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余りもの・残りものにも福がある!? 市民協働ミーティング レポート

個人・団体・企業など枠組みの制限なく、地域活動の担い手が知り合い、新たな協働を生み出すきっかけの場として秋田市が主催する「市民協働ミーティング」が、1月13日(土)、あきた芸術劇場「ミルハス」で開催されました。今年度は秋田市より委託を受け、アーツセンターあきたが企画運営し、実施。会場は定員40人でいっぱいとなり、活発な議論が行われました。当日の様子をレポートします。

余りもの・残りものにも福がある
身の回りの課題を「資源」に

2023年度の市民協働ミーティングのテーマは「地域課題・地域資源×ビジネス〜地域で持続可能な市民活動を考える〜」です。身の回りの問題や課題となっている「余りもの・残りもの」を「資源」として活かしている事例を紹介したほか、パネルディスカッションや、価値転換を一緒に考えるグループワークを通してお互いの考え方をシェアし、交流を深めました。

「資源」活かしたビジネスを紹介
ゲストスピーカーがトーク

第1部ではゲストスピーカー3人が地域で余っている・残っている「資源」を活かしたビジネスや取り組みについて、事例紹介やパネルディスカッションを通して発表しました。

ひなたエキス(株式会社hinata)の須﨑裕さんが、現在、秋田県内の4店舗とキッチンカーで営業していると語り、「ひなたエキスのことを知っている人はどのくらいいますか?」と問いかけると、会場の8割くらいの方が手を挙げました。
ひなたエキスの商品は「規格外の野菜や果実」を使用し、4店舗のうち3店舗は「空き店舗」を利用している、まさに地域資源を活用したビジネスであると紹介。数多くある空き店舗の中で、現在営業している店舗を選んだ理由や商品のコンセプトなどが語られ、ひなたエキスのミッション「自然と繋がる喜びを共有する」をお客さまにそのまま押し付けるのではなく、受け取りやすいスムージーという形にして共有していると締め括りました。

第1部終了後の休憩中にはトークで紹介されていた「余計なものを入れず、秋田県産の食材をたくさん入れて美味しくする」というコンセプトのもと作られたひなたエキスの商品「ホットアップルジンジャー」を参加者に振る舞いました。

秋田市産の食材を用いたホットアップルジンジャーが振る舞われた

続いては、株式会社kedamaの武田昌大さんです。
秋田の美味しい米を販売する手法として立ち上げた若手米農家集団「トラ男」や実際にお米を食べてもらうために東京で運営している店舗「ANDON」、古民家を村に見立て、みんなで支える仕組み「シェアビレッジ(※)」など、既存の形にこだわらず、新たな発想から生まれた事業について紹介。関わっている事業では造語や面白い表現が多く、ネーミング、ルール、デザインなどで世界観を作っていくことが地域ビジネスにおいて非常に大事だと話しました。

(※)現在はシェアビレッジ株式会社が運営しています。

最後はNPO法人あき活Lab、株式会社OICの三澤雄太さんです。
三澤さんは空き家相談をはじめとして、民泊や古道具屋などの事業を展開しています。イベント会場や地域の茶の間として空き家を活用することを思い立ち、大館市地域おこし協力隊時代に「としょ木漏れ日」をオープン。このスペースの運営費をまかなう取り組みとして、現在は空いている部屋を民泊として活用もしています。空き家相談は継続的なフォローアップが必要であり、出口が見えるまでに1年以上かかる場合もあることから、民間事業者として空き家相談を行うことの重要性を語りました。

取り組みのコツ学ぶ
パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、ゲストスピーカー3人にファシリテーターの岩根裕子(NPO法人アーツセンターあきた)を交え、先のトークを踏まえて、「地域資源活用に対して日常的に意識していること」「秋田での起業・県外への発信」「チームづくりのコツ」などについて、話を広げました。
会場からは、「大変だったことや苦労したこと」についての質問があり、ゲストからは事例紹介の中では触れられなかった裏側の話が語られました。

身近な余りもの・残りもの どうする?
グループワーク

後半の第2部では、実際に自分の身の周りの「余りもの・残りもの」についてグループで活用法を話し合いながら交流を深めました。参加者は7つのグループに分かれ、身の回りの余りものや残りもの(地域資源・地域課題)についてどういうものがあるか挙げ、その中からテーマに絞り、アイデアを出し合いました。ゲストが各テーブルを回り、事業化の新たな視点やアドバイスを提供することで新しいアイデアが生まれる場面もありました。

グループワークは以下の流れで行いました。

①自己紹介シートを用いて自己紹介
②グループで活用アイデアを考える余りもの・残りものを1〜2つ決める
③余りもの・残りものについて、それはどういうものでどこにあるのかなど、詳細の情報をヒアリングする
④余りもの・残りものを活かす方法を考える
⑤全体で各グループのアイデアを共有する

ゲストがテーブルを回り、さまざまなアドバイスを行った
余りもの・残りもの活用をテーマに白熱した議論

各チームのアイデアと余りもの・残りもの

・親子で挑む柿栗クエスト(放置柿・栗)
・稼がなくても暮らせる秋田(端材、木材・くず野菜)
・ご近所食堂(高齢者の力、時間・知恵・技術)
・おくすりパーティ(使用しない薬や和服)
・AKITA KARAイベント実施中(人のエネルギー)
・使い終わった農業用黒マルチの活用
・古いお重と子供服などの衣類の活用

それぞれのチームから生まれたアイデアを全体に共有、最後にゲストがコメントし、今年度の市民協働ミーティングは終了しました。

終了後も会場では名刺交換や談笑する姿があちこちで見られました

■ゲストスピーカー

株式会社hinata

須﨑裕

ひなたエキス代表。地場産と無添加にこだわり、規格外のしいたけやいちごなどを利用した商品開発と販売を行う。田沢湖近くにある本店、加工所を併設した秋田店に加え、キッチンカーで様々なイベントへの出店販売も行っている。


株式会社kedama

武田昌大

秋田の農業の未来に危機感を持ち結成した、若手米農家集団「トラ男(トラクターに乗る男前たちの略称)」や、築134年の茅葺き古民家を活用した「シェアビレッジ」、秋田の食材を使った飲食店「ANDON」を東京で2店舗経営など、北秋田市を起点に多数の新ビジネスを展開している。


NPO法人あき活Lab、株式会社OIC

三澤雄太

元大館市地域おこし協力隊。法律から遺品整理に至るまで各分野の専門家を集めたNPO法人あき活Labを設立。片付けられない家財を、そのままの状態で物件を見ながら当事者間で相談し、家財整理の課題を解決する「そのまま活用」の取組などユニークな手法で空き家問題の課題解決に取り組む。

■ファシリテーター

秋田市文化創造館
チーフ

岩根裕子 Yuko Iwane

大阪府生まれ。関西を拠点に地域活動のコーディネーションや防災教育プログラムの企画・普及の仕事に従事。2018年よりNPO法人アーツセンターあきたにて、プログラムの企画・運営、レジデンスプログラムや展覧会のコーディネーターを担当。2021年から指定管理運営をする秋田市文化創造館の事業チームとして勤務。

Information

令和5年度市民協働ミーティング「地域資源・地域課題×ビジネス〜地域で持続可能な市民活動を考える〜」

秋田市市民協働ミーティングについて(秋田市)

■日時:2024年1月13日(土)13時30分〜16時30分 
■会場:あきた芸術劇場「ミルハス」4階 小ホールA(秋田市千秋明徳町2-52)
■対象:地域での活動に関心があり、他団体とのつながりを得たいと思っている個人・団体および企業の方
■参加費:無料
■定員:40人
■主催:秋田市中央市民サービスセンター
■運営・お問合せ:NPO法人アーツセンターあきた
TEL:018-888-8137
E-mail:program@artscenter-akita.jp

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

武藤沙智子

秋田県生まれ。大学卒業後、航空会社系旅行会社で営業・企画・販売推進などの業務に従事。47都道府県を巡る旅好き。
奈良、宮城、大阪、千葉、埼玉と移り住み、2019年に秋田市の地域おこし協力隊 移住定住コーディネーターへの応募をきっかけに帰秋。退任後は民間企業を経て、2022年から現職。あきた発酵伝道師一期生。現在は発酵食品、伝統食、伝統工芸に興味を持っています。

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