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審査員による講評

秋田市文化創造交流館(仮称)のプレ事業の一環として開催したSPACE LABO。どういう尺度で、まちの各所で展開されたラボ・フェローの挑戦を評価していくのかについて、白熱した議論が交わされました。

 すでにあるものを真似して作るのであれば迷いはないし不安もない。しかし、誰も挑戦したことのない独自な活動を始め、そして続けるには強い意志と柔軟な態度が必要となる。社会の対応はそれらに対して冷たく厳しいからだ。だからこそ経験を重ね、強度と深度を身に付けたい。今回挑戦した多くの実践に敬意を表したい。展示のための空間ではないし、誰にでもオープンな場なので難しい環境だと思う。だから面白い。まちにありそうでありえない異質なものを見つけた時、まちと体験者の間になんらかの揺さぶりや摩擦が発生する。その重なりがまちの魅力に繋がるのだと思う。

 今回の公募で秋田に生まれ育ち、あるいは他の地域に暮らしながらも、秋田での活動を願っている人が多いことが分かった。それはとても心強く、大きな可能性に繋がる。まちはもっと新しい経験を重ねて欲しい。そして多くの人の実践の場として信頼できるところでなければならない。

Profile

藤 浩志
美術家。奄美大島出身の両親の影響で大島紬周辺で遊ぶ。京都市立芸術大学在学中演劇活動に没頭した後、地域をフィールドとした表現活動を志し、全国各地の現場でプロジェクト型の表現を模索。同大学院修了後パプアニューギニア国立芸術学校に勤務し原初的表現と社会学に出会い、バブル崩壊期の再開発業者・都市計画事務所勤務を経て土地と都市を学ぶ。「地域資源・適性技術・協力関係」を活用したデモンストレーション型の美術表現により「対話と地域実験」を実践。

 ラボ・フェローの皆さんは、秋田をフィールドワークし、そこから得た言語を超えた感覚を、インスタレーション、映像、絵、様々な媒体を用いて、見事に表現してくれました。その中でも、スペースの特性や雰囲気などをよく考え、うまく活用し、自身の作品と滑らかに接続させていたのが植村宏木さんの『もの考―秋田―』(審査員特別賞)でした。レジデンス賞を受賞した虻川彩花さんの作品は、商業スペースで個人ブティックをテーマにするということ自体挑戦的で、色々と紆余曲折があったようですが、それをアートとしてしっかり昇華していたと思います。同じくレジデンス賞を受賞した居村浩平さんの作品は、真似された側が、自身の身体感覚を再認識するという事柄に果敢に挑んだ作品となっていました。

 惜しくも受賞を逃した他の作品も、どれも挑戦的かつ遊び心のあるものでした。制作あるいは完成した作品を通じて生まれた様々な「つながり」を、単なる偶然として捨て置くのではなく「縁」として捉え、今後その構造を深く思考するきっかけにしていただければと思います。

Profile

唐澤 太輔
南方熊楠研究、秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科准教授。1978年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期過程修了。博士(学術)。早稲田大学社会科学総合学術院に助手、助教として勤務した後、龍谷大学世界仏教文化研究センター博士研究員を経て現職。専門は哲学/文化人類学。特に、人類が築き上げてきた民俗・宗教・文化の根源的な「在り方」の探求を知の巨人・南方熊楠(1867〜1941年)の思想を通じて行なっている。近年は、熊楠とアート的思考の比較考察、及び華厳思想の現代的可能性についても研究を進めている。

 今回展示された7作品を見て、どれもまだ「余白」のようなものがあるのを感じました。展示としての詰めの甘さや、コンセプトがまだ定まっていないもの、単純に運動量が足りていない部分もあったと思いますが、むしろ新しいものの見方を創出する上ではこの「余白」こそがキーポイントにもなり得るのではとも思います。今回の応募要項には“クリエイトスタジオでの新しい挑戦”と書かれていました。文字で書くとどこでも見かけるような文言かもしれませんが、「クリエイティブ=創造的である=新しいものを初めてつくりだす様」であることを、作り手も我々も忘れてはいけません。どこかで見たことのあるようなものを作ることや、誰かと同じような道筋を辿ることとは全く意味が違い、そこには誰も気がついていない無駄なことや底知れない勇気が必要になるかもしれません。そういった新しい挑戦になり得るかどうかという視点で今回は評価をさせて頂きました。集う人々は熱く、場は常にハードボイルドに。そんな秋田が見られることを期待しています。

Profile

柚木 恵介
アーティスト。1978年鹿児島生まれ。東京芸術大学デザイン科講師の傍ら、造形作家として活動を続けている。近々の活動は以下の通り。2016年/KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭出品(宮城県)。2014年/表現のチカラ 東京藝大セレクション展ディレクション(香川県高松市)。2014年/日本橋三越夏の芸術祭 ワークショップディレクション(東京)。2014年/小豆島アーティストインレジデンスディレクター(香川県小豆島)。2013年/瀬戸内国際芸術祭出品(香川県小豆島)

 秋田市文化創造交流館は「市民の創造性をサポートする」がひとつのミッションとなるため、プレ事業として実施される「SPACE LABO」の応募者もいわゆる作家だけにとどまりません。それゆえ、その方々のアウトプットも、一般的な美術展示におさまるものでないし、そうあるべきでもありません。ではどんなものが文化創造交流館らしいアウトプットとなるのか?その評価尺度は?そもそも彼らへのサポートとはどうあるべきなのか?講評会に参加させていただくなかで頭に浮かんでいたのはそうした問いでした。審査員特別賞は美術としての質も備えた植村さんの制作が選定されました。対してレジデンス賞は、文化創造交流館で起こる状況を想定し、今回のコーディネーターの皆さんの考えも重視しながら、今後の可能性に賭けて虻川さん居村さん両名が選定されました。この第一回目のSPACE LABOと講評会自体も重要な社会実験となると強く感じました。

Profile

RAD ―Research for Architectural Domain―
現代における「建築の居場所(Architectural Domain)」についてリサーチを行うインディペンデントグループ。2008年に京都で設立。「建築的なアイデアは『建てること』だけを目指すべきではない」を合言葉に、ではそのとき建築家に、あるいは建築には何ができるのかをリサーチしている。建築展覧会のキュレーション、建築や都市に関するメディア制作、レクチャーイベントの企画運営、市民協働のワークショップやまちあるき、行政への都市・建築利用提案等を行う。

Information

SPACE LABO

秋田駅前に立地する3つの商業施設内の空スペースを”クリエイトスタジオ”と見立てて展開するプランを公募する「SPACE LABO」。応募のあった14組のプランをポスター展形式で公開します。さらに、その中から選ばれた”ラボ・フェロー”7組が、コーディネーターのサポートを得て、パフォーマンスや展示、リサーチ、滞在制作などのプランを展開。
[主催]秋田市
[企画]NPO法人アーツセンターあきた
[協力]秋田ステーションビル株式会社、株式会社秋田ショッピングビル、株式会社OPA

■ ラボ・フェロー プラン展
[期間]2019年11月3日~12月22日
[会場]秋田駅前商業施設空きスペース

■ ポスター展
[期間]2019年11月3日~12月22日
[会場]フォンテAKITA 6階情報発信コーナー

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