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素材と向き合い、手を動かし、空間にたたずむ2日間 「みあげて ごらん そこにいるよ」

【こどもアートLab2021レポート⑤】
2021年度のこどもアートLab第3回目は、美術家・藤浩志によるプロジェクト「みあげて ごらん そこにいるよ」。秋田市文化創造館の大空間を会場に、2日間にわたって素材と向き合い、手を動かし、感覚を動かして遊びました。

天井の高い大空間で過ごす自由時間。
大切なのは、手を動かすこと、感覚を動かすこと

秋田公立美術大学が主催する「こどもアートLab」は、こどもたちの自由な発想を引き出す創造のプラットフォームとして2019年度から開催しています。教員や卒業生、秋田県内外で面白い活動をしている人をLabリーダーに迎え、幅広い内容で活動中です。

2021年度のこどもアートLab第3回目は、美術家で秋田市文化創造館館長でもある藤浩志(秋田公立美術大学教授)によるプロジェクト「みあげて ごらん そこにいるよ」。舞台となるのは、秋田市文化創造館2階のA1ホールです。この天井の高い大きな空間を会場にして、①素材と向き合う ②とにかく極める ③空間のマネジメント ④空間にたたずむ この①〜④に2日間にわたって取り組みます。

https://youtu.be/_v_Nnz1dlMM
(撮影・編集:坂口聖英)
プロジェクト「みあげて ごらん そこにいるよ」は秋田市文化創造館2階A1ホールの大空間が舞台

何をするかは、自由である

Labリーダーの藤さんは、ここで子どもたちと何をするのでしょうか。通常のこどもアートLabより学年を少し高めに設定して小学5年〜中学生を募集したところ、6人の子どもたちが参加。秋田公立美術大学の学生やアーツセンターあきたのスタッフも混じって、12月11日(土)、第1日目が始まりました。子どもたちは大きなバッグや袋にいろいろな素材を入れて持ってきたようです。

Labリーダーの藤さんが最初にホワイトボードに大きく書いた言葉は、「感覚」。「手を動かす」、そして「感覚を動かす」。今回のプロジェクトで決まっているのは、「何をするかは自由である」こと。そして2日目の12月12日(日)14:00から「みあげて ごらん そこにいるよ」の展覧会を開くことの2つです。それに向けて素材と向き合い、手を動かして何かをつくったり吊るしたりして、この空間でどう過ごすかを考えます。これらをするために大切なのが「感覚」というわけです。

「手を動かすこと、感覚を動かすこと」と語るLabリーダーの藤浩志さん。「終了の15:00まで自由につくって、15:00以降は自由時間。あ、全て自由時間ってことだね」
1日目に重視したのが、自分で向き合いたい素材をあれこれといじったあとに大学生やスタッフなど他の人とお話をすることでした。技術と情報の交換です
どんなことをしたいのか、どんなアイデアをかたちにしようとしているのか…
自分のアイデアを他の人に伝えたり教えてもらったりするなかで、自分のアイデアが大きくふくらみ始めます

素材の可能性を最大限に活かして、
「別のものに変化する瞬間」に出会う

「この空間やみんなが持ってきた材料と向き合って、素材をいじりながら、遊びながら、この状況から教えてもらっていくうちに、結果として何かができてしまうというのがポイントです」と藤さん。それぞれが持ってきた素材の可能性を最大限に活かして、切ったり、貼ったり、たたいてみたり、投げてみたり。素材の特徴を理解して向き合っていくと、「やがて別のものに変化する瞬間がある」と藤さんは話します。

ペットボトルを材料にするようですね
色紙を並べて貼っているようです
つくったものを高さ11メートルの吊り下げポールに吊り下げ、大空間を楽しむことに
Labリーダーの藤さんは枝を用意したようです

切ったり貼ったり、たたいたり彫ったり、くっつけたり描いたりを夢中で続けていくと、いつの間にか乗ってきて、心地よく感じることがあります。
「そうやって素材と向き合い手を動かすなかで、その状態が変化する瞬間に出会えるかどうかがすごく大切です。その結果、予期しなかったものが生まれたり、立ち現れたりすることがある。何かをやっていくその先に、イメージが広がっていく。そういう体験の入り口として、何かをどんどんやっていければいいのかなと思います」

素材と向き合い、素材と遊んで、何かを生み出す空間にたたずむ。プロジェクト「みあげて ごらん そこにいるよ」は、そんな2日間を楽しみます。

見上げると、「在り方」が変わる

「見上げてみたときの見え方は、机の上にあるときとはまた違います。さらに、天井から光が入るとまた違って見えるかもしれない。見上げるときにどんな状態が面白いかを考えながらつくってみよう」と藤さん。

手元にあるときと、遠目に見たときとではその「在り方」が変わるといいます。つくることに夢中になるだけでなく、その方向性を考えていきます。

展覧会「みあげて ごらん そこにいるよ」、オープン!

いよいよ2日目は、吊り下げポールに吊り下げたり、ちょっと遠くから眺めてみたり。14:00の展覧会オープン時には、見にきてくれた家族の前でテープカットをしました。
この空間で何をするのか?と思ったら…学生やスタッフが入り混じって鬼ごっこ、そしてだるまさんがころんだとイスとりゲーム! 素材から「在り方」を変えたものたちの空間で、走り回る子どもたちの姿がありました。

子どもたちからは、「ひとりではできなくて、他の人からアイデアを聞いてつくった」「一緒につくるのが楽しかった」「楽しい空間になった」「紐の長さが難しかった」「いろいろな人に出会えた」「大きい空間でできるのはあまりないからうれしかった」といったお話がありました。
一方、保護者の方々からは、「2日間一緒に過ごすことで大学生やスタッフの方と仲良くなれて楽しかったようです」「見る角度を変えることで、作品ひとつひとつが違う表情になって面白かった」「学校も年齢も違う人たちとの関わりでたくさんの学びがあったと思う」「ゆるく遊ぶときは遊ぶ、集中してつくるときはつくる。それをぜいたくな空間で、プロの方々がそれとなくまとめ上げてくださり、とてもよかったです!」「ものをつくったり、他の人と一緒につくることで子どもがとても楽しんでいました。ありがとうございました」というご感想をいただきました。

素材と向き合い、手を動かし、空間にたたずんだ2日間。楽しかったね!

テープカットをして、展覧会オープン!
展覧会「みあげて ごらん そこにいるよ」
ひとりひとり、大空間をつくり上げた感想を発表
自分たちの大空間でスタッフと一緒にだるまさんがころんだ!
真ん中にイスを置いてイスとりゲームも!
文化創造館A1ホールの白壁にぼんやりと影が浮き上がりました
秋田公立美術大学の学生やスタッフと一緒に記念撮影

Profile

藤 浩志

捨てられるおもちゃの交換システム「かえっこ」プロジェクトをはじめ、面白い部活動や「部室をつくる」活動など、ちょっと変わったデモンストレーションを世界各地で試みる。 https://www.fujistudio.co

Information

第3回「みあげて ごらん そこにいるよ」

ワークショップは終了しました
プレスリリース 
Labリーダーは、美術家で秋田市文化創造館館長でもある藤浩志(秋田公立美術大学教授)。プロジェクト「みあげて ごらん そこにいるよ」は、秋田市文化創造館の大空間を会場に ①素材に向き合う ②とにかく極める ③空間のマネジメント ④空間にたたずむ を2日間にわたって開催します。2階A1ホールに作品を展示して、12日14:00〜15:30一般公開します。
●日  時:
2021年
12月11日(土)13:00〜15:00 ①素材に向き合う
        15:00〜17:00 自由時間
12月12日(日)10:00〜12:00 ②とにかく極める
         13:00〜14:00 ③空間のマネジメント
        14:00〜15:30 ④空間にたたずむ
●定  員:20名(先着順)
●対  象:小学校5年生〜中学生
●参  加  費:1,500円
●開催場所:秋田市文化創造館(秋田市千秋明徳町3-16)2階A1ホール
※MGS「みあげて ごらん そこにいるよ」プロジェクトは一般公開します(12月12日14:00〜15:30入場無料)

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

高橋ともみ

秋田県生まれ。博物館・新聞社・制作会社等に勤務後、フリーランス。取材・編集・執筆をしながら秋田でのんびり暮らす。2016年秋田県立美術館学芸員、2018年からアーツセンターあきたで秋田公立美術大学関連の展覧会企画、編集・広報を担当。ももさだ界隈で引き取った猫と暮らしています。

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