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言葉にできない部分の表現として、
三上さんの故郷の風景や秋田の風景などによって
心象を表現しようと決めていました(西尾)

言葉にできない心象を表現するために、西尾が映像に入れ込んだのが三上の故郷・青森や秋田の風景でした。それらの映像によって「鑑賞者に余韻みたいなものを感じさせた」と尾花。また、ふたつの作品を同一会場に展示した本展によって、ふたりの作品とその進行状況がシンクロし、ふたりの絆が感じられる展覧会となりました。インタビューでは尾花がさらに、ふたりの制作過程や思いを少しずつ明らかにしていきます。

尾花:取材をするということは自分のイメージに出会うために取材をするのか、あるいは自分の思いを表現するために適したモチーフにたどり着くために取材をしているのか。取材することについて込めたものってあるのでしょうか。

三上:作品をつくる時、最初は頭のなかでイメージします。そういう時は表したい意味にとってどのモチーフが一番要素として適しているのかと考えたりするのですが、取材する時は、取材の時から作品が始まっているというか。うまく言い表せないのですが。

尾花:今回はパネルづくりからスタートしましたよね。あの時点では今回の作品の絵柄はまだ決まっていなかったということでしょうか。

三上:まず大きい画面をつくってから、そこに取材してきた写真をプロジェクターで投影してみたりしてスケール感を考えたり。

尾花:細かく隅から隅までまでスケッチして画面に取り組むというよりも、取材で行き当たったものを投影したり、または画面を手で動かすことで生まれてきた図像とかを大事にしたりとか、そういった制作手法だったのでしょうか。

三上:そうですね。最初からカチッと決めるよりは、変化し続けていく感じでつくりました。

尾花:西尾さんは今回40分ぐらいのドキュメンタリー映像でしたけれども、こういった手法は毎回制作において使っているのでしょうか。

西尾:そもそもドキュメンタリーを撮ったのが初めてで。今までは自分でつくったシナリオがあって、自分でお願いしたキャストに演じてもらい絵コンテ通りにつくることが多かった。実際にいる人を撮るというのは初めての試みでした。

尾花:映画だったらプロットみたいなものをつくって物語を最初から最後まで見通してから撮影に入ると思いますが、今回の《インサイダー・アーティスト》では西尾さんはどこまで作品の完成したかたちをイメージして挑んだのでしょうか。

西尾:完成形はぜんぜん考えていなかったのですが、構成だけは決めていて。三上さんが制作しているシーン、私と対話して三上さんが言葉で自分の思いを紡いでいるシーン。あとは言葉にできない部分の表現として、三上さんの故郷の風景とか、いま制作に臨んでいる秋田の風景などを入れて心象を表現しようというのは決めていました。ただ三上さんの制作がどういうふうに進んでいくか、映像の締め方などは全然考えていなくて。半年の間に映像を撮らせてもらいながら自分のなかでも組み立てていきました。美術館に飾ってある最後のシーンが卒業制作展で。そのシーンを最後に入れたのもぎりぎりになって思いついたというか。展覧会の前日に飾ってあったら撮れると思いついて「いけるわ!」と思ってつくったので、しっかり細部までは詰め込んではつくっていませんでした。

映像に差し込まれる場所や風景、活動を通して
鑑賞者は余韻みたいなものを感じていたと思います(尾花)

尾花:風景との関連性という話がありましたけれど、映像にはたびたび場所や風景、三上さんが言葉ではなく絵筆をとったりパネルをつくったりという活動を通して鑑賞者は余韻みたいなものを感じているんですけれども。言葉を多く差し込むというよりも風景を多く差し込んだというのは、編集上で何か意図はあったのでしょうか。

西尾:その時の感情って言葉にするのはめちゃくちゃ難しいと思うんですよ。それは三上さんだからというよりも、たぶん誰でも、その時こういう感情でこういう思いだったとは言えない。言語としてあるものは表現できるけれど、人間の思いって言語化できないところが絶対あると思っていて。それを風景というもので表現することで、見た人が感じとるものも言葉にできない思いを感じ取ってもらえたらと思って多めに入れました。三上さん自身も風景画に結構自分を重ねたりしているのかなと思っていたので、それも合わせて手法として多く使いたいと思って取り入れました。

尾花:お互いの作品と進行状況が微妙にシンクロしていく感じが、映像には出てこないふたりの絆みたいなものを鑑賞する人が感じられたというのはそういうところがあるのかなと思いました。

絵にかぎらず、美術にかぎらず
表現することで他者とつながるのが、自分らしさ。
自分をよしとするような(三上)

尾花:卒業制作展にはそれぞれが《洞然》《インサイダー・アーティスト》を出展して、別々の会場で展示をしましたが、今回BIYONG POINTでは初めて同じ空間でふたりの作品を展示しました。来場者からのいろいろなアンケート、反応が届いています。同一の会場にあるから、最初に三上さんの作品を見たあとに西尾さんの作品を見て、もう一回三上さんの作品を見てという、ふたつの間で行ったり来たりリフレインしながら、そこがよかったという意見をいただけました。卒業制作展では別々に展示しましたが、今回、同一会場で展示をしたということに対して何か思いはありますでしょうか。

三上:ものがあるのと映像があるのを見られるのは、お互いに見えない部分を見えるようにするというか、お互い引き立て合える気がするのでいいなと。嬉しいです。

西尾:そのご意見が嬉しいですけれど、卒業制作展の時も三上さんの絵を見て私の作品を見て、また三上さんの絵を見に戻ったという意見が嬉しかったので、それが同じ部屋にあることによってより鑑賞しやすくなっているのがありがたいなと思いました。卒業制作展の時は私の映像が近くにあると三上さんの絵の邪魔になるんじゃないかと思ってあまり近くにおきたくないと思っていたんですけど、今回初めて同室に展示してもらって、私の心配をよそにいい作用を生んでくれているのならよかったなと思います。

尾花:では最後に今後の展望や作家としての思いなどがあったらお聞かせください。

西尾:今している仕事が映像制作とはあまり関係のない仕事なので、今のところそういった制作を主軸にしていく予定はないんですけれど、今の仕事をすぐ辞めるつもりもないので。ただやっぱり卒業制作展が始まっていろんな人から感想をもらった時に、こっちの道やりたいなと思って。正直もうたぶん一生映像はつくらないだろうなという気持ちでつくって出した作品だったんですけれど、皆さんから反応をもらってすごくやる気が出たというか、映像制作の道もいいなと思うところがあったので。今後こうしていくという目標はすぐには言えないんですけれども、美術に携わる人たちを取材してドキュメンタリーをつくるというのをまたいつかやっていけたらと思います。

三上:作品をつくっている時は自分ひとりで作品と向き合う作業だったんですけれど、今回はいろいろな方が見てくださって、感想をいただいたりして。自分が投げかけたものに対してものすごくいろんな声をいただけてありがたいなと。作品を発表することってこんなに大きな、得られるものがあるんだなと感じられて。作品はずっとつくっていきたいんですけれど、いま教職という方向を向いていて、絵にかぎらず、美術にかぎらず表現することで他者とつながること。自分らしさというか、自分をよしとするような。表現することでできることってあると思うので、それをいろいろな方に伝えていけたらと思います。

尾花:それぞれただ完成されたものを見るというだけではなくて、ふたりの制作の思いとか、揺らぐ心とか、そういったものに寄り添うことのできるとても興味深い作品だと思いますので、より多くの人に見ていただけたらなと思っています。

会場撮影:三輪 卓護

Information

三上真穂×西尾葉月「洞然/インサイダー・アーティスト」

■会 期:2021年6月11日(金)〜8月29日(日) 9:00〜18:00
      ※休館日8月13日〜15日
■会 場:秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT(ビヨンポイント)
    (秋田市八橋南1-1-3 CNA秋田ケーブルテレビ社屋内)
■入場無料
■主 催:秋田公立美術大学
■協 力:CNA秋田ケーブルテレビ
■企画・制作:NPO法人アーツセンターあきた
■グラフィックデザイン:木村優希(むすぶ企画室)
※新型コロナウイルスの感染拡大状況等により、展覧会の開催期間や内容等が変更になる可能性があります。
チラシダウンロード
BIYONG POINT Facebookページ
▼プレスリリース https://www.artscenter-akita.jp/archives/21064

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