現状に抗う〈肉体〉と〈精神〉を描く、死闘のアニメーション
前川原綾香(ビジュアルアーツ専攻卒業)のアニメーションは、油絵の具を使って描き、絵の具の変化をもとに動きを生み出す手法を用いて制作されています。
アニメーションとしてだけでなく、インスタレーションとして提示する前川原の作品は、苦しい現状に<抗う>こと、この環境から脱出することに主題があります。卒業制作の《TARZAN BOMB》では、閉じ込められた状況にもがくターザンのアニメーションをビニールハウスの中という密室空間にて上映しました。
また、コロナ禍において制作した《対面クラブ》では、アクリル板によって隔てられた卓球台を中央に配置。それを挟み込むように2つのスクリーンを対面させ、自分自身とまったく同じ姿をした人物が存在する幻覚〈ドッペルゲンガー〉をテーマとし、自己破壊とその終末に至る死闘を描きました。
〈痕跡〉を残さずに生きること
前川原が幼少の頃から習性としているのが、<痕跡>を残さずに生きること。自分の過去を自分で排除すること。
自分が存在した<痕跡>を残さず、消除して生きることへの憧れと諦念はアニメーションの制作スタイルにも表れ、油絵の具を使用して同一の画面上に描いては消し去る行為を繰り返します。画面を更新し続け、原画/原型を残さずにアニメーションをつくる技法は、「自分の習性を表そうとしているのと同時に、完全に無に帰すことの不可能さを痛感をする結果をもたらす」といいます。
アニメーションで闘うこと
本展では、油画をもとに制作を始めた大学3年時の作品や卒業制作、Human vs. Alienを描いた新作アニメーションなど6作品を上映・展示します。ダイナミックな躍動とうねり、哲学的な思考の展開。それは、メタモルフォーゼを繰り返しながら現実に抗う、前川原綾香、死闘のアニメーションです。
アーティストトーク「アニメーションで闘うこと」
展覧会期間中の11月16日(土)には、作家によるトークイベント「アニメーションで闘うこと」を開催します。前川原が描く〈肉体〉と〈精神〉とは、アニメーションで闘うこととはなど、制作スタイルや各アニメーション作品などについて語ります。
日時:11月16日(土)18:00〜
会場:秋田公立美術大学サテライトセンター
参加無料、申し込み不要。直接会場にお越しください。
作家プロフィール
前川原 綾香 Maekawara Ayaka
1997年青森県十和田市生まれ。2020年秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻卒業。<痕跡を残さずに>生きることへの憧れと諦念から、油絵の具を使用して同一の画面上に描いては消してを繰り返すアニメーションを制作する。2020年「SHOWREEL-境界を往き来するメディアアート-」出展。
Information
秋田公立美術大学卒業生シリーズVol.13
「Human vs. Alien ー前川原綾香、アニメーションの死闘ー」
「Human vs. Alien ー前川原綾香、アニメーションの死闘ー」(PDF)
■会期|2024年11月10日(日)〜12月8日(日)10:00〜18:50
会期中無休、入場無料
■会場|秋田公立美術大学サテライトセンター(秋田市中通2丁目8-1 フォンテAKITA6F)
■主催|公立大学法人秋田公立美術大学
■企画制作|NPO法人アーツセンターあきた
■関連イベント|アーティストトーク「アニメーションで闘うこと」
2024年11月16日(土)18:00〜 直接会場にお越しください
■お問い合わせ|
秋田公立美術大学サテライトセンター(NPO法人アーツセンターあきた)
TEL.018-893-6128 E-mail info@artscenter-akita.jp