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「共異体」としてのジオカルチャー 研究レポート《手長足長》Vol.02発行!

秋田県にかほ市と秋田公立美術大学が2021年に連携協定を結んだことをきっかけに始まった「ジオカルチャー研究プロジェクト」。2022年度は教員・助手・学生などによる3つのプロジェクトが動きました。研究の過程をまとめた研究レポート《手長足長》Vol.02を紹介します。

見えない領域を探り、土地の輪郭を浮き上がらせる
「ジオカルチャー研究プロジェクト」

にかほ市×秋田公立美術大学協働プロジェクト「ジオカルチャー研究プロジェクト」は、人間と自然を繋ぐ統一的な生命環境としてのジオス(地球)と、これまで培われてきたカルチャー(文化)を結ぶプロジェクトです。

にかほ市に湧き上がる魅力的な風土と、美術大学による独自の研究視点が重なり合うことで、未来に向けた地域資源の発掘と可能性の発見を目指すことを目的としています。

2022年度のジオカルチャー研究プロジェクトは「伝統・伝承領域」「野外アクティビティー領域」「地域資源領域」に分かれ、3つのプロジェクトが動きました。
昨年末に発行された研究レポート《手長足長》Vol.01に続き、このたび各プロジェクトの研究内容を記録したVol.02が発行されました。にかほ市や秋田市内の公共施設などで配架していますので、ぜひご覧ください。

▼「ジオカルチャー研究プロジェクト」
「ジオカルチャー研究プロジェクト」記事一覧
研究レポート《手長足長》Vol.01(2022年12月発行)
研究レポート《手長足長》Vol.02(2023年3月発行)

「にかほ市リサーチ」研究経過報告(2022年3月発行)

「流れ山」で見る仁賀保地域の過去と現在
地域資源領域「いっぽ にほ にかほ『ながれ散歩』」

地域資源領域では、秋田公立美術大学准教授の井上宗則と学生らが、鳥海山の山体崩壊「象潟岩屑なだれ」により生まれた流れ山に着目しました。にかほ市象潟地域の九十九島に代表される流れ山が、象潟以外にも分布されていることに注目し、各地域を特徴づける新たな地域資源として位置づけることを目的としています。

《手長足長》Vol.02では、2022年11月に仁賀保地域で開かれた一般市民向けのまち歩きイベント「いっぽ にほ にかほ『ながれ散歩』」(秋田公立美術大学・にかほ市主催)の様子をレポート。鳥海山・飛鳥ジオパーク推進協議会による流れ山の成り立ちを料理になぞらえたユニークな解説の様子や、まち歩きを通じて発見した仁賀保地域の流れ山と生活、歴史の関係についてまとめています。

時間の経過による自然の変容
野外アクティビティー領域「にかほでそとね」

野外アクティビティー領域では、秋田公立美術大学准教授の萩原健一と映像作家・デザイナーの嶋津穂高、秋田公立美術大学の学生らが環鳥海山麓の環境に即した新しい野外活動の創出を試みる「にかほでそとね」を行いました。

Vol.02では、2023年2月に実施したにかほ市冬師地区にある冬師湿原での活動の様子を紹介しています。活動場所は真っ白な景色が広がる雪上。一晩の気温の変化をテーマとし、2日間の滞在を通して雪の中に仕込んだ「仕掛け」の変容を映像で写しとりました。

継承される地域の記憶の宝
伝統・伝承領域「鳥海山麓 野生めぐり」

伝統・伝承領域では、秋田公立美術大学准教授の石倉敏明と写真家の田附勝らが「鳥海山麓 野生めぐり」と題し、鳥海山麓のフィールドワークおよび地域行事のリサーチを実施しました。

Vol.02では、2023年1月中旬に行われたにかほ市横岡地域のサエの神行事(上郷の小正月行事)や石名坂地域のアマノハギ行事に密着。地元の人々との対話をもとに、脈々と受け継がれてきた営みと儀式についてのリサーチをまとめています。

「手長足長(てながあしなが)」は1200年前に小砂川地域の三崎山にいたとされる巨人であり、「ジオカルチャー研究プロジェクト」を包摂する概念として設定しています。「手を伸ばせば鳥海山の頂まで届き、足はひとまたぎで飛島まで届くといわれ、人々を恐れさせていた」という伝説の怪物です。手を伸ばして大地を大きく包み込む身体性や、頂から岩を投げるような崩壊によって地形が生まれたスケール感や躍動感、伝説から繋がるチョウクライロ舞、鳥海山麓に続く番楽等の文化。手長足長の伝説と共に、にかほに潜む見えない領域を探り、土地の輪郭を浮き上がらせます。
(不定期発行)

Information

にかほ市×秋田公立美術大学協働プロジェクト
「ジオカルチャー研究プロジェクト」

「流れ山の地域資源化に向けた基礎的研究」井上宗則 石田駿太 石戸凛 友杉悠葉 長谷川由美 藤原すもも 山下暁羽
「にかほでそとね」萩原健一 嶋津穂高 福住廉 櫻井隆平 大平真子 木村萌 須田菜々美 出口佳弥乃 白田佐輔 堀江侑加 村田晴加 山本慎平
「野生めぐり にかほ版」石倉敏明 田附勝 尾花賢一 居村匠 大東忍

コーディネーター|田村剛 伊藤あさみ(NPO法人アーツセンターあきた)

「ジオカルチャー研究プロジェクト」研究レポート《手長足長》Vol.02
(2023年3月発行)
手長足長vol.02(PDF)

デザイン|上野ゆきこ
編集|高橋ともみ
撮影|田附勝 嶋津穂高 萩原健一 伊藤靖史 後藤洋平ほか
表紙|尾花賢一
企画|公立大学法人秋田公立美術大学
制作|NPO法人アーツセンターあきた
印刷・製本|秋田活版印刷株式会社
発行|にかほ市 〒018-0192 秋田県にかほ市象潟町字浜ノ田1番地
※研究レポート《手長足長》Vol.02は、にかほ市・秋田公立美術大学協働プロジェクト「ジオカルチャー研究プロジェクト」の一部として作成しています。
※無断複写・複製・引用を禁じます。

「ジオカルチャー研究プロジェクト」に関するお問い合わせ
NPO法人アーツセンターあきた TEL.018-888-8137

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

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