学生による映像表現の軌跡を映し出す
映像作品展「Now Showing」では、「領域横断」「複合芸術」を教育方針とする秋田公立美術大学と大学院で培われてきた映像表現の「現在(いま)」に焦点を当てます。大学が収蔵する映像作品に加え、卒業生から借用した卒業制作や課題成果展における映像作品で構成。ドキュメンタリー、記録映像、アニメーションなど多岐にわたる作品を通じて、映像表現の軌跡を映し出します。

《霧ト》は、コミュニケーションデザイン専攻を2025年に卒業した吉田留美夏の卒業制作。和紙と鉛筆によるアナログ技法で制作することで、デジタルでは表現しにくい質感や線の動き、美しさと不安感の演出にこだわった実験的な作品です。
見たくないものに出会い、探し
求めしものは隠れゆく。
霧とは、そうした存在である。『秋田公立美術大学卒業・修了展 2025 作品集』より

ストップモーション・アニメーションを駆使した《ほどける声》は、景観デザイン専攻を2022年に卒業した徳川美稲の作品。能代市にある祖父母の家を舞台に、なくなりゆく家との対話をテーマに撮影・編集した卒業制作です。
この映像作品は能代市にある祖父母の家を舞台にして、なくなりゆく家との対話をテーマにした作品である。
家自体に手を加えながら撮影することで、家の構造を直接確認し、今まで知らなかった家の姿を見て、作る過程でも家との対話を実感した。
この作品を通して、家を家として定義させるのは人の存在であるということを伝えたい。『秋田公立美術大学卒業・修了展 2022 作品集』より

《後悔を抱きしめる》は、2021年にアーツ&ルーツ専攻を卒業した岡﨑未樹の卒業制作。「生と死」を主題に他者との対話を重ね、事実に基づいたフィクションとして映像と小説による作品を完成させました。
幼馴染の山本ヒノキは「後悔」を抱いていた。それは、彼女の祖父黒田ユタカが2017年に亡くなったことに起因する。病気や、様々な要因により、祖父の意思がわからないままであったことを彼女は気に病んでいた。
ヒノキの「後悔」を少しでも昇華させたいと思い、私は彼女の家族、黒田ユタカの病気、そして彼女自身の想いを傾聴し、知ることで、不在の人物黒田ユタカの意思を探し想像することにした。『秋田公立美術大学卒業・修了展 2021 作品集』より



本展では、20作品を上映予定。それぞれの映像から、どんな「現在」が見えてくるのでしょうか。学生の眼差しから生まれた映像表現の多様性と可能性に迫ります。
<上映作品>
勝谷俊樹《つくられるひと、みえないまち》(2017年度)、青谷遥香《レジスタンス》(2018年度)、齋藤大一《川反の訪人》(2019年度)、小山広和《Life Hacker》(2019年度)、求源《妖怪テレビ》(2019年度大学院)、岡﨑未樹《後悔を抱きしめる》(2020年度)、徳川美稲《ほどける声》(2021年度)、白田佐輔《母川回帰》(2022年度)、吉田留美夏《霧ト》(2024年度)ほか
Information
秋田公立美術大学映像作品展「Now Showing」
■会期:2025年12月17日(水)〜12月28日(日)
11:00〜19:00(最終日は17:00まで)入場無料
■休館日:12月22日(月)、23日(火)
■会場:ココラボラトリー(秋田市大町3丁目1-12 川反中央ビル1F)
■主催:秋田公立美術大学
■企画制作:NPO法人アーツセンターあきた
■協力:ココラボラトリー
■ココラボラトリー連携企画「ゴトーBAR -映像を語ろう-」
2025年12月19日(金)19:30〜
■お問い合わせ|
NPO法人アーツセンターあきた TEL.018-888-8137 E-mail program@artscenter-akita.jp