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秋田に暮らす人々やクリエイターらが交わり展開するプロジェクト「PARK-いきるとつくるのにわ」

2022年にスタートし、秋田に暮らす人々やクリエイター、専門家が交わり多様な活動を展開するプロジェクト「PARK – いきるとつくるのにわ」。2年目を迎えた2023年度も、さまざまな活動が展開されました。

2022年にスタートし、秋田に暮らす人々やクリエイター、専門家が交わり多様な活動を展開するプロジェクト「PARK – いきるとつくるのにわ」。秋田市文化創造館を拠点とした4つのプログラム「観察する」「出会う」「育む」「残す」を通して、秋田の文化的土壌をたがやしていくことを試みることを目指しています。2024年1月~2月には2年間の活動成果を発表する展覧会を開催しました。

クリエイターによるリサーチと表現で、まちを「観察する」

つくることを日々実践し、日常の暮らしをユニークな視点で観察しつづける県内外の3組のクリエイターを招き、秋田市中心市街地を拠点としたリサーチと作品制作(プロジェクト)を行いました。

アウトクロップ(映像プロダクション・ミニシアター)「この町、シネマ。」

「見えない物語を魅せる」をスローガンに映像制作やシネマ運営を行うアウトクロップ・スタジオが、映画を語る空間を秋田市に復活させるプロジェクト「この町、シネマ。」を実施。秋田に暮らす様々な人たちの声や「この町」に残る記憶を辿りながら、「この町」と「映画」にまつわる新たなドキュメンタリー映像『おかえり有楽町』を制作、発表しました。展示期間中は会場内で上映会を行ったほか、AL☆VEシアターでの上映後には国際交流基金映像事業部の玄田悠大さんをお招きしてトークを行いました。

『おかえり有楽町』の上映とトークイベントを、AL☆VEシアターで開催

身体0ベース運用法/安藤隆一郎山のホームセンター木の岐編

「ものづくりの視点」から「もの」との関わりによって生まれる身体の感覚、運動機能を「0」から見直す安藤隆一郎のプロジェクト。年に数回秋田を訪問し、自ら森に入って道具作りの素材集めをしながら、自然物を用いた民具や農具などをリサーチ。二股以上に分かれた木の枝で作られる「木の岐(きのまた)」と呼ばれる民具をヒントに新しい道具を製作し、自然との関わり方を提示しました。展示期間中には市民が木の岐をつくるワークショップを開催し、最終的に安藤オリジナルの焼印を施す「仕上げの会」を実施しました。

秋田市内にある「健康の森」(通称:清太郎さんの森)を、所有者の佐藤清太郎さんの案内でリサーチ

わいないきょうこデザイナー、やぶ前)「かならずやおいしい ノ 定点観測 Yes! It will fu○○ing delicious !! Our way of observation

美郷町を拠点に活動するデザイナーのわいないが、世界の多様な食文化と秋田の風土が生み出す先人の知恵を掛け合わせながら、雪国の食材貯蔵技術である「雪室」を制作。雪室の構造や気象、食材などの視点で勉強会を重ね、千秋公園内に実際に設置し、保存食の制作を市民と共に試行しました。展覧会最終週にはその雪室を開封し、多くの方々と熟成された食材を味わいました。

雪室で貯蔵した食材を地域の人たちと味わう

新しい知識や技術と出会うトーク&ワークショップ「出会う」

身近な食や農業、生活、表現をテーマに、頭と身体の両方を使いながら新しい知識や技術と出会うトークやワークショップ(全5回)を開催しました。

PARK的・五感で味わう 秋田の秋 -視・聴・嗅(きゅう)・味・触 -

「味わうこと」とは何かをひもとくために、様々な試み(パッケージ(視)/朗読(聴)/醤油(嗅)/温度(味)/器(触))を通して自らの“センサー”を試し、皆さんと「おいしい」を探りました。
日時|2023年9月18日(月・祝) 14:00-16:00
登壇者|手塚美希(紫波町図書館 主任司書)、わいないきょうこ(デザイナー、やぶ前)

ほったらかしを活かす技術:放置された柿の活用法から学ぶ

畑がない農家として活動する柿木崇誌さんをゲストに迎え、本館館長の藤浩志さんと共に、放置された物の利活用を考えるトークイベントを開催。イベント後は提供頂いた市内の放置柿を干し柿へと活用するワークショップを実施し、手を動かしながら“活用する”ことへの理解を深める機会となりました。
日時|2023年10月8日(日) 14:00-16:00
登壇者|柿木崇誌(畑がない農家)、藤浩志(美術家、秋田市文化創造館館長(当時))

「この町、シネマ。」映画サミット

全国で映画館が減って行く中、創業・再建し地域に根付いた運営を行う東北のミニシアター3組が集まり、それぞれのシアターの取り組み紹介や現代における映画館のあり方について観客も交えたディスカッションを行いました。
日時|2023年10月22日(日) 14:00-16:30
登壇者|シネマ・デ・アエル(岩手県宮古市)、御成座(秋田県大館市)、アウトクロップ

山のホームセンター入門編〜素材採集の土産〜

素材から色やテクスチャーなどを作り出すデザイナーの吉田勝信さん、「観察する」クリエイターの安藤隆一郎さん(身体0ベース運用法)の2人が素材採集することの面白さや、採集する際に得られる副産物とは何かを探るトークを行いました。
日時|2023年10月28日(土) 14:00-16:00
登壇者|𠮷田勝信(デザイナー)、安藤隆一郎(染色作家) 

生業を起こす、表現を編む

特色ある仕事を創造し、暮らしを立て、活動を継続している、山下陽光氏(途中でやめる)、蛇谷りえ氏(うかぶLLC)、佐々木大地氏(DPRTMENT SKATESHOP PARK)によるトークと交流会を開催。多様な仕事の作り方・始め方に触れる機会となりました。
日時|2024年1月27日(土)14:00-16:30
登壇者|山下陽光(途中でやめる)、蛇谷りえ(うかぶLLC)、佐々木大地(DPRTMENT SKATESHOP PARK) 、服部浩之(キュレーター)

秋田で暮らす人々が手を動かしつくることを実践する場「育む」

野菜栽培や観察に取り組みながら、食と結びつく様々なテーマについて学び合います。農家「ガイアガーデン」さんを講師にお迎えし、土づくりから野菜の栽培観察、加工調理を行いました。また家庭で捨てられてしまう野菜の皮を使用した草木染め体験やエリアなかいちで開催される「ナヵナヵ市」に出店しました。

秋田市文化創造館の屋外を使い、野菜の栽培を行った

表現や活動を未来に継承するためのアーカイブ「残す」

「観察する」「出会う」「育む」の取り組みを、クリエイターやイベントゲスト、プロジェクトメンバー、秋田市文化創造館を訪れた人など様々な人たちの目線で記録し、文化創造館内やウェブサイトにて公開します。2024年1月〜2月には、2年間の活動成果を発表する展覧会を開催しました。

PARK-いきるとつくるのにわ 展覧会「交わるにわ、創造するキッチン」

会期|2024 年1月20日(土)〜2月4日(日)
会場|秋田市文化創造館ほか

さまざまな人が出会い・交錯するまちのような風景を醸し出した展覧会場

各プロジェクトのレポート
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Information

文化創造プロジェクト 「PARK-いきるとつくるのにわ/Public, Arts & Research Kitchen」

開催期間:2023年7月〜3月(2024年度も継続開催)
開催場所:秋田市文化創造館ほか
主催:秋田市
企画・制作:NPO法人アーツセンターあきた(芦立さやか、藤本悠里子、勝谷俊樹)、山本美里
令和5年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業

※本事業は、秋田市「文化創造プロジェクト」の一環として実施しています。秋田市では「文化創造プロジェクト」を通して、市民によるさまざまな活動や、人と人とのつながりを創出するなど、文化を切り口に将来のまちづくりを見据えたソフト事業やネットワークづくりに取り組んでいます。

https://akitacc.jp/event-project/park/
https://akitacc.jp/event-project/park2023/

Writer この記事を書いた人

秋田市文化創造館

藤本悠里子

1994年京都市生まれ。京都造形芸術大学、秋田公立美術大学大学院にてキュレーション、アートマネジメントを学び、現代美術展等の企画を行う。2019年より現職、秋田市文化創造館開館準備/事業運営に関わる。企画制作した事業に「PARK-いきるとつくるのにわ」(秋田市、2022年)、「200年をたがやす」美術分野 (秋田市、2021年)、ALLNIGHT HAPS 2019「PORTABILITY」(京都、2019年)など。

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