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こたつでのんびりラジオアンテナづくり 岡本真実個展「ゲルマラジオ体操第一」イベントレポート

秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINTで、2月28日(水)まで開催した岡本真実(秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻3年)による個展「ゲルマラジオ体操第一」。2月18日(日)には、こたつを囲んでみかんを食べながらラジオアンテナづくりをするワークショップを開催しました。どんな話題に花が咲き、どんなアンテナができあがったのでしょうか。当日の様子をレポートします。

作品を通じて “他者との干渉の方法を探る実験”を行う岡本真実による個展「ゲルマラジオ体操第一」では、岡本の自作ラジオを用いた体験型インスタレーション作品のほか、《ゲルマラジオ体操》プロジェクトの実写アーカイブ映像を展示しました。

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作品撮影:草彅裕

本展示では、ラジオ放送を介して社会とやわらかなつながりを保つ「ゲルマラジオ体操」を提案しており、2月18日(日)には、こたつを囲んでみかんを食べながらラジオアンテナをつくるワークショップを開催しました。

この日は、参加者の自己紹介からスタート。出身地や仕事、秋田公立美術大学の学生は作品制作や研究について、こたつに入って和やかに語り合いました。

参加者は「ゲルマラジオ体操第一」プロジェクトをまとめた小冊子や実際に展示しているゲルマラジオの構造を見て、興味津々な様子。「(ラジオについている)この石は何?」と問いかけ、ラジオアンテナ部分に触れて音が鳴ることを実際に体感していました。

まずは展示をじっくり見て回った参加者たち。岡本の「制作で一番楽しい『ラジオアンテナづくり』を今回はみんなでチャレンジしてみよう」という呼びかけで、いよいよこたつに戻って制作が始まります。

本日行うワークショップ内容についてこたつで説明
紙に描きながら自己紹介
展示しているゲルマラジオを見ながら、岡本が制作のきっかけを説明
ワークショップで使用した道具や材料。中央の渦巻きがラジオアンテナ(正式名称:はんだ吸い取り線、見本)

今回のワークショップで参加者が作るのは、展示しているラジオ本体につないで受信することができるアンテナです。
アンテナの形は自由!参加者は下書き用紙に、渦巻き模様や等高線のようなスケッチ、ハートや星形など思い思いの形を描きます。

ラジオアンテナ線の形を決める下書き。等高線のような渦巻き模様など自由に描く

下書きが終わったら、アンテナになる「はんだ吸い取り線」を下書きの図面に沿って取り付けます。

参加者は作業をしながらも、こたつでみかんを食べ、お菓子とお茶を飲みつつ、展示のことや冬の過ごし方など、さまざまなことを話しました。会話の一部を抜粋して紹介します。

・ラジオを聞くことは外との通信手段。音楽とは違う人の声を聞けるツール
・作家岡本の選んだモチーフに対する固有のイメージ、ゴミ屋敷に関わるエピソードなど、展覧会の新たな側面を知ることができた
・一人暮らしの時、外の情報を受信する役割としてラジオがあった
・ラジオは少しポッドキャストとは違う側面もある
・一人でいても、誰かは同じラジオを聞いて別のことをしている。車で出勤していたり、家事をしていたり。人それぞれの日常にただ、存在している
・お年寄りって、テレビから情報をみているよね
・youtubeは3-4歳の子たちが情報の選別をされぬまま見ていて不安になる
・冬の過ごし方ってどうしてる?コーヒーを飲んだり、チョコレートを食べたり
・地域によってコミュニティーが重要。新屋でも学生が夜遅くまで交流できる場がつくれると良いのだけれど

ラジオの思い出、冬の過ごし方…。雑談しながらラジオアンテナづくり
休憩・おやつタイムではみかんとお茶をいただきました

さて、ラジオアンテナを接着したら完成!

それぞれが制作したラジオアンテナを展示室内のゲルマラジオ本体に接続して、実際にラジオを聞いてみました。
どきどきしながら聞いてみると…、無事に全員のアンテナから音が聞こえました。
人によって、ラジオ局の番組が異なるようです。

それぞれのアンテナを本体につなげて実験
かたつむりの形のアンテナでラジオを聞けるでしょうか?
リーゼントの形も!

今回作ったものはラジオアンテナです。ラジオ本体を作るためのキットセットや制作方法をまとめたホームページがあり、本体も自分で制作すれば家の中でも自作ラジオを聞くことができると、ワークショップ最後に岡本から説明がありました。

参加者からは「今度つくってみたい」という声が上がったほか、「岡本さんの雰囲気をまとった展覧会の中でラジオを制作できた」「展覧会にまつわるエピソードも聞けて、より展覧会とワークショップの両方を楽しめた」などと話し、和気あいあいとした雰囲気でワークショップは終了しました。

Profile 作家プロフィール

岡本真実 Okamoto Manami

2001年京都府生まれ。秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻在籍。発声・音声言語の不自由さ、コミュニケーションの齟齬に関心を持ち、パフォーマンスや作品を通じて “他者との干渉の方法”を探る。ラジオの受信音声に混じるノイズと、声の揺れ/詰まりの類似性に着目し、2021年よりラジオの自作をしている。
<主な展覧会>
2023「re: wave ビジュアルアーツ専攻課題展」(秋田)
2023「塹壕ラジオ @ オルタナス」「耳を傾ける / 耳を貸す」(秋田)
2021 個展「ある種の抵抗」(秋田)
2020 個展 「目を合わせる〜相互着用実験〜」(秋田)
インスタグラムアカウント:@manami_okamoto.work https://www.instagram.com/manami_okamoto.work?igsh=aTM0b3JreDA5azlm&utm_source=qr

Information

岡本真実 個展「ゲルマラジオ体操第一」

岡本真実 個展「ゲルマラジオ体操第一」DM(PDF)
■会期:2024年2月10日(土)〜2024年2月28日(水)
    入場無料、会期中無休
■会場:秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT
   (秋田市八橋南1-1-3 CNA秋田ケーブルテレビ社屋内)
■時間:9:00〜17:30
※最終日は15:30まで
■主催:秋田公立美術大学
■協力:CNA秋田ケーブルテレビ
■企画・制作:NPO法人アーツセンターあきた

■お問い合わせ:NPO法人アーツセンターあきた
TEL.018-888-8137  E-mail bp@artscenter-akita.jp

※2023年度秋田公立美術大学「ビヨンセレクション」採択企画

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

小野真利江

愛媛県生まれ。美大卒業後、ギャラリーにて展示企画・販売に携わる。その後愛媛の総合文化施設にて、展示・生涯学習、教育普及等さまざまな分野に触れる。2022年よりアーツセンターあきた事業チームに勤務。初の最北暮らしとなり、自然・文化を少しずつ堪能中。特技・美味しいみかんを探すこと。

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