arts center akita

Guidelines

ハラスメント防止ガイドライン

プライバシーポリシー

ハラスメント防止ガイドライン作成の経緯とプロセス

NPO法人アーツセンターあきたは、芸術・文化やまちづくりに関わる活動を通じて、誰もが持つ創造性を引き出し、地域と人をつなぐことを目指しています。この活動の基礎には、互いに尊重し、安心して自己を表現できる環境が不可欠です。これまで、秋田市文化創造館、秋田公立美術大学サテライトセンターなどの施設運営をはじめ、各種事業の遂行において、発生しうるハラスメントへの具体的な対策が十分ではありませんでした。この問題意識から、2024年8月に全職員を対象としたハラスメント研修を実施し、具体的な対策を盛り込んだガイドライン作成に向けた取り組みを開始しました。
ガイドラインは、2024年10月から2025年2月にかけて、有志職員9人が中心となって議論を重ね、たたき台を作成しました。さらに、2025年4月には全職員を対象としたワークショップを2回開催し、率直な意見交換をすることで、より実効性の高いガイドラインを目指しました。
このガイドラインは、私たちのハラスメント防止に向けた決意表明であり、継続的にアップデートしていきます。今後も定期的な見直しを行い、社会の変化に合わせて更新していきます。

ハラスメントに対する当法人の基本姿勢

NPO法人アーツセンターあきたは、誰もが持っている創造性を引き出し、地域を耕し、人と人をつなぐ活動を大切にしています。私たちは、互いを尊重し、安心して創造的な活動に打ち込める環境こそ、その基盤だと考えています。
ハラスメントは、創造的な活動を妨げるだけでなく、人の尊厳を傷つけ、関わる人々の心を閉ざしてしまう行為です。アーツセンターあきたでは、このような行為を決して容認しません。
私たちは、誰もが安心して創造性を発揮できる場をつくるため、ハラスメントの予防に努め、些細な悩みでも相談しやすい環境づくりを重視します。相談を受けた際には、決して相手の感情を軽んじることなく、真摯に耳を傾けます。万が一、ハラスメントが起きた場合には、迅速かつ適切に対応し、再発防止に努めます。
この取り組みを通じて、アーツセンターあきたに関わるすべての人(職員、施設利用者、来館者、アーティストや出演者、委託先や受託元等)が互いを尊重し、気持ちよく活動できるよう、共に学び、成長していきたいと考えています。

みんなで考えたこと[1]

「尊重」とどう向き合うか?

「互いを尊重する」という言葉は、私たちの基本姿勢の重要な部分です。しかし、「具体的に何を尊重するのか」「その前提は何か」を突き詰めると、とても難しいテーマであることが分かりました。「ハラスメントの受け取り方は人それぞれ」という事実もあり、明確な線引きが難しい「グレーゾーン」です。だからこそ、私たちは一方的に「これはOK/NG」と判断するのではなく、一人ひとりの視点や状況の違いを受け止め、相互理解をする姿勢を大切にしていきたいと考えています。

ガイドラインの目的

このガイドラインは、アーツセンターあきたに関わるすべての人が、ハラスメントのない、安心して創造的な活動に打ち込める環境を共に創り上げていくためのものです。 具体的には、以下の4つを目指します。

  1. アーツセンターあきたに関わるすべての人が、ハラスメントについて正しく理解し、防止に努める。
  2. ハラスメントを起こさないために、互いを尊重し合える環境づくりを推進する。
  3. 心理的安全性を確保し、高めるための取り組みを継続する。
  4. 社会の変化や状況に応じて、このガイドラインをより良いものに更新する。

みんなで考えたこと[2]

完璧なガイドラインではなく、「話し合いのきっかけ」として

ワークショップでは、「これは誰のためのガイドラインか?」という問いがありました。職員が安心して働くためのガイドラインを作成するのが発端でしたが、「行動規範」のように「適用範囲」を示す必要があるのではないかといった意見もありました。また、ワークショップで出た様々な意見を、あえてそのままの状態で公開してみてはというアイデアも出ました。ガイドラインは完成して終わりではなく、これからもアップデートするため、職員間の意見交換の機会を設け、コミュニケーションの活性化を促すツールとしていきます。

みんなで考えたこと[3]

「具体例」を示すことの難しさ

どのような行為がハラスメントにあたるのか、認識してもらえるよういくつかの具体例を挙げました。しかし、「例が具体的すぎると、過剰反応を招いたり、逆にこれ以外は良いと誤解されたりするのでは」という懸念もされました。また、当初は来館者が主体の例と職員が主体の例が混在していましたが、状況を整理する必要性も指摘されました。これらの議論を踏まえ、ここに示す例はあくまで一例であり、ハラスメントへの想像力を広げるための手がかりとして捉えていただきたいと考えています。

アーツセンターあきたで生じ得るハラスメント

1. セクシャルハラスメント

  1. 定義
    性的な言動(性的な関心や欲求に基づくもの、性別により差別しようとする意識、性的指向や性自認に関する偏見等)や、プライバシーに関わる質問を行い、相手に身体的もしくは精神的な苦痛を与えること。または性的な言動により相手の就業環境を害すること。
  2. 具体例
    1. 来館者が対応した職員に対して、「若い女性だから対応が丁寧だね」 などと性別を強調した発言をする。
    2. 電話をかけてきた人が、事業内容とは無関係な性的な質問を執拗に繰り返す。
    3. アーティストから、性的興味のある職員に対して、プライベートな質問を送り、業務以上の関係を迫ろうとする。
    4. 業務時間外に個人的な食事やデートに執拗に誘う。断られると、業務に影響するような発言をする。
    5. 参加した会合で「美人だね/イケメンだね」、「もう結婚はしているのか」などと質問をされる。
    6. 女性スタッフに案内してほしい、〇〇さんと話がしたいなど、特定のスタッフや性別を限定した対応を求められる。

2. パワーハラスメント

  1. 定義
    優越的な関係を背景とし、業務上必要かつ適切な範囲を超えた身体的もしくは精神的な苦痛を与えること。または労働者の就業環境を害すること。
  2. 具体例
    1. 上司が部下に対し、他の職員がいる前で「こんなこともできないのか」などと人格を否定するような発言をする。
    2. 社内SNSで、特定の職員を名指しで非難し、業務能力を貶めるような投稿をする。
    3. 職員が業務委託先に対し、契約内容に含まれない業務を強要する。
    4. イベント準備で、担当者を名指しで「お前のせいで遅れた」などと、責任を押し付けるような発言をする。
    5. 業務委託先の担当者から職員に対し、「この程度の仕事しかできないのか」などと能力を否定するような発言をされる。
    6. 責任を一方的に押し付けられ、弁明の機会も与えられない。他の職員の前で人格を否定するような言葉を浴びせられる。
    7. 外部機関から、職員に対し、通常では考えられないほど短い納期での業務遂行を一方的に要求される。
    8. 参加しているプロジェクトメンバーから、意図的に情報が提供されず、ミーティングから外される。

3. モラルハラスメント

  1. 定義
    「モラル=道徳・倫理」と「ハラスメント=嫌がらせ」が組み合わさってできた言葉。言動や態度などで相手に「精神的苦痛」を与えること。物理的な暴力ではなく、無視や暴言、威圧的な態度といった精神的な暴力で相手を追い詰めるのが特徴。
  2. 具体例
    1. 特定の職員に対し、他の職員の前で、明らかに嫌味とわかるような発言をする。
    2. 特定の職員が、上司から意図的に無視され、まるで存在していないかのように扱われる。
    3. 来館者の質問に対し、対応職員が明らかに面倒くさそうな態度で、言葉を返さない。
    4. 来館者が、職員から小馬鹿にされたような態度を取られ不快になる。

4. 不機嫌ハラスメント

  1. 定義
    不機嫌な態度や言動を通じて他人に不快感や精神的な苦痛を与える行為。また、物にあたるなどの行為。
  2. 具体例
    1. 自分の思い通りにならないと、周囲に聞こえるようなため息をついたり、物に当たったり、不快な雰囲気を周囲に撒き散らす。
    2. 不機嫌になるたびに、いつ自分が八つ当たりされるかと、常に怯えながら仕事をする為、本来の業務に集中できなくなる。
    3. 不機嫌な態度で、周囲の職員を必要以上に叱責する。
    4. 来館者は、職員から不機嫌な態度を取られる。

5. マタニティハラスメント

  1. 定義
    男女雇用機会均等法や育児・介護休業法が対象とする制度や措置の利用を阻害する「制度等の利用への嫌がらせ型」や、妊娠したこと、育児休業を取得することなどに対して嫌がらせ的な発言や行為をはたらく「状態への嫌がらせ型」がある。
  2. 具体例
    1. 妊娠を報告した職員に対し、「妊娠したなら仕事を辞めるべきだ」などと退職を促すような発言をする。
    2. 育児休業の取得を希望する職員が、「休むと他の人に迷惑がかかる」と上司から取得を妨害するような発言を受ける。
    3. 業務委託先の担当者が妊娠中の職員に対し体調を気遣うことなく無理な業務を要求する。
    4. 産休から復帰した職員が「育児中は仕事に集中できない」などと差別的な発言を受ける。

6. カスタマーハラスメント

  1. 定義
    利用者からのクレーム、言動、要求に対して、その要求を実現するための手段や対応が、一般的な労働者の就業環境の許容範囲を超えており、労働者の就業環境が害される行為。
  2. 具体例
    1. 設営職員に対しイベント参加者が、「もっと早く準備しろ」「やり方が遅い」などと怒鳴りつけ作業を妨害する。
    2. イベント参加者が受付職員に「なぜこのイベントに参加できないんだ」「お前らのミスだ」と激しく詰め寄り参加を強要しようとする。また、「担当者を出せ」「責任を取れ」など長時間にわたり要求を繰り返す。
    3. 来館者が職員に対し一方的に自身の芸術観を押し付け「この程度のレベルの展示では芸術を理解できない」「お前のような素人に芸術が分かるはずがない」などと専門性や価値観を否定する発言を繰り返す。
    4. 主催イベントで、出演者に対して観客が「返金しろ」「予約なしで入場させろ」などと理不尽な要求を繰り返す、またはパフォーマンスを侮辱するような発言を繰り返しSNSで拡散する。さらに執拗にイベント関係者に詰め寄り、大声で威圧的な言動を繰り返す。
    5. 受付、販売業務、イベント運営に支障が出るほど長時間話しかけられ、本来行うべき業務が遂行できなくなる。
    6. 職員が参加者から「地方でやるイベントはレベルが低い」など開催場所やイベント内容を否定する発言を執拗に受ける。
    7. 業務委託した業者に対し、契約内容にない業務を「従わなければ契約解除をする」などと脅迫めいた言葉で長時間にわたり強要し、不当な要求を受け入れざるをえない状況に追い込む。
    8. ワークショップ参加者が講師に対して、「お前の指導は下手だ」などと指導能力や人格を否定するような発言をする。

7. その他ハラスメント

上記のハラスメント以外にも、職場環境を悪化させる行為、個人の尊厳を傷つける行為はハラスメントに該当する可能性があります。

  1. エイジハラスメント: 年齢を理由にした差別的な発言や行為をする。
  2. パワハラの複合:複数のハラスメントを組み合わせて行う。(例:パワハラとモラハラの複合)
  3. 個人情報に関するハラスメント: 本人の許可なく個人情報を開示し、不当に利用する。
    対応の不公平:ある職員のミスは公に厳しく叱責する一方、別の職員の同様のミスは見過ごしたりする。
  4. ハラスメントを黙認する:周囲のハラスメント行為を見て見ぬふりをする、または、ハラスメントの相談を受けても適切に対応しない。相談を受けた際に「そんなことで悩んでいるの?」というような相手の感情を軽んじた発言をする。

上記はあくまで例示であり、これらに限定されるものではありません。

みんなで考えたこと[4]

多様性への配慮と、言葉の選び方

議論の過程で、当初の案には「差別解消法」などの関連法令や、多様性に関する視点が不足しているという重要な指摘がありました。また、「管理職=加害者」と短絡的に結びつけるような表現は避けるべきだという意見もあり、言葉を慎重に選ぶ必要性を再認識しました。
このガイドラインが、私たち自身が持つ無意識の偏見に気づき、どのような行為がハラスメントに該当するのかを認識する行動指針となることを目指しています。

ハラスメントを起こさないために

アーツセンターあきたは、ハラスメントを起こさないために、組織全体でハラスメント防止に取り組みます。アーツセンターあきたに関わるすべての人が、ハラスメントの加害者にも被害者にもならないよう、職員一人ひとりが高い意識を持って行動します。
そのために、まずは社内での啓発・防止活動からはじめます。

  1. 研修会・ワークショップ等の開催により啓発活動を行います。
    ハラスメントに関する研修・ワークショップを開催し、どのような言動がハラスメントに該当するのかを理解するとともに、ハラスメントを目撃した場合の対応についても学ぶ機会を定期的に設けます。また、セルフチェックを行うことで、参加者が自身の言動を振り返る機会を設けます。
    定期的な啓発活動を通じて、社内のハラスメント状況を注視し、相談窓口への相談のしやすさを向上させます。
  2. 2025年度はセルフチェックリストを用いたハラスメント防止活動に取り組みます。 
    一人ひとりが主体的に自身の言動を振り返り、改善していくことで、ハラスメントのない環境整備を進めます。アーツセンターあきた全体でハラスメントを根絶する意識を共有し、行動に移していくことを目指します。
    セルフチェックリストは、ハラスメントを受ける側の視点だけでなく、自分自身がハラスメントをする側になっていないかをチェックできる仕様とします。
    また、ハラスメントに関する相談を希望する場合に、相談窓口への連絡を促す項目も設けることで、実際にハラスメントに直面した場合に、迅速かつ適切に対応できる体制であることを周知し、安心して相談できる環境を整えます。

みんなで考えたこと[5]

「ハラスメントのない環境」を目指して

「意識を共有する」という言葉は、具体性に欠けるという指摘がありました。私たちは「ハラスメントのない環境」とはどんな状態なのかを再検討し、それを法人としてどう実現していくかを明確にする必要があります。
その一環として、職員向けの研修だけでなく、私たちの取り組みを、ウェブサイトなどを通じて外部へも発信していくことの重要性が話し合われました。私たちの姿勢を表明することが、施設利用者や関係者の皆様とのより良い関係構築につながると信じています。

みんなで考えたこと[6]

「もしも」の時のための知恵

「ガイドラインだけでなく、実際にハラスメントを受けた時にどう振る舞えば良いのか、具体的な対処方法が知りたい」という声は、特に現場のスタッフから多く寄せられました。受け流す以外の選択肢や、経験の浅い職員でも対応できるような「虎の巻」など、より実践的な知識の共有が求められています。
今後は、このガイドラインを土台として、具体的なケーススタディを学ぶ研修や、現場の経験値を共有する機会を設けていく必要があります。

ハラスメントに遭遇したら

1. 相談窓口

ハラスメントに遭遇した場合、またはハラスメントと思われる行為を目撃した場合は、一人で悩まず、ハラスメント相談窓口にご連絡ください。
相談窓口においては、必要に応じて専門機関や第三者の協力を得て、事実確認を行い、相談者の意向を尊重しながら、適切な解決に向けてサポートします。匿名での相談も可能です。相談したことが理由で不利益を被ることがないよう努めます。

  1. 職員からの相談
    担当窓口 組織開発グループ
    相談方法 専用フォームまたは電話にてご連絡ください。※相談フォームのURLは、別途職員に周知します。
  2. 外部からの相談
    https://forms.gle/Fj2qZCx8jY7EKKL88
    電話 018-888-8137

みんなで考えたこと[7]

相談の「その先」にあるもの

相談窓口を設けるだけでなく、「本当に安心して相談できるか」が重要です。議論の中では、「立場の弱い職員は黙認せざるを得ない時もあるのではないか」「相談した後のプロセスが不透明で不安」といった率直な意見が出ました。窓口を設置するだけでなく、日常の業務の中で「これって、もしかして…?」と感じたことを気軽に話せる職場環境が不可欠です。私たちは、相談者のプライバシーを守り、その後の対応プロセスを丁寧に説明することで、誰もが安心して声を上げられる組織文化を目指します。

2. ハラスメント相談に関する留意事項

ハラスメントに関する相談に対応する際には、以下の点に留意し、必要に応じて第三者の専門家に協力を仰ぎます。

  1. プライバシーの保護:相談内容および関係者のプライバシーは厳守します。
  2. 相談者の意向の尊重:どのような対応を行うか、事前に相談者に説明し、了解を得た上で進めます。
  3. 公平性・中立性:関係者からの聞き取り調査等を行う際は、公平かつ中立的な立場を保ちます。
  4. 記録の保持:相談内容、調査内容、対応内容については、記録を適切に保持します。
  5. 報復行為の禁止:ハラスメントの防止および公平な解決のため、相談者や関係者が報復を恐れることなく、安心して協力してもらえるよう、最大限の配慮をします。

3. ハラスメント認定後の処置・再発防止

ハラスメントが事実であると認定された場合、職場におけるハラスメントの防止に関する規程ならびに就業規則等に基づき、厳正な処分と抑止のための措置や改善策を行います。
また再発防止のため、以下に取り組みます。

  1. 加害者への指導・研修: ハラスメントに関する知識や意識の向上を目的とした指導・研修を実施します。
  2. 組織文化の改善:互いを尊重しコミュニケーションが円滑に行われる組織文化を作ることを目指します。
  3. 継続的な啓発活動:定期的な研修や、加害者・被害者にならないための情報提供を通じて、ハラスメント防止活動を促進します。
  4. 相談しやすい環境づくり: 相談窓口の周知、相談しやすい雰囲気づくりに努めます。

2025年9月1日制定