BIYONG POINTで「触覚の地平」
秋田公立美術大学は、展覧会「触覚の地平」を秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT(秋田市八橋南)において、3月9日(土)より開催します。
ものづくりデザイン専攻の助手を務める井本真紀によるガラス作品と、井本自身が書き記す言葉によって構成する展覧会です。
「私につくるべき何があるのかと考えてみても、特に何もないのだった」と語る井本。作品制作において、強い衝動や意図を持たず、淡々と素材と自身の身体と向き合う中で生み出される井本の作品について、本学の瀬沼准教授は、「それが何か、もしくはそこに何が表現されているかということよりも、純粋に物質の存在感というべき印象の方が強いことに気がつくだろう」と評します。
3月15日(金)には、本学の石倉敏明准教授をゲストに迎えてギャラリートークを開催し、井本真紀の作家性に迫ります。
企画趣旨
工芸という言葉が明治期に日本語として誕生し、150年ほど経った。その間、この言葉はあらゆる工芸の当事者たちにとっても、それを愛でる人々にとっても、様々な解釈をされ、工芸の定義は未だ曖昧なままである。
ただ、工芸のある一側面として、素材とどう関わるのかというテーマは様々な工芸作家によって思案され、提示されてきた。素材を扱う制作者にとって、その素材の物理的・化学的限界とどう付き合うのかというのはしばしば重要な問題になる。その限界を超えていくという方向性も一つの制作モチベーションにはなり得るが、また一方で素材の物理的・化学的特徴を深く理解していこうとする謙虚な姿勢とそれを探求する過程において、造形に対するアイディアが浮かぶこともある。俗にいう「素材の声をきく」「手で考える」といった日本語独特の表現はこのような制作姿勢から生まれてきたのだと思われる。
そこには、何か表現したい事象や対象を造形するといった「ゴール」がない。作家の目的は素材との対話の中にあるもので、出来上がった作品は過程の結果である。井本の作品を鑑賞するとき、それが何か、もしくはそこに何が表現されているかということよりも、純粋に物質の存在感というべき印象の方が強いことに気がつくだろう。
井本の作品制作は素材と身体の関わりから紡ぎだされ、その過程は必然的に作品のテクスチャーや印象となって立ち上がっている。
本展覧会は、井本の作品とともに、作家の制作プロセスや作家が自ら書き記した言葉などを展示することにより、立体的に井本真紀の内なる工芸的なるものに迫ろうという試みである。
瀬沼 健太郎(秋田公立美術大学准教授)
Information
「触覚の地平」
会 期:2019年3月9日(土)~5月12日(日)9:00~18:00
会 場:秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT
(秋田市八橋南一丁目1-3 CNA秋田ケーブルテレビ内)
主 催:秋田公立美術大学、NPO法人アーツセンターあきた
企画・構成協力:瀬沼 健太郎(秋田公立美術大学准教授)
チラシデザイン:コマド意匠設計室
協力:CNA秋田ケーブルテレビ
関連企画
ギャラリートーク「流動するこころともの~制作の現場から」
説日 時:2019年3月15日(金)18:00~20:00
会 場:秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT
(秋田市八橋南一丁目1-3 CNA秋田ケーブルテレビ内)
登壇者:井本真紀(秋田公立美術大学ものづくりデザイン専攻助手)、石倉敏明(秋田公立美術大学准教授/芸術人類学、神話学)
(2019.2.15プレスリリース)