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愛された美術館の歴史と記憶。 そして、これから

秋田市中心市街地の千秋公園入り口に位置する旧秋田県立美術館。2013年の閉館から5年経過した今も変わらぬ姿でお堀のそばにたたずむ旧県立美術館がいよいよ再生に向けて動き出しました。その利活用を話し合う旧県美再生!ワークショップ「せばなるあきた」の報告(1)です。

(仮称)秋田市文化創造交流館の利活用を話し合うワークショップを開催

2013に閉館した旧県立美術館は建物の存続が決まり、2020年秋をめどに「(仮称)秋田市文化創造交流館」として生まれ変わる予定です。

秋田公立美術大学とNPO法人アーツセンターあきたは秋田市の委託を受け、「(仮称)秋田市文化創造交流館」の運営管理計画策定を目的としたワークショップを2018年に開催。全4回のワークショップをもとにして今後、運営管理計画がつくられていきます。

2013年に閉館した旧秋田県立美術館

梅雨が明け、港まつりが終わった7月22日、ワークショップ「せばなるあきた」の第1 回目がにぎわい交流館AU で開かれました。参加したのは、20~70歳代の総勢約70名。市役所職員やスタッフも一緒になった会場で、旧県美をめぐる思いや願いがあふれ出る、活気あるスタートを切りました。

「せばなるあきた」でワクワクを考える

旧県美再生!ワークショップ「せばなるあきた」は
●旧県美を活用することで、実現したい、「ありたい」まちの未来を考える。
●それを実現するために、旧県美の「こんな場所になればいい」「こんなのがあればいい」を考える。
●ここにいる皆さんの関係性を深める。
●旧県美とその周辺がにぎわうワクワクを考える。
これらを目的に開催されました。

全4回のうち第1回目は
●旧県美とその周辺のこれまでとこれからを共有する。
●ここにいる皆さんの関係性が少し深まっている。
●2回目も来たい、誰か誘おう、懇親会にも出ようかな、と思っている。
がゴールです。

全4回のファシリテーターを務める篠原幸子さん(NPO法人 場とつながりラボhome’s vi)=写真右
平元美沙緒さん(まちづくりファシリテーター)はグラフィックレコーディングを担当
ワークショップの流れと同時進行で模造紙にグラレコを繰り広げていきます

篠原幸子さん のファシリテーションに平元美沙緒さんのグラフィックレコーディングが伴奏するかたちで進行する「せばなるあきた」。ドリンクを飲んだり、チョコをつまんだりしながら和やかな雰囲気で始まりました。

第1回目は旧県立美術館にほど近い「エリアなかいち」のにぎわい交流館AUで開催
篠原さんのファシリテーションで、参加者同士がちょっと変わった自己紹介をしてウォーミングアップ

主役=ここにる皆さん

ワークショップははじめに、旧県美をめぐるこれまでのこと、これからのこと、まちづくりへの取り組み、来年度に改修工事が行われることなどを秋田市が説明。千秋公園をバックグラウンドとした芸術文化ゾーンを中心に、今後、継続的に芸術・文化に触れられるプロジェクトを進めていくことなどが報告されました。

「せばなるあきた」を運営するNPO法人アーツセンターあきたからは、ワークショップの成果を運営管理計画に反映させていくことなどワークショップの目的を説明。「目的」と「ゴール」を共有して、第1回目のワークショップがスタートしました!

参加者は誕生日の日付をもとに席替えをしつつウォーミングアップ。市役所職員やスタッフも含めた20~70歳代の参加者同士がそれぞれ、ワークショップに参加した理由や思いを話しました。

旧県美をめぐる「これまで」と「これから」

お互いを知ったあとは、旧県美やその周辺について、自分が知っていること、知らないことを付箋に書き書き…。旧県美について知らないことを聞き、知っていることを伝え合うのは、なんともワクワクする時間でした。

「周囲の庭がいい」「保存樹となっている木々が素敵」 などから、喫茶室の思い出など、それぞれの思いがあふれ出てきます。

そして、旧県美の名前(現在は「(仮称)秋田市文化創造交流館」)はどうなるのか、利用時間・利用料 など運営管理計画への反映の仕方、改修プラン、そして財源について…。希望や疑問なども次々と出てきました。

会場中央には、旧県立美術館周辺の古い写真を設置

20歳代の参加者からは「昔の思い出や熱い思いが聞けて、いい学びになった」 「ただみんなが集まる場所ではなく、価値のある場所になってほしい」といった感想がありました。

具体的な意見を運営に反映させていく

また、昨年度の参加者からは、「昨年の成果はどうなったか疑問」とのご意見がありました。

昨年度に開催されたワークショップで示された大枠の方向性を、今年度はより現実的にしていくこと、設計や運営に反映できる具体的な意見をいただきながら利用の仕方をまとめていくことなどを確認しました。

参加者それぞれが記入した付箋で壁がいっぱいに
旧県立美術館のあり方は、秋田市中心市街地の姿となっていきます
現在も千秋公園のお堀のそば、緑の木々のなかで時を刻む旧県立美術館

閉館して5年が経過した旧県立美術館へ

ワークショップ終盤には、会場のにぎわい交流館AUを出て広小路から中土橋を通り、旧県立美術館へ向かいました。

いつもは立入禁止の館内に入り、現在の様子を視察。広い空間を見上げ、天井から差し込む光を眺め、藤田嗣治が描いた壁画≪秋田の行事≫がかつて展示されていた場所でその痕跡を目の当たりにしました。

藤田嗣治の壁画≪秋田の行事≫は、縦3.65m、横20.50mの大作です。移転した秋田県立美術館に移送される前に展示されていたのが、この大展示室でした。

壁画があった壁には、壁画が外され剥き出しとなった木枠が、圧倒的な存在感でそこにそのまま、ありました。
視察した参加者は、それぞれ何を思ったでしょうか。

閉館して5年となる建物は、参加者それぞれの思いが交錯するなか、静かに私たちを受け止めてくれました。

空っぽになった大展示室。藤田嗣治≪秋田の行事≫は現在、「エリアなかいち」に移転した秋田県立美術館の壁画ギャラリーに展示されています

世代や職業、関心を超えて

それぞれの思いを知り、旧県美にまつわる「これまで」と「これから」を共有し、「こうなってほしい」という願いや「ありたい未来」を語り合った第1回目のワークショップ。
世代や職業、興味や関心を超えて、旧県美に関する多くの思いを共有した時間となりました。

撮影:伊藤靖史(クリエイティブペグワークス)

運営管理計画素案を発表!

旧県立美術館が新たな施設として再生されるにあたって、どのような施設で、どのような運営が望まれるかを考えた「せばなるあきた」。

ワークショップの成果をまとめた「運営管理計画(素案)」をより良いものとするため、現在の素案を報告するとともに意見をいただく機会を設けます。

開放的な場や学びの場、鑑賞の場、活動の場などが盛り込まれた施設になろうとしている「(仮称)秋田市文化創造交流館」。さまざまな視点からのアドバイスをいただきたく、ご参加をお待ちしています。

Information

(仮称)秋田市文化創造交流館運営管理計画素案報告会

開催日:2019年1月26日(土)
時 間:10:00〜12:30(9:45開場)
会 場:にぎわい交流館AU 2階展示ホール
定 員:60名

お申し込み・お問い合わせ
①参加者全員のお名前②代表者のお電話番号をTEL・FAX・MAIL・FBメッセンジャーのいずれかにてご連絡ください。
TEL 018-888-8137
FAX 018-888-8147
MAIL info@artscenter-akita.jp
(仮称)秋田市文化創造交流館運営管理計画素案報告会

プログラム概要
1)運営管理計画(素案)の紹介、説明
2)内容への感想、意見のメモ
3)共有(小グループ)
4)全体での意見確認・応答

※お車でお越しの方は「エリアなかいち駐車場」など近隣の駐車場をご利用ください。
※バスでお越しの方は、「千秋公園入口」あるいは「木内前」バス停をご利用ください。

★パブリックコメント★
ただいま秋田市では、以下にて(仮称)秋田市文化創造交流館運営管理計画(素案)に関する意見募集(パブリックコメント)を実施しています。
パブリックコメントはこちら

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

高橋ともみ

秋田県生まれ。博物館・新聞社・制作会社等に勤務後、フリーランス。取材・編集・執筆をしながら秋田でのんびり暮らす。2016年秋田県立美術館学芸員、2018年からアーツセンターあきたで秋田公立美術大学関連の展覧会企画、編集・広報を担当。ももさだ界隈で引き取った猫と暮らしています。

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