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こちらと、あちらの風 藤原櫻和子個展「風の流るるかたわらに」開催

秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINTで11月8日(土)から、秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科修士課程2年の藤原櫻和子による個展「風の流るるかたわらに」を開催します。藤原が一貫して表現している風通りのよい形をした彫刻作品や、主に土を素材としたドローイング作品を展示します。

秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科修士課程2年に在籍し、主に土を用いて制作を行う藤原櫻和子による個展「風の流るるかたわらに」が11月8日(土)から、秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINTで始まります。

入って、ぐるりと廻り、出ていく

藤原は自身の作品について、一貫して扱っているモチーフは風であり、風通りのよい形を常に考えて制作していると語ります。
藤原の作品に共通しているのは、焼成された土がかたちづくる大きく空いた深い穴。その輪郭はひらひらとたなびく布を思わせるような曲線で縁取られています。風の通る穴なのだといいます。

《ひとつ見つめ、風めぐる》

卒業制作で制作した《地から生まれ、風になる》は、藤原が「地球」という存在について考えていた時期に制作された作品。この作品について、「風が『入って、ぐるりと廻り、出ていく』ことを重要視した」と話す藤原。

「地球の素材を用いるということや、大地が呼吸をしていて、その息づかいが風となっているのだろうか、といったことについて考えていました」

「大地をなでるように風が流れる。
そのとき、風にかたちを与えるように大地がなびく。 土が風になる。

地球が呼吸をしているかのように膨らんでは、しぼみ、膨らんでは、しぼむ。その繰り返される動きによって強弱のある風が生まれる。

(中略)

もしかしたらその人が生まれる前、遥か昔の人が聞いていた風の音かもしれない。
風というものは、国を渡り、そして時代を越えて流れ続けている。
生き物にそして地球になじむように、今も昔も、この先も流れ続けていく。

《地から生まれ、風になる。》に寄せた言葉

《地から生まれ、風になる。》

こちらの風、あちらの風

森や地球といった人間の周囲にある大きな存在と作品がどのように関わることができるかについて考えて作ることが多かったという藤原。しかし、大学院への進学後、特に2年生になってからは、自分の故郷や家族といった、より身近なものについて考える機会が増えたといいます。

ここでも風というモチーフ、そして大きく空いた穴という形態は共通して現れます。
自分の生まれ育った場所へ、この秋田の地から風を吹かせる、なにかを届けるという感覚を持って制作した《あの日、風が流れる》。この作品について藤原は以下のように語ります。

「ラッパの形がずっと脳裏に浮かんでいました。ここから向こうに吹く、というのをずっとイメージしていたような気がします」

《あの日、風が流れる》

この場所と、あの場所。
こちらの風と、あちらの風。

漂い、流れ、混ざり、
やがてまたどこかへ流れていく。

展覧会「風の流るるかたわらに」によせた言葉

展覧会の概要文に藤原が記した「こちらの風と、あちらの風」という言葉。藤原はこれが今回の展覧会において重要な要素だと語ります。《あの日、風が流れる》が今いる秋田の地から、生まれ育った土地へ風を吹かせるというイメージを持ってつくられたように、今回の展覧会ではどの作品にも「異なった場所であっても巡っていくひとつの同じ風」を見出すことができます。

それは郵便物のように一本の線を描いて直接届けられるようなものではなく、循環する大気のように緩やかで遅い時間の流れの中で廻る風です。

土について考える

藤原はこれまで土を用いて風通りのよい形をつくってきました。土は形に気持ちが反映されやすいと語る一方、「素材である土について考えることが少なくなってきた」と話します。

「土は、私と向こう側の中間地点にある存在。向こうにいくための手助けをしてくれる存在なので、土というものに深く入り込めていないような気がします」

そうした中、帰省した折に畑仕事をする機会があったといいます。畑を耕し、苗を植えたり、できた野菜やハーブを食べたりすることで、見えてきたのは、藤原にとってこれまでは意識していなかった土とひととのつながりの新たな側面でした。「違う形で土と関われば、それについて知ることができるのだろうか」という問いを抱いた藤原は、仙北市角館に滞在しながら、布に土などを用いて描いたドローイング作品を制作しました。藤原がこれまで用いてきた土という素材との、新しい関わり方の試みです。

土を用いたドローイングを行う藤原

共通する風というモチーフ、土という媒体の上でも緩やかに変化し続ける藤原の視点。本展では、その現在地点を示す作品を展示します。

2025年度ビヨンセレクション採択企画

本展は2025年度ビヨンセレクション採択企画です。
ビヨンセレクションとは、2021年よりスタートした秋田公立美術大学の学内公募事業です。個展・グループ展などのBIYONG POINTでの展覧会を通じて、意欲的な学生による日頃の研究・創作の成果を発表します。展示期間中にレビューを受ける機会を設け、作品の撮影記録とともに評論を公開し、学生らの将来の作家活動を視野に入れた支援を行っています。

Profile 作家プロフィール

秋田公立美術大学大学院 複合芸術研究科 2年

藤原櫻和子 Sawako Fujiwara

兵庫県生まれ。秋田公立美術大学ものづくりデザイン専攻 卒業。秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科 在籍。 主に土を用いた制作を行っています。生きることとつくることが混ざり合う生活の中で、出会うものごとや人たちがいます。その関係性のあいだに細い風をすっと通し、縁をながく繋いでいけたらなと思う今日この頃です。

Information

藤原櫻和子個展「風の流るるかたわらに」開催

▼風の流るるかたわらに
■会期:2025年11月8日(土)~12月7日(日)
    入場無料、会期中無休
■会場:秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT
   (秋田市八橋南1-1-3 CNA秋田ケーブルテレビ社屋内)
■時間:9:00〜17:30
■主催:秋田公立美術大学
■協力:CNA秋田ケーブルテレビ
■企画・制作:NPO法人アーツセンターあきた
■お問い合わせ:NPO法人アーツセンターあきた
TEL.018-888-8137  E-mail bp@artscenter-akita.jp

※2025年度秋田公立美術大学「ビヨンセレクション」採択企画

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