arts center akita

市街地の新たな使いみち、地元の人たちと探ります 「かつての本屋が、高校生の居場所に変わる」(第1回)

近年、都市のどこにでも見られる中心市街地の空き店舗、空きスペース、空き家の増加。能代市から依頼を受け、秋田公立美術大学の教員・助手らが、中心市街地の空きスペースの再活用について実証研究をスタートしました。

地域とともに可能性を探る

秋田県北部に位置する能代市は、木材産業で栄え「木都」とも称されています。その能代でも、中心市街地の空き店舗、空きスペース、空き家の増加は、大きな問題として顕在化しています。この度能代市から依頼を受け、秋田公立美術大学景観デザイン専攻の教員・助手らで構成されるチームが、能代の資源を活かした中心市街地の空きスペースの再活用について協力することになりました。

美大チームと能代市役所の担当者に加え、能代で木工家具・雑貨を製作する湊哲一さん(KUMIKI PROJECT)と協議を重ね、「スペースづくり」ではなく、「スペースづくりのためのプログラム」に関する実証研究として進めることに。今後も増え続けるであろう空き店舗、空き家。それらを地域でどのように再活用できるか、能代の歴史・文化・資源・人材などを活かして新たな地域資源へと転換するための研究が始まります。

実証研究第一弾は、かつて本屋だった旧鴻文堂が舞台。ここを、高校生を中心とした街の人々が使う場にしていこうと新たなプロジェクトがスタートしました。

場をひらく。まずは片付けから。

8月31日(土)。秋田の短い夏休みが終わり新学期が始まる中、能代高校、能代工業高校、能代松陽高校から23人の生徒が参加し、地元企業関係者の参加も得て、総勢35人で旧鴻文堂の片付けと掃除に取り組みました。

街の本屋として地域の方々に親しまれ、惜しまれながら2011年に閉店した旧鴻文堂。片付けを進めると、本屋ならではの販促グッズや、地元商店の粗品、昭和のスターのポスター、湯飲み、灰皿など、いろいろなものが出てきました。古いものを掘り出して確認したり、これはなんだろうと話し合ったりすることも、片付けや掃除の楽しみの一つです。

「清掃ボランティア」ではなく、自分たちが自分たちの手でスペースを作っていく取り組み。高校生たちが「自分で使うこと」を想像して、旧鴻文堂をどのような場にしていきたいかを考え始めることが重要なポイントでした。
参加した高校生からは、「こんなところになったらいいな」といろいろなアイデアが。

・長時間いられる
・お金使わなくても良い
・清潔感欲しい
・DIYやりたい
・Wi-Fiがある
・くつろげて勉強できる
・壁の穴を塞いで綺麗にしたい
・ウォールアートとかやりたい
・大きな冷蔵庫欲しい
・荷物預かり
・漫画とかもある
・椅子と机、ソファとかあれば
・内装をみんなで変えていく
・ライブビューイング
・しゃべっててもいい場所
・文房具が買える、使える
・自転車置き場どうする?
・充電できる
・エアコン
・最近の漫画、雑誌がある

第2回は、高校生たちが主体となって「どんなスペースにしていくか」「どうやって運営していくか」を意見交換するワークショップを開催。その様子は、第2回目のレポートでお届けします。

Information

能代街なか資源再活用プログラム (第1回 CLEAN UP KOBUNDO)

能代市の中心市街地に増える空き店舗・空き家・空きスペースなどの地域資源の今後の活用の可能性を探ることを目的に、実証実験を通した研究活動を、行政や地域の企業等と連携し実践する。

■主 催:能代市
秋田公立美術大学(小杉栄次郎、井上宗則、萩原千尋、船山哲郎)
■協 力:NPO法人アーツセンターあきた
■参加者:能代高等学校・能代工業高等学校・能代松陽高等学校の生徒有志、
瀬川銘木株式会社、株式会社コシヤマ
■現地協力:KUMIKI PROJECT(湊哲一)

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた 事務局長

三富章恵

静岡県生まれ。名古屋大学大学院国際開発研究科修了。2006年より、独立行政法人国際交流基金に勤務し、東京およびマニラ(フィリピン)において青少年交流や芸術文化交流、日本語教育の普及事業等に従事。
東日本大震災で被災経験をもつ青少年や児童養護施設に暮らす高校生のリーダーシップ研修や奨学事業を行う一般財団法人教育支援グローバル基金での勤務を経て、2018年4月より現職。

一覧へ戻る