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日常の痕跡から自分自身の輪郭を探る 深谷春香 個展「痕跡器官」

秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINTで11月26日(土)から、アーツ&ルーツ専攻に在籍する深谷春香の個展「痕跡器官」を開催します。日常生活のなかで集めたレシートを通して、自身の記憶をたどる展覧会。
ビヨンセレクション採択企画。

レシートの収集を通して、自分の記憶をたどる
深谷春香 個展「痕跡器官」

日常のなかの「蓄積」や「痕跡」に興味を抱く深谷春香(秋田公立美術大学アーツ&ルーツ専攻4年)の個展「痕跡器官」が11月26日(土)、秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINTで始まります。

深谷にとって日々の記録・記憶でもあるレシートを集めることは、深谷自身の日常を蓄積していく行為でもあります。レシートを見返すことで、日常の些細な記憶や過去の自分の欲望といった記録と向き合い、持ち主である自分自身の輪郭が浮かび上がると考えます。

なぜ、レシートにこだわるのか?

深谷がレシートに興味を抱いたのは、2020年におこなった落とし物調査がきっかけでした。翌年には1年間貯め続けたレシートを再構成し、1年分の存在証明として提示。その後はさらに思考を深め、レシートのひとつひとつが記憶を呼び起こす鍵であること、見返すことでしか思い出すことのできない日常の記憶や欲望の記憶の記録であること、自分自身の「移動」を可視化するものでもあることに気づきます。他者とレシートとの関わり方にも注目し、金額情報を音に変換する「生活音」の実験もおこないました。

一方、2022年より、手放された着物や着られなくなった洋服のなかから見える以前の持ち主の「痕跡」を記録。また、古くなった布を裂いて糸にし、緯糸として織り直す「裂織」の技法を用い、解いた着物を再び反物の幅に織り直すことで新しい布に再構成することも試みています。

深谷春香《生活音》(アーツ&ルーツ専攻展「ONE」2022年)
(アーツ&ルーツ専攻展「獣道」2022年)
(アーツ&ルーツ専攻展「獣道」2022年)
フィールドノート裂織

自分自身の「痕跡」が少しずつ「蓄積」されていく

「レシートとは便利なもので、その時、何をしていたかの記録であるはずなのに私自身が書いたものではない。1秒もかからずに印刷され、記録される。その一瞬のなかにいろいろな情報が詰まっていて、それらが貯まっていく安心感のようなものさえある。日々のレシートを集め続けていくなかで、私自身の痕跡が少しずつ蓄積されていく感覚。それは年輪のようでもあり、レシートから私自身の輪郭がぼんやりと浮かび上がるようなイメージもある」と深谷。

「痕跡」と「蓄積」。この2つがお互い関わり合いながら、絶えず横断しながら織りなすように構成される本展では、深谷が集め続けるレシートを冊子に綴じ直した「日記」を核に、レシートに内包されている情報を可視化、可聴化して展示します。
日常の痕跡であるレシートが、誰かの記憶や存在の証明となるさまを体感してください。

Profile

深谷春香 Fukaya Haruka

2001年東京生まれ。秋田公立美術大学アーツ&ルーツ専攻4年。2021年アーツ&ルーツ専攻展「夜明け前」、ふたり展「縁結び」。2022年アーツ&ルーツ専攻展「ONE」、アーツ&ルーツ専攻展「獣道」。日常のなかの蓄積や痕跡を再構成することで、自分自身の輪郭を確かめていくような制作をおこなっている。

Information

深谷春香 個展「痕跡器官」

深谷春香 個展「痕跡器官」DM(PDF)
■会期:2022年11月26日(土)〜2023年1月9日(月・祝)
    入場無料、休館日:2022年12月29日(木)〜2023年1月3日(火)
■会場:秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT
   (秋田市八橋南1-1-3 CNA秋田ケーブルテレビ社屋内)
■時間:9:00〜17:30
■主催:秋田公立美術大学
■協力:CNA秋田ケーブルテレビ
■企画・制作:NPO法人アーツセンターあきた

■お問い合わせ:NPO法人アーツセンターあきた
TEL.018-888-8137  E-mail bp@artscenter-akita.jp
新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況により、展覧会の開催期間や内容が変更になる可能性もあります。

※2022年度秋田公立美術大学「ビヨンセレクション」採択企画

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アーツセンターあきた

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