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残響のようなパフォーマンスが記憶の片隅に残す余熱
あの時の熱を、僕はまた思い出すかもしれない

2022.01.31

意識を超えた肉体の反応に注視する工藤結依が、「熱」と「身体」をテーマにBIYONG POINTで展開した展示とパフォーマンスの作品展「余熱(ほとぼり)」。その空間に身を埋め、工藤の身体表現に接したnost(OVO)によるレビューと、展示空間で語り合った対談の模様を公開します。

体温の痕跡を視覚化して、余熱は
意識を超えた心身の交換を呼び起こす

意識を超えた肉体の反応に注視する工藤結依が、「熱」と「身体」をテーマにBIYONG POINTで展開した展示とパフォーマンスの作品展「余熱(ほとぼり)」(2021年11月26日〜2022年1月10日)。秋田大学等さまざまな研究機関の協力を得て、触れることで体温が伝わり、布や液体に変化をもたらす特殊素材を用いて制作した作品とパフォーマンスによって、心身の交感を疑似体験する空間となりました。
「ひそむ」と「つたう」の2期に渡った展覧会では、工藤によるパフォーマンスが幾度となく繰り広げられました。展示空間に身を埋め、工藤の身体表現に接したnost(OVO)によるレビューと、ふたりの感性がやわらかく触れ合った対談を公開します。

 



■nost(OVO)評 工藤結依作品展「余熱(ほとぼり)」

熱によって、より強く、長く、深いリバーブ(残響)のように痕跡が残る。
感情や記憶が呼び起こされる。
その身体表現が、記憶の片隅に余熱を残す。
あの時の熱を、僕はまた思い出すかもしれない。 −−−nost(OVO)

タイトルと、フライヤーの空気感を見た時、この展示をみて自分は心が壊れヤバくなってしまいそうで大丈夫かなと、不安がよぎりました。

熱というのは、自分にとっては切に戻ってきて欲しいもの。
精神表現の音、身体表現への着目、言葉では辿りつけない感覚の世界で生きてきた自分、他者を寄せ着けずに座ったまなごをして灰色の街の狂気の音で光を灯そうとした熱、そして麻痺で失った蘇る事のない熱…

もしかしたら、皆さんが感じた事と自分が感じた事は全く違うかもしれません。自分にレビューを依頼してくれた方は、自分がこの街の余熱の中で生きている、残党に見えたのかな?? それくらい、失った熱の中で生きている自分は考えさせられたし、緊張感と温もりを感じた作品でした。
生活と命の在り方、毎日明日、目が覚めているかどうかを考える自分にとっては、行き着く表現はアブストラクトエモーショナルと感じました。

①現実・日常
ビヨンポイントの外は日常過ぎるほどの秋田らしい普通の景色であり現実的な空間。
②突然の意識・体温の低下
その現実との狭間、ぼんやりとした意識と無意識(布)ををくぐり余熱へ。
③突きつけられた現実
言葉も発さずにゆっくりと動く工藤さんとの間に緊張感が生まれるが、しばらくするとその緊張こそが鑑賞者がこの作品に外の世界から余熱の世界に入り込む時間をつくっていた事に気づき、この空間こそが現実と感じる。
④ひそむ・つたう
「ひそむ」熱で布や板により強く長く深いリバーブ※のように痕跡が残る事によって感情や記憶を呼び起こす熱。ゆっくりと優しく触れる工藤さんの姿が印象的で彼女自身がリバーブのような身体表現に感じる。
「つたう」点滴の容器にも似た物から血管を感じさせる管(くだ・チューブ)に流れる液体は決して血液ではなく、なんらかの影響で大半の熱を無くした人(液体)(物理的熱だけではなく、心の熱を無くした人を含む)に思えた。
⑤大切な人
それらを全身を使い抱きしめるように温める姿は、大切な人に触れ、熱が戻るように懸命に願うような姿にさえ感じる。
⑥永遠は無い
そして、熱で白く変化した液体、身体の熱、心の熱が少しの間は蘇り、そしてまたゆっくりと溶けるように消えていく。
⑦記憶の余熱
残酷にも熱は消えるが、「ひそむ」「つたう」という身体を使ったパフォーマンスは記憶の片隅に余熱を残す。あの時の熱をまた思い出すかもしれません。
⑧想う
自分は音楽という事をやってきたのに、むしろ社会で生きていくなかではその表現したい気持ちが幾度となく邪魔になり恨んできたし、音から離れている時期の方が長いです。
ただ、工藤さんの作品はホスピタリティーに溢れ人を想う気持ち、心療や福祉におけるケアのような、そういった自分にも伝わる温もりを受けました。
体温という誰しもが持つ身体の表情=心の表情、寒い季節な事もあり熱を持つ事の大切さ、誰かに熱を持たせる事の大切さも考えさせられました。
ありがとうございました。
※リバーブ/残響(ざんきょう、英:reverberation)は、音源が発音を停止した後も音が響いて聞こえる現象のことである。

■nost(OVO)
profile

自身が歩んできた生を辿り、過去、現在を行き来する心象残響音像
ZOMBIE FOREVER NO.43以降、
心身共にモノラルの環境下に置かれ思う…
「過去に戻り時を止めたい」
もがきながら時を止めようとするが進む時間
それらをレコード回転数の概念を壊した音像で表現する
家族と長く暮らす事が目標である
https://instagram.com/nost.ing

〈経歴〉
1980年 秋田市千秋矢留町生まれ
2006年 nujabes.devlargeが所属していたレーベル、リバイアスミュージックから2枚のアルバムをリリースし、音のキャリアをスタートさせる
2019年 生きた音の瞬間を型に残すべくダイレクトにレコードに音を彫るOVOをはじめる
2020年 「はだしのこころ」に出会う

nost(OVO)