arts center akita

秋田に暮らす人々やクリエイターらが交わり展開するプロジェクト「PARK-いきるとつくるのにわ」

秋田市文化創造プロジェクトの一環として、秋田に暮らす人々やクリエイター、専門家が交わり活動するプロジェクト「PARK – いきるとつくるのにわ 」が2022年7月より、秋田市文化創造館を拠点にスタート。約半年の間に、さまざまな活動が展開されました。

秋田に暮らす人々やクリエイター、専門家が交わり多様な活動を展開するプロジェクト「PARK – いきるとつくるのにわ」。2022年7月から秋田市文化創造館を拠点に4つのプログラムを開催し、人や出来事が出会い、創造的な活動の種が育まれ、表現や創造性に満ちた瞬間となって実を結び、文化の種となって街に環っていく、そのように秋田の文化的土壌をたがやしていくことを試みました。

クリエイター・専門家とともに、まちやくらしを「観察する」

秋田県内外で活躍するクリエイターや専門家を招き、まちやくらしをリサーチし作品やプロジェクト形式で表現する「観察する」プログラム。3組のクリエイターを招いてさまざまな活動を行いました。

アウトクロップ

秋田を拠点にドキュメンタリー制作やシネマ運営を行い、クリエイターとして勢いを増すアウトクロップ・スタジオと、秋田市中心市街地にてプロジェクト『この町、シネマ。』を始動。文化創造館とアウトクロップ・シネマを会場とした映画上映イベントや集まった人たちとプロジェクトのアイデアを出し合う座談会を開催。また、秋田において映画館が身近だった例として、1980年代頃の秋田市・有楽町の映画文化に焦点を当てたリサーチを展開しました。

この町にシネマのある風景についてディスカッション

わいないきょうこ

ロンドンを拠点に活動後、母の故郷である美郷町にて活動するわいないきょうこが、秋田の食材を使いながら新たな食風景を作り出すプロジェクトを実施。雪の下で食材を貯蔵する雪室に着目し、秋田産の食材を納めた雪室を秋田市内に設置しました。雪室熟成食材を世界のさまざまな料理のアイデアを元に料理し、味わうフードイベントを開催。雪国の貯蔵・熟成文化を通し、世界の文化、先人の知恵に触れる体験を創出しました。

千秋公園内に設けた雪室に貯蔵した食物を開封

身体0ベース運用法/安藤隆一郎

身体0ベース運用法とは、染色作家である安藤隆一郎による「ものづくりの視点」から「もの」との関わりによって生まれる身体の感覚、運動、機能を「0」から見直す身体論です。季節ごとに秋田県内をめぐり、秋田の伝統的文化から身体の結びつきを思考するリサーチやワークショップを展開しました。冬には「木の岐」に着目した展示、行商イベントを秋田市内で実施し、現在の木の岐の可能性を訪れた方々と想像し、模索しました。

身近な野菜を用いた「野菜身体測定会」

トークやワークショップを通じて新しい知識や技術と「出会う」

いきること、つくることに関わるユニークな取組みを実践する研究者や専門家を招き、トークやワークショップを開催しました。

ローカルなフード(風土)を味わう

第一部では京都大学の秋津元輝教授をゲストに食という身近な分野を起点としながら、未来や環境、社会のことについて考えるレクチャーを開催。第二部では美郷町にて学び舎・やぶ前を運営するわいないきょうこさんを迎えて、秋田の食材を味わう調理ワークショップ・食事会を開催しました。
日時| 7月31日(日) 13:00-17:00
講師|秋津元輝(京都大学農学研究科教授)、わいないきょうこ(デザイナー、やぶ前)

親子でサバイバル(火・食・住)

文化創造館の屋外エリアにて、小学生とその保護者を対象にしたキャンプワークショップを開催。火を起こす(火)、ご飯を作る(食)、テントを立てる(住)などの体験から、もしもに役立つサバイバルスキルを学び、実践しました。
日時|9月11日(日) 13:00-17:00
講師|柚木恵介(アーティスト、秋田公立美術大学准教授)

千秋ノ市

マルシェイベント「千秋ノ市」を開催。県内で活動する16組の出店者が【共存】をテーマに集まりました。周辺でもさまざまなイベントが開催され、秋田駅周辺には多くの人が周遊する姿が見られました。
日時|9月23日(金・祝)11:00-16:00
企画|ノ市実行委員会(株式会社See Visions)

食べること、社会の中で生きること

人類学者の磯野真穂さん、キュレーター・心理療法士として活動する西原珉さんをゲストに迎え、トークイベントを開催。ワークショップを交えながら、「食べること」を多層的に捉え、考え、話し合う機会となりました。
日時|10月22日(土) 14:00-16:00
講師|磯野真穂(人類学者)、西原珉(キュレ—ション、ライター、心理療法士)

大地をたがやす芸術実践

芸術実践によって耕されるべき「大地」とは何なのか、地域における「耕し」の方法とは。また、これからのアートセンターのあり方を探るトークセッションとなりました。トーク後にはイベント参加者も交えた交流会を開催しました。
日時|11月23日(水・祝) 13:00-17:00
講師|奥脇嵩大(青森県立美術館 学芸員)、 服部浩之(インディペンデント・キュレーター)、 野ざらし[青木彬(インディペンデント・キュレーター、一般社団法人藝と)、 佐藤研吾(建築家)、中島晴矢(アーティスト)]

手を動かしつくることを実践し「育む」場をひらく

集まったプロジェクトメンバーとともに、文化創造館での野菜栽培や観察に取り組みながら、食と結びつくさまざまなテーマについて学び合います。栽培指導に秋田で農場を営むガイアガーデンさんを招き、土づくり・種まきから収穫までを学びました。また月に数回のミーティングを実施。メンバー同士で調理技術を教え合う講座や自主サークル「育む調理部」も発足。秋には放置された柿や栗の木の情報を募集して柿を収穫。干し柿作りや、自作の燻製機で家庭版いぶりがっこづくりにも挑戦しました。

放置された果樹を募集し、収穫した柿で干し柿づくり

表現や活動を未来に継承するためのアーカイブを「残す」

「観察する」「出会う」「育む」の取り組みを、クリエイターやイベントゲスト、プロジェクトメンバー、秋田市文化創造館を訪れた人など様々な人たちの目線で記録し、文化創造館内やウェブサイトにて公開します。表現や活動をその場限りのものとせず、次の活動へ繋がる種として未来へ継承することを試みます。

各プロジェクトのレポート
Instagram
Facebook

Information

文化創造プロジェクト 「PARK-いきるとつくるのにわ/Public, Arts & Research Kitchen」

開催期間:2022年7月〜3月(2023年度も継続開催)
開催場所:秋田市文化創造館ほか
主催:秋田市
企画・制作:NPO法人アーツセンターあきた(芦立さやか、藤本悠里子)、山本美里

※本事業は、秋田市「文化創造プロジェクト」の一環として実施しています。秋田市では「文化創造プロジェクト」を通して、市民によるさまざまな活動や、人と人とのつながりを創出するなど、文化を切り口に将来のまちづくりを見据えたソフト事業やネットワークづくりに取り組んでいます。

https://akitacc.jp/event-project/park/
https://akitacc.jp/event-project/park2023/

Writer この記事を書いた人

秋田市文化創造館

藤本悠里子

1994年京都市生まれ。京都造形芸術大学、秋田公立美術大学大学院にてキュレーション、アートマネジメントを学び、現代美術展等の企画を行う。2019年より現職、秋田市文化創造館開館準備/事業運営に関わる。企画制作した事業に「PARK-いきるとつくるのにわ」(秋田市、2022年)、「200年をたがやす」美術分野 (秋田市、2021年)、ALLNIGHT HAPS 2019「PORTABILITY」(京都、2019年)など。

一覧へ戻る