これからも地域の人々に愛着を持って使ってほしい
秋田西中学校入り口に位置する秋田県所有の新屋横断歩道橋は、1968年に竣工され、50年以上、地元住民の通学や散策に使われてきました。老朽化に伴い、秋田地域振興局建設部が2023年度に補修・塗装塗り直しを実施することになり、それに先駆け、秋⽥公⽴美術⼤学が2022年度に歩道橋に塗装する⾊を地域の⽅々と⼀緒に考える⾊彩デザインプロジェクトに取り組みました。
プロジェクトは、秋田公立美術大学の柚木恵介准教授(ものづくりデザイン専攻)が担当しました。大きな公共物である歩道橋に対し、地域の景観に溶け込むようにと「空の色」を色彩デザインとして取り入れることを提案。地域の人々にこれからも愛着を持ってたくさん使ってもらおうと、プロジェクトには地域住民にも関わってもらうこととなりました。
<プロジェクトの概要>
・毎月1日正午ごろ、新屋地域の人々と色を選定
・期間は2022年6月から2023年5月までの1年間
・地域の話などを聞きつつ、その時間の「空の色」とカラーサンプルを照らし合わせて同じ色を探す
・地域住民12組が参加し、12色を決定
・決定した12色を、歩道橋を12分割して、専門業者が塗装する
色選びには地元の小中学生や地域振興に関わる方など、計12組27人が参加し、真っ青な晴れの日、少し灰色の雨の日や雪の日など、月ごとに違う空の色が選ばれました。
空色の歩道橋が完成!
2024年3月、新屋横断歩道橋の補修がとうとう完了しました!
3月27日、晴れ渡った空の下、プロジェクトに参加した人々が塗り替えられた新屋横断歩道橋に集まりました。
集まった人々を前に、柚木准教授は「地域に溶け込む空の色の歩道橋になりました。まちはデザインや工事に関わる人だけでなく、住んでいる人々が作り上げるもの。いろんな人に関わっていただき、素晴らしいものができました」と感謝の言葉を述べます。
その後、早速集まった人たちはピカピカの歩道橋を渡ります。自分が選んだ色が塗られた箇所を眺めて子どもたちから歓声が上がる様子も。この日の空の色と見比べる人もいました。最後の記念撮影では、参加者は歩道橋の上から笑顔で手を振っていました。
色選びに参加した小学生の一人は「(選んだ日は)夏のすごく暑くて、天気のいい日だったのを覚えてる。いろいろな青色、水色の歩道橋になってすごくきれい」と目を輝かせ、住民の一人は「新屋の入り口が明るくなっていいね。ぜひ使いたい」と笑顔を見せていました。
利用者が減ることで解体され、全国的にも数が少なくなっている歩道橋。そんな中でも新屋横断歩道橋は学校や桜の名所が近く、通学や散策などに使う人が多いことから今後も残されることとなりました。
柚木准教授は「この塗装は20年ほど持つと聞いているので、次の塗り替えの時にはまた、その時のそこに住んでいる人たちが、この歩道橋をどうしていくか考えてくれたら嬉しいですね」と語りました。
地域の方々にとって、新屋横断歩道橋は交通量の多い道路を安全に渡ることができ、鳥海山を臨んだり、桜を眺めたりできる大切な場所。これからもたくさんの人々によって使われることを願っています。
撮影:中田大介