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光を食べて生き延びる 佐藤芽維個展「me:all*meal」開催

秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINTで8月17日(土)から、秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻4年の佐藤芽維による個展「me:all*meal」を開催します。光を取り込んだ布と自身の身体の互換性について表現と解明を試みたインスタレーションを展示します。

“縫う” とともに生きる

“縫う” 行為と自身の身体への影響について研究し、「“縫う”とともに生きるということ」を衣装やインスタレーション制作、パフォーマンスを通じて実践する佐藤芽維による個展「me:all*meal」が8月17日(土)から、秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINTで始まります。

佐藤はこれまで、自身にとって縫うことは親族との思い出に浸り、孤独による不安から逃れることができる手段と考えて、研究・制作を続けてきました。

インスタレーション作品とパフォーマンス《Cloth ecology》では、縫う行為に対する敬意から、布の生命体を形成し、維持しようと試みました。
床に散らばる布を一枚ずつ採取し、生命の核となる部位に縫い付ける。採取した布を縫い合わせることで新しい生命が形成し、布の生命体が平穏に維持されていくと考えました。

大地の芸術祭の里で2023年冬に開催された農舞台企画展「里山雪の遊園地 ~白い雪原に一瞬だけ遊園地が現れる⁉~」への出展作品《雪解け》。
豪雪地の新潟県中越地方で生産され続けていた越後上布と、雪ざらしという技法から着想を得て、雪解け後のような水の流れを表現しました。
春が近づき、雪が溶けて重みが増す時期になるにつれ、布も重みが増していく。季節が移り変わる時間の経過を連想させます。

雪は特別何かを成しているわけではない。
寧ろ、厄介と考える人が多いだろう。
しかし、溶けた後は何事もなかったように
土の水分へとかえり、川に化け跡形もなく消える。
それは春が迎えた時、
“ はて。雪はあったのか ”
“ 悴むほど、冬は寒かったのか ” すら忘れてしまうほどに。

《芽生え》2022 衣装 可変 布(合成皮革、コーデュロイ地)・糸・ビーズ

2022年には、秋田公立美術大学ファッションショー「2022 akibi fashion show『深淵』」を主催しました。
自身の出展作品《芽生え》は、深淵というテーマに潜む一筋の光を連想させるようなコントラストを軸に制作。それまで佐藤が好んで使用していた軽い素材ではなく皮という新しい素材に挑戦し、モデルの柔らかな表情に対して力強い鎧をまとったような衣装を作り上げました。

深くて、暗くて、静かな内側。
対して、外側から中心に向い、一筋の光が軌道に乗り道筋となる。
そこで初めて、内側は深淵だと悟り、細く強い光を辿っていく。
外側に辿り着いた時、深淵はひとまとまりになり吸収され、自身の一部となった。

刹那の光を食べている

8月17日(土)から秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINTで始まる本展「me:all*meal」。タイトルは、me allとmeal(食事)を掛けた造語です。
「:(コロン)」はイコール、「*(アスタリスク)」は注釈を表す時に使われる記号で、自分自身を構成している食事という意味が込められています。

佐藤は、生存の大部分となる普段の食事のほかに、見えない物体と事象から精神を整えるなにかが供給されていると考えてきました。

例えば、佐藤の普段の行動として刺激を極端に避けたり、諦めたりすることがある一方で、光を浴びて安堵し、人からの温かい視線のエネルギーが動力になるといいます。
佐藤はこのエネルギーを光と捉え、光からエネルギーを得ることを“光を食べている”と表現します。

本展では、光を可視化するためにサイアノタイプ1を活用し、光を取り込んだ布と自身の身体の互換性について表現と解明を試みたインスタレーションのほか、制作過程を記録した映像作品を展示。自身の肉体を布に置き換えながら、刹那の光のエネルギーで生き延びようとする受動的な精神性を展示空間に起こしていきます。

  1. サイアノタイプ(別名:⻘写真)とは 19 世紀に発明された写真の印刷方法。日光に反応して、⻘く発色する。

2024年度ビヨンセレクション採択企画

本展は、2024年度秋田公立美術大学ビヨンセレクション採択企画です。
ビヨンセレクションとは、2021年よりスタートした秋田公立美術大学の学内公募事業です。個展・グループ展などのBIYONG POINTでの展覧会を通じて、意欲的な学生による日頃の研究・創作の成果を発表します。展示期間中にレビューを受ける機会を設け、作品の撮影記録とともに評論を公開し、学生らの将来の作家活動を視野に入れた支援を行っています。

2024年度は2024年8月〜2025年1月まで、4人の学生が展示を行います。

▶︎これまでのビヨンセレクション」採択企画関連記事

Profile 作家プロフィール

 

佐藤芽維 Sato Mei

2002年秋田県生まれ。秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻在籍。
裁縫を教わった親族との記憶を遡りながら、 縫うことは自身が安心して生きるために必要なことと捉え、身体に直結する衣服のほか、 縫う対象の布の創作を試行している。

<主な展覧会>
2024年1月 秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻課題展「Breath in Blue」参加(秋田)
2023年1月 大地の芸術祭の里 農舞台企画展「里山雪の遊園地 ~白い雪原に一瞬だけ遊園地が現れる⁉~」参加(新潟)
2022年10月 2022akibi fashion show「深淵」主催(秋田)

Information

佐藤芽維個展「me:all*meal」

佐藤芽維 個展「me:all*meal」DM(PDF)
■会期:2024年8月17日(土)〜2024年9月8日(日)
    入場無料、会期中無休
■在廊日:8月17日(土)、18日(日)、24日(土)、25日(日)、9/7(土)、9/8(日)のいずれも午後
■会場:秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT
   (秋田市八橋南1-1-3 CNA秋田ケーブルテレビ社屋内)
■時間:9:00〜17:30
■主催:秋田公立美術大学
■協力:CNA秋田ケーブルテレビ
■企画・制作:NPO法人アーツセンターあきた

■お問い合わせ:NPO法人アーツセンターあきた
TEL.018-888-8137  E-mail bp@artscenter-akita.jp

※2024年度秋田公立美術大学「ビヨンセレクション」採択企画

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