を発表!

旧県立美術館が新たな施設として再生されるにあたって、どのような施設で、どのような運営が望まれるかを考えた「せばなるあきた」。

ワークショップの成果をまとめた「運営管理計画(素案)」をより良いものとするため、現在の素案を報告するとともに意見をいただく機会を設けます。

開放的な場や学びの場、鑑賞の場、活動の場などが盛り込まれた施設になろうとしている「(仮称)秋田市文化創造交流館」。さまざまな視点からのアドバイスをいただきたく、ご参加をお待ちしています。

Information

(仮称)秋田市文化創造交流館運営管理計画素案報告会

開催日:2019年1月26日(土)
時 間:10:00〜12:30(9:45開場)
会 場:にぎわい交流館AU 2階展示ホール
定 員:60名

お申し込み・お問い合わせ
①参加者全員のお名前②代表者のお電話番号をTEL・FAX・MAIL・FBメッセンジャーのいずれかにてご連絡ください。
TEL 018-888-8137
FAX 018-888-8147
MAIL info@artscenter-akita.jp
(仮称)秋田市文化創造交流館運営管理計画素案報告会

プログラム概要
1)運営管理計画(素案)の紹介、説明
2)内容への感想、意見のメモ
3)共有(小グループ)
4)全体での意見確認・応答

※お車でお越しの方は「エリアなかいち駐車場」など近隣の駐車場をご利用ください。
※バスでお越しの方は、「千秋公園入口」あるいは「木内前」バス停をご利用ください。

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

高橋ともみ

秋田県生まれ。博物館・新聞社・制作会社等に勤務後、フリーランス。取材・編集・執筆をしながら秋田でのんびり暮らす。2016年秋田県立美術館学芸員、2018年からアーツセンターあきたで秋田公立美術大学関連の展覧会企画、編集・広報を担当。ももさだ界隈で引き取った猫と暮らしています。

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