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植物ってどんなかたち?なぞって、えがいて、いけてみよう!つくった世界に入りこんで感じるものとは?

【こどもアートLab2022レポート③】
植物の生きる姿と向き合うワークショップ「植物ってどんなかたち?なぞって、えがいて、いけてみよう!」。小学生の子どもたちが、みる・えがく・みたてるの3つをキーワードに、全3回にわたって植物の世界に触れました。その世界は、こどもたちの心にどのように映ったのでしょうか?

植物ってどんなかたち?
よーく観察したことをスケッチブックから、大きい紙へ描く

秋田公立美術大学が主催する「こどもアートLab」は、同大学の教員や秋田県内外で面白い活動をしている人とこどもたちが出会う場所。新しい価値観を持つ多方面の実践者との遊びのなかで、こどもたちがさまざまな経験と出会い、感性を育む環境づくりを目指します。

2022年度は、恒例となった「NEOびじゅつじゅんびしつ」に加え、秋田市文化創造館を主な会場として「植物ってどんなかたち?なぞって、えがいて、いけてみよう!」を開催しました。Labリーダーはガラス作家の瀬沼健太郎さん(秋田公立美術大学准教授)と大木春菜さん(秋田公立美術大学助手)です。
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「植物ってどんなかたち?なぞって、えがいて、いけてみよう!」は、全3回にわたるワークショップです。秋田市内の小学3〜6年生10人のこどもたちが参加しました。
① 植物を観察、おおきくえがく!(9/24・土)
② 植物スタンプ!(11/12・土)
③ みんなで植物の空間をつくって、みたてる!(12/25・日)

夏から秋、そして冬にかけて、植物の全体から細部まで観察。最後には約10メートルの長さの大きな紙にこどもたちが見て触れた植物の世界を描いていきます。

スタートは白い大きな紙から

① 植物を観察、大きくえがく!(9/24・土)
植物採取&スケッチスタート!
木の幹や枝、他にもいろいろ見えてくる?

9月24日、1回目のワークショップが始まりました。会場にあるのは長さ10mの大きな紙2枚。こどもたちは、少し緊張しながら目の前にある大きな紙で何をするのだろうと思いながら待っていました。

Labリーダーの瀬沼さんが現れます。早速目の前の長い紙に何か描くのかと思いきや、口にしたのは雨音が響く外のこと。
「今日は雨だけど、雨の中の植物をゆっくり観察してみます。みんなにスケッチブックを渡すので描いてみましょう。描いたら、ここに集合です!」と、こどもたちを外へ連れ出します。
まずは文化創造館の2階のテラスから外を観察してみました。見えるのは一面の植物の緑。けれどよく見ると葉っぱや枝、幹など個々が重なり合って大きな景色となってみんなの目の前に広がっています。
さて、いよいよスケッチブックと鉛筆を手に、雨の中へと繰り出します。

植物の観察をする際のヒントを教えてくれる瀬沼さん

「外の大きな木には枝がたくさんあるけど、どのように繋がっているかな?どんな模様かな?草木、葉っぱはどんな形だろう?どんなふうに生えているかな?他にもいろいろ観察するものがたくさんあるよ」
瀬沼さんは、植物を見つめて描くときのヒントを教えてくれます。

こどもたちは植物の様子を見つめながら、落ちているものやくっついている虫まで、真剣な様子でどんどんスケッチしていきます。
文化創造館に戻ってくると、テラスでスケッチを見せ合いました。どれも違いがありますが、よく観察したからこそ違いが出てくると瀬沼さんは教えてくれます。

みんなで採取した植物のスケッチをシェア

さぁ、えがこうか!
隣の木にも移っていいよ!ジャンプ!

いよいよ最初に置かれていた長く大きな紙に向き合います。
筆と墨の入ったお茶碗や木炭がこどもたちに手渡されました。スケッチブックに描いた植物を今度は大きな紙に描いていきます。

最初に、秋田公立美術大学の学生の手によって大きな木の幹が描かれました。その後はいよいよこどもたち。次々と枝や葉っぱが伸び、昆虫などがものすごいスピードでうまれていきます。学生もこどもたちの保護者も一緒になって、あっという間にさまざまな葉っぱや模様が浮かんだ巨木ができあがってきました。

今回描いたのは4枚の大きな紙。最初に用意されていた2枚の紙に、あとから2枚の紙を追加しました。
並べられた大きな木々は、隣の紙まで枝が伸び始めます。その上を渡り歩くリスのように、こどもたちは筆を自由に走らせます。まだ乾かない墨を踏まないように注意深く、身軽なこどもたちはジャンプして渡っていきます。見ている大人たちもうずうずしてしまいました。

真剣に葉っぱや枝を描いていきます

木に登って、降りて。
さぁ、お日さまは見えるかな?

4枚の大きな紙に描かれた大きな木。勢いよく描かれた枝や葉っぱの線は、縦横無尽に広がっています。

男の子が見つけた雨に喜んで出てきたカタツムリ、水たまりにそっと浮かんで舟のように動く葉っぱ、見えていない鳥やリスなどの動物。さまざまなものに満ちあふれています。
雨に濡れながらも懸命に観察したものが、紙一面に隙間なく描かれました。
お椀の墨が足りなくなり、どんどん墨を追加しながら描き続けるこどもたちに、瀬沼さんも驚きを隠せません。

頃合いを見て、瀬沼さんは木の根元になる部分にこどもたちを集めて語りかけます。
「みんなで描いた木の全体を見てみて〜。そして、ここから登ってみよう!そうそう、どんどん登って、お日様は見えるかな?上まで登ったらゆっくり降りてきて。他の枝に移ってもいいよ」。
ゆっくりとみんなで描いた大きな木を体全体で体感します。

今日のワークショップはここで終わり。次回は植物でスタンプをします。
描いた木から降りてきたこどもたちに伝えると「楽しみ!」「やりたい!」とうれしそうな声が聞こえてきます。

次は、どのような表情の木ができるのでしょうか?

② 植物スタンプ!(11/12・土)
気に入った植物の葉っぱや枝を集めにいこう!

11月12日、2回目のワークショップがスタートします。
夏の暑さの中みんなと集まった時と違い、すっかり秋の季節です。

今日は植物を使ったスタンプづくり。好きな形の葉っぱや植物を集めてスタンプにし、大きな紙に植物の世界を表現します。

みんな早く外に行きたくてたまらない様子。瀬沼さんは待ちきれないこどもたちに声をかけて、テラスに行こうと誘います。「テラスから見える景色は前回とどう違うかな?」とこどもたちへ問いかけます。
「葉っぱの色が変わってる」「葉っぱがついていないところもある!」と違うところを発見して口々に声に出すこどもたち。夏から秋へ、時間の移り変わりを感じます。

いよいよスタンプをつくるための材料探しです。こどもたちはお気に入りの形や色の葉っぱを見つけようと会場の文化創造館の周辺や、隣にある千秋公園へ散策に向かいます。

やがて、良い葉っぱをたくさん持ち帰ってきました。
さぁ、スタンプにしていきましょう。

みんなで植物の葉っぱを集めよう
いろいろな葉っぱを採取できました

こどもたちが見た自然の表情
スタンプでペタ、ペタ、ペタ

外から戻ってきたこどもたちは思い思いにスタンプ制作を始めました。色づいた葉っぱを厚紙に貼り付けて固定します。中にはとても大きな葉っぱを拾ってきて、全員で協力しながらスタンプをつくったりする姿もありました。スタンプを制作しつつ、学生たちと一緒に真っ白い紙に大木を描いていきます。全員の葉っぱが生い茂るように、前回のワークショップの時より木の幹はすこしだけ細めです。

こどもたちは拾ってきた枝を使ったり、筆で描いたり。瀬沼さんはほうきで描いていきます。ベースとなる木のできあがりが待ちきれない子が、スタンプに直接墨を塗りつけてぺたぺたと押し始めました。
細い枝を拾ってきてそれに似た枝を加えたり、スタンプで生い茂る葉っぱを無我夢中で広げたり、みんなが観察したことを表していきます。

スタンプをどんどんとつくっていきます!

1人の男の子が、「葉っぱが落ちていく様子だよ」と慎重に角度を調節してスタンプを押しながら教えてくれました。外に出て観察したことを思い出しながらスタンプを押して表現することで、こどもたちの瞳に映った自然の表情が見事に表現されていきます。

瀬沼さん、大人も影響されてスタンプづくりを手伝う手が止まりません。その日見た植物の世界が目の前に現れはじめ、ますます植物の世界に入り込んでいくような感覚を味わいます。

どこにスタンプを押そうかな?
場所を決めたら思い切ってスタンプ!

スタンプで表現された植物
新たな一面がみえてくる

みんなで押したスタンプで広がった植物の世界は、1回目のワークショップのような墨で描いたときとは異なる様子を見せていました。
最後に瀬沼さんの掛け声とともに、また木の根元から枝をつたって、てっぺんまで登ります。こどもたちは慣れた様子で登っていき、ゆっくりと降りてきます。その顔つきはやりきったぞ!という自信にあふれていました。

次はとうとう最終回。
瀬沼さんは「みんなで描いた木を今度は立ち上げてその中で植物をいけてみるよ。どんなことをするのかお楽しみに!」と呼びかけます。全員が次回はどうなるのかとわくわくした様子で解散しました。

どんどん押していこう!
できあがったたくさんの植物がスタンプされています
スタンプ完了!みんなで振り返り中

③みんなで植物の空間をつくって、みたてる!(12/25・土)
透明な器に椿の枝とつぼみをいける

描いた世界が大空間に横たわっています

クリスマス真っ只中の12月25日。いよいよワークショップ最終回です。
文化創造館スタジオの大空間の半分には、今までの2回で描かれたロール紙が敷き詰められています。こどもたちは平たい紙の間を縫って歩いて紙をのぞいています。中央には寒椿の木が置かれており、みんな興味津々です。

瀬沼さんは「今回はいけばなに挑戦してみよう。椿の枝を切って、透明な器の中にバランスを取りながら良い形を見つけてみよう」とこどもたちに語りかけます。
瀬沼さんがお手本を見せてくれました。つぼみが閉じている椿の花が咲く位置も考えながら花をいけます。

次はこどもたちの番。気に入った椿の枝葉が見つかると、はさみで次々と切り落としていきます。どうしても硬い枝は、大人の人に助けてもらいます。
机に戻ると早速いけばなをはじめました。バランスを取るのは思っているより難しいようです。いろいろと試してみて、みんな違ったバランスを見つけられたようです。

いけるための準備、お手本を見てみよう
こうかな?こうじゃないかな?と考えていけていきます

みんなでつくった植物の空間と
天からふわりと広がる空間

会場には、天井まで立ち上がった長さ10mの大きな紙で四方を囲んだ空間が登場していました。紙に描かれているのは、これまでにみんなでつくった植物の世界。いけばなを終えた順に、白い装束を身に纏ったこどもたちが、自分が先ほどいけた植物をそっと持って瀬沼さんと一緒に空間の中に入ってきます。

誰もいない空間には、白い舞台と自分がいけた植物を堪能できる時間が用意されていました。みんなで描いた植物の世界に四方が囲まれた空間と対峙します。

十分に空間を堪能して出てきたこどもたち。空間の隣にはスタジオ照明用バトンがありました。用意されたトイレットペーパーや毛糸で、バトンを使って新しい空間を創り出していきます。
紙を四方に囲まれた空間と違い、今度は開かれた場所。みんなで縦横無尽にバトンに紙や糸をひっかけて遊びます。バトンをあげてみると、ふわふわした空間ができあがりました。トイレットペーパーや毛糸を渡した空間は、隣の大きな紙で四方を囲んだ空間と異なる揺れ動く世界になりました。

異なる空間を交互に見つめながらじっと観察します。時間をかけて創り上げた世界と、一瞬にして組み立てられた世界は、こどもたちの目にどのように映ったのでしょうか。

別の世界を見立ててみよう
吊り上がったら、堪能してみる

植物を通して見えてきた特別な世界
空間が語りかけてくるものとは?

植物によって見立てられた世界は、どこまでも静かで穏やかな空間
そっと空間へ入っていきましょう

天井から吊り上げた植物の空間の中で、瞑想したり、寝転がったり、思い思いの特別な時間を過ごしたこどもたち。「とても緊張した」「もう2度と味わえない!そして、特別な時間を過ごせた」「不思議な世界だった」と語ります。植物を通して、面白いだけではない、普段は味わうことのできない空間と時間を肌で感じたのでしょう。こどもたちの表情はいきいきとしています。

瀬沼先生から最後に子どもたちへ

「私達は常日頃『人』の作った『社会』の中で生きています。今回参加してくれたみんなもいずれ大人になってそんな『社会』の中で生きていくことになります。でも、実は私達の周りに広がる世界は『社会』だけではありません。木は木の、花は花の、虫は虫の、それぞれの命を精一杯生きています。

私達はそんな世界の中に生きる『人』というひとつの動物ですが、実は他の生き物にできなくて私達にしかできないことがあります。
それは感じて想像するということ。目に見えているものから目に見えない大切なことを紡ぐちからです。
そしてその見つけた大切なことに色や形を与えることもできます。いにしえの人々が虫のさなぎや草の花から衣服を作ることができたように、何かを見て触ってみて、きれいだな、不思議だな、と思うことがスタートとなって、そのうち何かとんでもない素晴らしいことが生まれていきます。

自分の周りに広がる世界を、今日も明日も優しく見て触って、そして感じたことや想像したことは、あなただけの大切な宝物です。それをどんなふうに描いて、どんなふうに切り取ってどんなふうにいけるのか、それは自分で決めていいんです。

大きな白い紙とガラスのうつわはみんなの心の中にありますよ」

たくさんの椿のような花がこどもたちの心の中で咲き誇る未来を思い、瀬沼さんのまなざしはどこまでも柔らかく、こどもたちを見守り続けています。

空間の中でこどもたちはどんな思いを抱いたのでしょうか
植物のいろいろなかたちが詰まって広がっている世界を想像してみよう

Profile プロフィール

瀬沼 健太郎 Senuma Kentaro

1996年多摩美術大学デザイン科卒業、現在秋田公立美術大学ものづくりデザイン専攻准教授。各地のガラス工房勤務を経て2010年ガラス工房「エトノス」設立。以後ガラス造形作家及び花人として活動する傍ら、展覧会企画運営などの事業を実施。大阪芸術大学、武蔵野美術大学、女子美術大学などでガラスアートの後進育成に関わる。自然に自生する植物やそれを取り巻く場のエッセンスをガラス器と草木花を用いて表現する。

Profile プロフィール

大木 春菜 Haruna Oki

岡山県生まれ。愛知教育大学教育学研究科修士課程芸術教育専攻美術科内容学領域修了・修士(教育学)。吹きガラスの技法を用いた造形表現の研究をもとに作品制作・発表活動を行っている。佐々木雅浩氏、AYA OKI氏をはじめとする国内外のガラス作家の下で制作アシスタントを経験。主な受賞歴に国際ガラス展・金沢2019 審査員特別賞(藤田潤賞)、第8回現代ガラス展in山陽小野田 土屋審査員賞。常陸国出雲大社に作品所蔵。近年は、人が出会い交流する場所や機会について興味をもち、野点に着目した集う場所づくりを実践。また、作品展のコーディネートに取り組むなど活動の幅を広げている。

Information

植物ってどんなかたち? なぞって、えがいて、いけてみよう!

※全3回、いずれも開催終了しました。

①9月24日(土)「植物を観察、おおきくえがく!」
Labリーダーのガラス作家・瀬沼健太郎さんと大木春菜さんと一緒に植物を観察。まずは小さく描いて、木炭で大きく描きます。
②11月12日(土)「植物スタンプ!」
植物を集めてスタンプしたり、輪郭を転写して切り抜きして貼ったり、気に入った植物を描きます。
③12月25日(日)「みんなで植物の空間をつくって、みたてる!」
長さ10メートルの紙8枚に①ドローイングや②スタンプを行った大作を文化創造館の大空間で上から吊るして繋げ、植物の空間をつくり、そのなかで実際に生け花を試みます。

●対  象:小学3〜6年生
●定  員:20人
●開催場所:秋田市文化創造館(秋田市千秋明徳町3-16)

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

小野真利江

愛媛県生まれ。美大卒業後、ギャラリーにて展示企画・販売に携わる。その後愛媛の総合文化施設にて、展示・生涯学習、教育普及等さまざまな分野に触れる。2022年よりアーツセンターあきた事業チームに勤務。初の最北暮らしとなり、自然・文化を少しずつ堪能中。特技・美味しいみかんを探すこと。

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