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能代松陽高等学校で高校生と探る 「北高跡地で取り組むプロジェクト」のアイデア

【能代北高跡地のWSレポート3】
能代北高跡地利活用の可能性を探るワークショップは、第1回〜3回に加えて高校生だけのワークショップも開催! 更地となった北高跡地で実際に試してみたいプロジェクトのアイデアについて、生徒たちと話し合いました。

次世代と共に考える
能代北高跡地と能代の未来

能代北高跡地利活用の可能性を探るワークショップ(企画・運営:秋田公立美術大学)では、ワークショップで出たアイデアを専門的な視点から検証し、北高跡地のポテンシャルを引き出す実験的なプロジェクトを具体的に考えていきます。2021年度は3回のワークショップに加えて、高校生対象のワークショップを企画。2021年12月9日(木)、秋田県立能代松陽高等学校にてワークショップを行いました。

第1回WS|2021年10月17日(日)13:00〜16:00 能代市役所
第2回WS|2021年11月28日(日)13:00〜16:00 能代市役所
高校生WS|2021年12月9日(木)13:00〜16:00 能代松陽高等学校
第3回WS2022年1月16日(日)13:00〜16:00 能代市役所 延期となりました

北高跡地利活用アーカイブ

北高跡地利活用に関する能代市のウェブサイトはこちら

北高跡地利活用(アーツセンターあきた)

能代北高跡地利活用スタートブック「これから、ここから。」(PDF)
(2021年10月発行)

▼能代北高跡地のワークショップニューズレター
「これから、ここから。」Vol.1(PDF)(2021年11月発行)
「これから、ここから。」Vol.2(PDF)(2022年1月発行)

みんなが北高跡地でやってみたいプロジェクトは?

高校生ワークショップには、10月に行った第1回ワークショップにも参加した生徒も含めた秋田県立能代松陽高等学校の2年生36人が参加しました。更地となった能代北高校は、能代松陽高校の前身でもあります。
初めに、プロジェクトを率いる小杉栄次郎(秋田公立美術大学教授)が挨拶。2020年度に行った基礎調査のこと、建物を建てる前提ではなく本当に必要なものとは何か、時間をかけて議論を重ねていくことなどを話しました。井上宗則(秋田公立美術大学准教授)は北高跡地の立地のこと、可能性展開型のワークショップであること、国内外で行われている実験的なプロジェクト例などを紹介。この後、7グループに分かれたワークでは北高跡地で実験的に取り組んでみたい短期プロジェクト・中長期プロジェクトのアイデアを話し合ってもらいました。

ワークショップには平元美沙緒さんのグラフィック・レコーディングが伴走
小杉栄次郎「高校生の皆さんに、あの場所で将来何をしたいか、何ができたら素敵かを想像して使い方のアイデアを出してほしいです。もしかしたら将来、皆さんが利用する場所や施設になるかもしれません。そういう認識で、どしどしアイデアを出してください!」
井上宗則「来年、北高跡地で何をしてみたいか。質より量を重視して、たくさんのプロジェクトを考えてみてください。他の人の意見にも、それ面白いねと、どんどん乗っかっていって可能性を広げていってください」

意見交換とプロジェクトを積み上げて、
能代の未来につなげよう

それぞれが付箋にやりたいこと、無理かもしれないけれどやったら楽しそうなことなどを書き出していきます。プロジェクトのアイデアを話し合いながら、付箋を短期と中長期に分けていきます。他のグループの様子をうかがう休憩をはさんで、後半は短期プロジェクトをブラッシュアップ。プロジェクトの具体化に向けてさらに話し合っていきます。
7グループの意見は、それぞれどのようにまとまるのでしょうか・・?

◆グループA

「大きく分けて、イベント広場、飲食店、服・雑貨、宿泊施設、フリースペース、娯楽施設などの意見が出ました。短期プロジェクトで行うのはイベント広場です。夏は屋台をやり、春は花を咲かせ、冬はイルミネーション、秋はフリーマーケットを行えると思います。中期プロジェクトでできることのなかで一番多かったのは娯楽施設で、チームラボやテーマパーク、スポーツジム、水族館などが出ました。水族館は人がたくさん集まるように珍しい動物を、宿泊施設では人が集まれるように工夫して、高いところから能代を見わたせるようにと思いました」

◆グループB

「私たちB班は、まずは、オープンします。YOHWM TOWNをオープンします!5つのエリアに分かれています。短期でできるものとして、北高跡地の床を全部、芝生にします。芝生にしたら、公園のように犬と遊べたり、イルミネーションを飾ったりすることができます。長期の内容としてはエリアを5つに分けて、メインは高齢者の人たちの介護施設を建て、その近くにその人たち専用のアパートやマンションを建てて、行き来ししやすいエリアにします。そして、駐車場も設けます。そうすることで、近くに小学校もあるし、立地も高いので災害が起きた時に逃げる心配もそんなにないと思います。そこをメインにして、残りの空いたスペースで公園、バスケができるコート、合宿所、野外コンサートができるようなライブスペース。それに商業施設、娯楽施設を建てることで若い人も楽しめ、お年寄りの人も楽しめる。1つのエリアで楽しむことができる北高跡地をつくります。来年はそこに大きなクリスマスツリーと冬はイルミネーション、夏はBBQ、10月はハロウィーン。仮装パーティーを開きます。YOHWM TOWNの名前の由来は、YはYoung、OはOld、HはHappy、WはWoman、MはMensです。オープンは、再来年の今日です!皆さんぜひおこし下さい!ありがとうございました」

◆グループC

「私たちの班では、能代特有の不夜城や郷土料理をつくったりするところがあれば、たくさんの人が来るのではないかと思いました。ちょっと遠いところに行かなければいけないショッピングモールやスケート場などを能代につくればいいと思いました。来年から取り組めるプロジェクトとしては、朝市や屋台がある市場や写真を撮れるスペース、高齢者の方も利用できる娯楽施設があれば能代のいろんな世代の方が利用できると思いました。建物を建てなくてもできるキャンプスペースやドックランなどは、来年のプロジェクトですぐにできると思います」

◆グループD

「僕たちD班では、中期には幅広い世代が利用できる交流施設や、貸したりできる場所、おじさんや子どもが遊べる公園などのアイデアが出ました。中期プロジェクトでは広場やドッグ・キャットラン、バスケットコートなど。短期プロジェクトでは年中行えるキャンプ場がつくれます。長期では広いスペースを活かして、大仏を造ったり、若者が楽しめるアニメイト、サバゲーフィールド、カジノ、クラブ、コンサートなどのアイデアが出ました。短期で来年からは、グランピングや朝市などができると思いました」

◆グループE

「私たちが考えたなかで短期プロジェクトでできるものは、ドックランやキャットラン、イベント会場や屋台村などです。能代の食の体験スペースは短期でできると思います。中長期プロジェクトでできのはレジャー施設で、マリオカートやジェットコースター、観覧車、スポーツジム、遊園園、目立つランドマーク、足湯カフェなどのアイデアが出ました。マリオカートは中長期だけど、来年度から実施するためには三輪車を使ったりとかできるのかなと思います。あと、高級老人ホームをつくって平川先生を喜ばせたいです。泡のお風呂とかだったら、いつまでも若い気持ちでいれるかなって、そういうのも大事だと思います」

◆グループF

「短期プロジェクトでできるものとして、ウォーキングやイベント会場、中期でできるものとしては能代市の食材を使ったカフェや、大型アスレチックや野外スポーツ施設など子どもからお年寄りまで楽しめる公園など誰もが楽しめる施設。長期では能代市にないアウトレットや楽器店などどんな人でも商売ができる自由商売をやろうと思っています。他に娯楽施設としてラウンドワンや水族館、動物園など目立ちやすいところに建設しようと思っています。来年にできるものとしてはドックランやウォーキングコースなどいくつかのスペースに分け、カフェや公園、娯楽施設などを建てたいと思っています」

◆グループG

「気をつけ。礼。G班では中長期プロジェクトとして、ボルダリングがあるラウンドワンのような建物やプールがあるアリナスのようなスポーツ施設という意見が出ました。また、お化け屋敷や映画館など暗闇の建物もいいなと思いました。クリスマスツリーやハロウィーンモール、七夕など季節に合わせてイベントを開催します。他には観覧車やジェットコースター、コーヒーカップなど子どもや高校生などの若い人たちがよく集まって、よく遊べるような施設をつくれるように考えました。アウトドアではBBQやキャンプ場など広い空間でできるものが挙がりました。高台で景色がいいので、外で食べられるカフェスペースがあればいいなと思いました。短期では男子会とか女子会とか、同性で悩みを打ち明けられる場所をつくったり、DSのすれ違い広場みたいに友達がいっぱいつくれる場所があればいいなと思いました」

高校生ワークショップで平元美沙緒さんが描いたグラフィック・レコーディングと各グループが模造紙にまとめたアイデアは、こちらからご覧いただけます。
グラフィック・レコーディング
グループアイデア

「10年後、君たちは大人になっている」

この場所がどうなってほしいかが、どんどん見えていく
井上:皆さん、ありがとうございました。まず初めに、皆さんに約束することは、今日出た意見はすべて記録するということです。発表された内容だけでなく、皆さんに書いてもらった意見は全て記録します。もちろんYOHWM TOWNもちゃんと記録します。
このワークショップの大きな目的のひとつに、北高跡地を知ってもらうというのがあります。今日参加してくれた人の多くが、「北高跡地ってどこ?」というところからスタートしていたと思いました。ただ、今は北高跡地が少し気になる存在になったんじゃないかと思います。そして、皆さんが今日のことを友達に話して、家族にも話していくと、すごい広がりをもっていきます。多くの人にとって北高跡地がどんどん気になる存在になっていくはずです。この広がりがなぜ重要なのかというと、限られた一部の人の強い声で、北高跡地の在り方を決めたくないという思いがあるからです。能代にとって、北高跡地は大切な場所で、その場所の未来を考えることが能代を知るきっかけにもなると考えています。

今日は短時間でこんなにたくさんのアイデアが出てくるとは思っていなくて、非常に頼もしく見ていました。発表のなかで面白いなと思ったのが、ゴーカートを走らせようという「マリオカート」をきっかけにしたアイデア。「マリオカート」をすぐに実現するのは大変だから三輪車でもいいんじゃないか、というノリはとても大切です。そういった実践を北高跡地で繰り返していくことで、この場所がどうあってほしいかが見えてくると思います。こうしたプロジェクトに、能代に残る人はずっと関わってもらう、能代を離れたとしても帰って来た時にはちょっと関わってもらう。そんな関係が生まれれば、とてもうれしいです。今日は皆さん、ありがとうございました。

自分たちの居場所は、どういうところがいいか。
もっとストレートに、10年後を見つめて
小杉:皆さん、たいへんお疲れさまでした。前半には自由な発想から生まれたアイデアがいっぱい出てきていたので、うれしい反面、これらを高校生の皆さんがどうまとめるのか? と少し心配しながらワークを眺めていました。しかし、それぞれのグループが個別のアイデアを活かしながら個性的なまとめを行っていて素晴らしかった! 敷地の具体的な計画と利用方法などにも言及しつつ、「敷地に芝生を張る→そこに人が集まる」というような整備の時間の流れと人のアクティビティーについて説明されていたグループもいて、とても感心しました。また、皆さんの発表から、中高生の居場所、若い人たちが友達や恋人と気楽に一緒に過ごすような場所が、今の能代の市街地には少ないという現実があらためて浮き彫りになったように思いました。

皆さんには、北高跡地利活用のワークショップに引き続き参加してもらい、自分たちが今の街をどう思っているのか、将来暮らしたいのはどんな街なのかということを、もっともっとストレートに発言してほしい。10年後には、君たちは大人になっていて、この場所の主要な利用者のひとりとなっている可能性が大きいのですから、私たちはこういう場所が欲しいということをどんどん発言すべきです。そうした皆さんの意見をしっかりと守り、今の大人たちに伝えていきたいと考えています。このワークショップは今後も継続していく予定ですので、また積極的に参加してもらいたいし、私たちの活動にも、身近なトピックとして注目していただきたいです。
最後になりましたが、今回のWSは松陽高校の先生方のおかげで開催できました。ご協力ありがとうございました。

写真:船山 哲郎

Information

能代北高跡地利活用の可能性を探るワークショップ

■スケジュール
第1回ワークショップ:2021年10月17日(日)13:00〜16:00
第2回ワークショップ:2021年11月28日(日)13:00〜16:00
高校生ワークショップ:2021年12月9日(木)13:00〜15:00
第3回ワークショップ:2022年1月16日(日)13:00〜16:00 延期となりました

■場所
能代市役所 会議室9・10ほか

■プロジェクトメンバー
小杉栄次郎(秋田公立美術大学景観デザイン専攻)
井上宗則(秋田公立美術大学景観デザイン専攻)
船山哲郎(秋田公立美術大学景観デザイン専攻)
田村剛(NPO法人アーツセンターあきた)

■お問い合わせ
NPO法人アーツセンターあきた TEL.018-888-8137
#北高跡地利活用

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

高橋ともみ

秋田県生まれ。博物館・新聞社・制作会社等に勤務後、フリーランス。取材・編集・執筆をしながら秋田でのんびり暮らす。2016年秋田県立美術館学芸員、2018年からアーツセンターあきたで秋田公立美術大学関連の展覧会企画、編集・広報を担当。ももさだ界隈で引き取った猫と暮らしています。

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