紙を素材に、対象を「模刻」する
関口史紘「紙と十二年」
身近にある日用品の数々を「模刻」した12年を記録する関口史紘(ものづくりデザイン専攻4年)の展覧会「紙と十二年」が、秋田公立美術大学サテライトセンター(フォンテAKITA6階)で開催中です。
関口史紘が紙を素材に日用品の模刻を始めたのは、小学生のとき。小さいころからものの形や構造が好きで、昆虫や恐竜など既存のペーパークラフトでは物足りなさを感じていた関口が、昼休みを利用して教室の机といすの模刻に挑みました。
「多くの既製品のペーパークラフトは、本来あるはずの凹凸を印刷された模様で表現していて、動く箇所が動かないことも多くありました。でも私はものの形や細やかなところ、製造工程上必然的な形状や、可動するための仕組みなどに魅力を感じていました。だからこそ、ものの細部まで迫った紙工作をしたいという思いが芽生えたのだと思います」
「模刻」は形態や構造への疑問の答えを探す
濃密な時間を与えてくれる
「模刻」とは、ものの形態や構造をそのまま再現すること。技法を学ぶための練習だったり、現物の保存のためだったりと意図はさまざまですが、関口は純粋に形態や構造への興味から取り組み始めたといいます。
「なぜここはこういう形なのか、なぜこのように機能するのか。そういった疑問の答えを探したり、自分なりの答えにたどり着いたりすることがうれしい。その時間を一番濃密に与えてくれるのが模刻です」
使用する素材は紙。関口は「ボール紙」といわれる灰色の厚紙や、片面に方眼が印刷された工作用紙を使います。道具として使うのはカッターナイフ、木工用ボンド、シャープペンシル、定規、紙やすりなど。関口はこれらを使って、日用品と徹底的に向き合います。日用品をモチーフとすることが多いのは、「身近にあるからこそ、普段は見ることができていない対象だから。特別なものでなくとも、ものの形には奥深いが世界が広がっている」と語ります。
生活は、ものと共にある
決して特別なものではない、気にもとめない日常のものを、誰にでも扱える道具で模刻する関口。だからこそ、さらに奥にある「可能性」を探ります。見つめるのは、紙の可能性と、ものとの関係の可能性。
「いまはものが溢れていて、ものがあって当たり前の時代。だからこそ、ひとつひとつのものとじっくり向き合う時間は特別な意味をもつと思います。ものを知ることで、ものと私たちはより丁寧な関係を築くことができるはず。ものと私たちが深い関係を築くことは、毎日をより豊かにするのだと思います」
関口のものへのまなざしと可能性にふれる「紙と十二年」は、5月9日(日)まで開催中。
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Information
関口史紘個展「紙と十二年」
ポスターはこちら(PDF)
■会 期:2021年4月25日(日)〜5月9日(日)
10:00〜18:50 会期中無休
■会 場:秋田公立美術大学サテライトセンター
(秋田市中通2-8-1 フォンテAKITA6F TEL.018-893-6128)
■入場料:無料
■お問い合わせ:kami.to.12.nen@gmail.com
<秋田公立美術大学サテライトセンターの感染症対策について>
■施設の感染症予防策について
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・施設内や備品について、定期的に消毒および清掃を行っています。
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■ご来場いただく方へのお願い
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・以下の方につきましては入館をお控えいただきますよう、ご協力をお願いいたします。
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・マスク着用等、咳エチケットにご協力をお願いいたします。
・他の利用者と安全な距離を保つよう、ご協力をお願いいたします。
・密集を避けるために、入場制限をさせていただく場合があります。
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