arts center akita

  • facebook
  • twitter
  • youtube
  • アートを楽しむ

多様な媒体を軽やかに行き来する
森香織染色展「before, after」

2019.01.30

染色家・森香織の約10年の変遷をたどる染色展「before, after」が秋田市大町の秋田市立赤れんが郷土館で開かれています。秋田公立美術大学と赤れんが郷土館の連携企画「秋田アーツ&クラフツ」の一環。2月27日まで。

森香織染色展「before, after」

染色家・森香織の約10年の変遷をたどる染色展「before, after」が秋田市大町の秋田市立赤れんが郷土館で開かれています。秋田公立美術大学と赤れんが郷土館の連携企画「秋田アーツ&クラフツ」の一環。前期はものづくりデザイン専攻助教である森の染色展、後期は同専攻に所属する木工・漆工・彫金・染色・陶磁・ガラス・プロダクトデザインを専門とする教員・助手13人による展覧会「湧水地点」を開催します。

秋田市立赤れんが郷土館 2階企画展示室

初日に行われたギャラリーツアーには、同専攻の学生や教員、一般の来館者が参加。森の秋田への赴任を転換点として、「before」と「after」で構成した作品28点が並ぶ会場を森自身の解説で巡りました。

森は2010年、秋田公立美術工芸短期大学に赴任。2013年から秋田公立美術大学ものづくりデザイン専攻助教。本友禅染を中心に型染・絞り染の技法を用いて、アパレルブランドや他工芸作家とのコラボレーション、インスタレーション、ワークショップなどジャンルを超えた幅広い表現活動を行なっています。

本友禅の「糸目を引く」行為とは

専門とするのは、染色のなかでも布地に模様を手描きして染め上げる本友禅。防染用の糊で生地に均一な細さで引く輪郭線を「糸目」といい、染色後には柄の輪郭が白い線として生地に残るのが特徴です。森はこの「糸目を引く」ことそのものに興味を抱き、これまで「線の詰まった作品を作ることが多かった」といいます。

「糸目を引く作業にはものすごく時間がかかって、時間をかけること自体が私のなかでは魅力の一つだった。ネガティブ思考なのだけれど、線を引いている間だけは余計なことを考えなくて済む。線がたくさんあったほうが、何も考えない時間を長く保てるんです」

そう話す森にとって、糸目を引く行為はアイデンティティーを保つことでもありました。

「私自身が人と違ってうまくできることって、友禅染めぐらいしかなくて。こんなに面倒で大変な作業は他の人はしないだろうから、自分の存在意義が確立できるのではないかと信じていた」

自己表現を探り続けた「before」

耳を傾ける学生たちに語りかけるように解説する森は、「染色がとても好きで始めたわけではなく、今でもそんなに好きではないかもしれない」と打ち明けます。

「それでも、自分にはこれしかないんだと思って制作してきたんですよね、ずっと」

秋田に赴任する以前、つまり「before」の作品は色数が少ない。白い顔料にさらに白い糸目が繊細に引かれた様子を見つめていると、視線が生地のなかに吸い込まれていく。

≪箱舟≫ 2001年

「自分の行為が表面に出ないように、できるだけ自分の存在を押し出さない表現の仕方がしっくりきて、白い顔料と糸目を組み合わせた作品を作るようになった。ただ、興味を持って見てくれる人には少し自分を見せてみたい自己顕示欲のようなものもあって。糸目にカタカタで文字を入れてみたりして」

≪コドモの時間 ー空に映すー ≫ 2003年 抽象と具象の間を目指して作っていた頃。叩き糊の技法で制作

白と黒の大胆な曲線が糸目とともに宙に漂う≪漂うことの意味≫2003年(左)は、「糸目にこだわりながらも糸目から解放された作品」という。 ≪ボクタチハハナシアワナケレバナラナイ≫2011年(右)

≪廻り往くものまた廻り来る≫ 2004年