秋田で「つくる場所」を立ち上げ、運営してきた2人を迎えた今回のカタルバー。
五城目町のギャラリー「ものかたり」を主宰する小熊隆博さん、そしてオルタナティブスペース「オルタナス」を運営する中須賀愛美さん。それぞれ異なる背景と方法で場をひらいてきた二人の実践からは、「場所」が単なる拠点にとどまらず、人や出来事をつなぎ、地域の中でゆるやかな循環を生み出していくプロセスが浮かび上がりました。つくることと暮らし、個人と地域。そのあいだに立ち上がる「余白」の可能性をめぐる対話となりました。
ものかたりとオルタナス、二通りのつくる場所とつくる人
藤
今日は、秋田につくる場所を設けて、そこでつくる人たちの活動を支えてきているお二人をゲストに迎えて、つくることや地域のことをどういうふうに受け継ぎ、どう循環していくのかをお話できればいいなと思っています。 よろしくお願いします。
小熊
僕は秋田県の五城目町出身で、以前は香川県の直島という島暮らしを7年していました。教育企業のベネッセが実施しているアートプロジェクトの関係で7年ほどお仕事をさせてもらって、その後藤先生が秋田に来るのとほぼ同じ頃にUターンしました。
僕は地元の五城目町で空き家を活用したギャラリー「ものかたり」をはじめて、その当時に秋田公立美術大学が4年制になって、藤先生や新しく着任された先生たちと学生が五城目町を面白がり、度々訪問してくださるという流れが割とすぐできました。まさにこういった方々が五城目町に来る流れをつくりたいなと思っていたんです。というのも、僕が働いてた直島は漁村なんですけど、いわゆる観光地でもないところに、今では年間に10万人以上の方がお越しになるような場になっていて、その大事な拠点になっていたのは、歴史ある集落の中に残ったものをアート作品に変えていくっていうプロジェクトと呼ばれている現場であって、それが地域の中にできることで、こんなに物事が動いていくことがあるんだっていうのを目の当たりにしました。だからこそ、Uターンするにあたっては、いわゆる観光地ではないし、わかりやすく外から人が訪れるような資源がない街に何か人が来やすい場をつくるにはどうしたらよいかを考えて、ギャラリーを始めてみようと思ったんですね。それがはからずもというか、秋田公立美大といきなり繋がりができて面白い方が来るっていう。
藤
本当にタイミングが良かったんだよね。僕は、秋田県内をいろいろフィールドワークしようというときに、やっぱり拠点がある、人がいるということが重要だと思っていて、だから小熊さんがいる五城目に行こうとなったんだと思います。
小熊
直島にいるときに、高松で開催されていたかえっこバザールに子どもを連れていったこともあって。直島では家プロジェクトを担当して、家守みたいな仕事をしていました。入社した翌年の2010年に瀬戸内国際芸術祭がはじまって、直島の隣の豊島に、藤浩志なるアーティストがプロジェクトをやっているとか、かえっこという仕組みをつくったのが藤さんだとか耳にしていて。自分がギャラリーを始めるからには、いずれ藤さんみたいなアーティストにも来てもらえるような場を作ろうみたいな気持ちとしてはあったかなと思いますね。そしたら本当に学生を連れて来てくれた。
藤
学生が来てくれて、活動を一緒につくっていく現場が五城目にできたというのが重要だったという気がしますね。
小熊
五城目でフィールドワークをして、その成果発表をものかたりを使って、展覧会として行いましたよね。地域の方々に学生がインタビューして、印象的なワードを付箋に印刷して、それをギャラリーの壁に貼りまくるという。
藤
五城目のほとんど誰も行かないようなエリアに、2人1組の学生を連れて行って、3時間後に車で迎えに行くというババヘラ方式のフィールドワーク。その間学生はカメラや携帯を使ってはいけなくて、全部メモするという課題にしたんですよ。人がいないので、歩いて家々をまわって、「すいません、お話を聞かせてください」という感じでフィールドワークすると、結構面白い人たちにいっぱい出会っていった。
小熊
普段では聞けないような話が聞き出せていましたよね。例えば、クマのフンを道端で見つけた後に、たまたま出会った高齢の方が、実はそのクマは自分が仕留めて食べたんだという話をしたりとか。
藤
面白いですね。五城目は独特の人のネットワークがあって、地域おこし協力隊も入って、まちが動き出していた時期だったんではないかな。
小熊
僕も地域おこし協力隊として1年半ぐらい活動をしていました。その中で、今仲間になっている教育や起業など美術以外の分野でユニークな活動をしている方々が五城目に集まって、新しい活動を始めていた時期だったんです。
藤
なかなか場の運営は大変だと思いますが、いかがですか。
小熊
僕の場合は五城目でギャラリーを始めながら地域おこし協力隊をしたり、美大との繋がりができて、五城目を拠点に秋田県内の地域のリサーチを一緒にする機会が生まれたり、この文化創造館がオープンするプレ企画にも関わらせていただいたり。五城目だけでギャラリーの場を動かしていくなりわいだけではなくて、そこを拠点にネットワークがすごく広がっていったので、場を動かす難しさみたいなことは5~6年ほどはあまり意識していなかったです。そこからフェーズが変わっていったのは、コロナになって動きが止まってしまったみたいな時期にオンラインを組み合わせながら出来た活動もあれば、やっぱりリアルに物事を動かしにくい中で、この場をどれ今後どういう舵取りをするかっていうのを迫られた時期ではあったかなと思います。

中須賀
オルタナスというオルタナティブスペースを運営してます。 立ち上げは、私が秋田公立美術大学大学院を修了した2020年です。卒業生たちが、卒業後に制作する場所がないという話をしていたこともあって、ちょっと集まった有志でスペースを立ち上げてみることになったのがきっかけです。
藤さんは大学院時代の先生でもありますが、物件を紹介していただいたという縁もあります。ある日藤さんから、「ちょっと空き家があるんだけど、見に行ってみない」という誘いをいただいて、私も卒業したけれどやることがなく、コロナでバイトも休みで暇だというところだったので、その当時大学院に在籍していたメンバー4人と一緒に内見をして、「この場所を活用できたら面白いかもね」みたいな話をしていたら、藤さんから「場所を持ってみたら」とそそのかされて。
実際問題、場所を持つと家賃を払わないといけないし、光熱費もかかる。当時の立ち上げメンバーは現役の学生で、卒業してるのが私しかいなかったところがあったので、私が借主として契約して、他のメンバーと一緒に各々やりたい希望の企画を持ち寄る形で、初年度は運営していました。
小熊さんはギャラリーを始めたのと、ネットワークが広がるのが同時だったとおっしゃっていましたけど、オルタナスの場合は、一緒にやっていくメンバーが学生だったので、2年間ほどで卒業しちゃって。 もちろん秋田に残る子もいるんですけど、県外に就職する流れもあったので、寂しさもありつつ、逆にそれを面白さとして捉えてみるかと思い直して、初期メンバーが卒業後には新しい大学院生に関わってもらってという形でつづけています。それでも短いスパンでいろんな企画を運営していくのは疲れるので、今はペースを落として、貸館の機能も増やして、ギャラリーとして場所を使って展示したいという学生には貸し出しています。
最近の活動として一つ面白いのは、秋田市在住のコレクター・油谷満夫さんが収集した活版印刷機をお借りして、「カッパンケン」という活動を立ち上げて、その活動場所としてオルタナスを使っていることです。たまにみんなで集まって活字を拾ったり、清掃したりする活動をしていて、そういった活動を通じて今まで繋がりが持てなかったイベントにお声掛けいただけるようになったりして、今まで繋がれていなかった人たちとオルタナスが接点を持ちはじめているところです。スペースをもっていると、その時々のフェーズで、出会える人とか集まってきたものとかが接点になって、オルタナスに色をつけているという感覚があります。
藤
元々縁もゆかりもなく、大学院でたまたま秋田に来て。卒業後、本当にどうするのかなって、気になっていたんだよね。「どうするの?」とあまり強く言うのもあれだし。
中須賀
心配していただいたんですね。
藤
スペースをもって、家賃払わなくてはならないけど大丈夫かな、と思いながら見守っていたら、未だにちゃんと続いている。
中須賀
資金面で言うと、立ち上げ時期は本当に苦しくて、何のノウハウもないし、コネクションもないし、とにかくバイトで稼いだお金がそのまま家賃に消えるみたいな時期が2年ぐらいはありました。ちょうど2020年にオルタナスを立ち上げて、2021年に文化創造館ができて。私はそれまで学生時代からつづけていた居酒屋さんでバイトをしていたんですけど、自分の持っているものを活かせた方がいいかなと思ってNPO法人アーツセンターあきたの求人に応募しました。その時は、文化創造館に配属されるとは全く思っていなかった。
蓋を開けてみたら、オープニングスタッフとして文化創造館で働くことになって。自分の知見を生かしながら働けそうというのはあったんですけど、一方で場所がないって言ってた学生たちにとっては、文化創造館ができると、オルタナスのような場所はいらないかなと思ったり。それでも、場所があると人は集まってくるし、面白いなと思う部分もあって、今の今まで続いてきてるんですよね。 それをこれからも大事にしつつ、 自分のペースでやるのがいいかなっていうのを最近は思ってますね。
藤
文化創造館は公共施設の一つとしてあるわけだけども、やっぱり民間で、または個人でもっているスペースとは意味が全然違う。そういう場所が地域にあるかどうか、しかもオルタナスという意味不明の、実態がよくわからない場所があることは、面白さというか、魅力だよね。だって、変な話だけど可能性だけはすごいわけじゃない。

開いて、つながる
中須賀
オルタナスって、どういうふうに見えてるんですかね。
小熊
たしかに藤先生おっしゃったように、公共の施設で、貸館とかイベントスペースとか役割が決められている箱は、世の中にいくつもあって、社会の中に埋め込まれている。一方で、特に役割を定義されてない場所は実はあんまりなくって。うちも、五城目に場所をつくってからは、余白をすごく意識しています。特に五城目のような地域課題が顕在化していて、何とかせねばというムードが強い場所になると、新しい場を始めると、みんなが集いやすく、賑わいづくりに貢献するとか、経済効果とか、何か役割が期待されることがあると思うんですけど、誰もが自分で好きに考えたり、行動を起こしていい場所とか、行動しなくてもいい場所とか、そういう場所があることで社会って成り立ってる面があると思うんですよね。 みんなと入れる場所がある一方で、1人になれる場所があるっていう。なんか両方が必要だとしたら、オルタナスは後者の方の役割でもあってもいいんじゃないかな。
中須賀
嬉しいです。私自身、オルタナスがどういう場所かというのはよくわかっていなくて。お二人のイメージを伺って、緩やかに集まれる場所で、何かが表現できて試作できる場所として捉えていこうと思います。
立ち上げメンバーも全国に散らばっていながらも、秋田に来るときには必ず立ち寄ってくれるんです。それが嬉しいし、メンバーだけじゃなくて、オルタナスに来てくれた人がまた秋田に来るときにも必ず連絡くれる人がいたり、秋田に行くならオルタナスがあると紹介してくれる人もいるんですよね。
小熊
うちにもう一度来てくださった広島のキュレーターさん。オルタナスからの紹介で、ものかたりに来ていただきましたよね。
中須賀
そうです。オルタナスにアーティスト・イン・レジデンスで滞在していた広島からのゲストをお連れしました。秋田のスペースについて知りたいというご要望があったので、それならものかたりに連れていこうということで。
小熊
そういうコミュニティが、県内でも緩やかに広がっていますよね。

中須賀
最近のスタンスとしては、私にとって無理のない範囲で緩やかに運営していこうというところだったんですけれど、ゲストが外部から来るとなると、もっと開けといた方がいいのかなと思うこともあります。今はイベントや展示があるときだけ開けていて、普段は閉めているんですけど。
小熊
ものかたりは、去年までは週4営業していましたが、少し短縮して週末メインで営業しています。
中須賀
週末に行けば空いてるというと、行きやすいですよね。
藤
その場所をどう開けるかというのは難しい問題で、いつも閉まってる状態なのか、何曜日の何時から何時は開いているとするのか、イベントのときだけ開くのか、全部予約制にするのか。それは、それぞれのやり方でもいいような気がするんだよね。
五城目に行って、小熊さんのところが開いていると安心して、思わず入っていって。人を連れていって、場所を紹介したいっていうのがあるし、展示を見せたいというよりも、その場所そのものを見せたいという感覚がありますよね。
オルタナスも場所そのものを見せるという意味だと、何か展示でなくともデフォルトをつくっておいて外から見せることができると良いかもしれないよね。オルタナスの由来にもなっている八百屋だった空間とか。
オルタナスの前にはバス停があるから、バスに乗り降りする人のための何かみたいなことも考えられる。

小熊
例えば、ものかたりは、ずっと絵本屋さんということにして、怪しくはないっていう形をとっているんですけど。というのは、親子連れとかおじいちゃんおばあちゃんと一緒に絵本を買いに来てくださる方がいて、それはやっぱり開けておくことを義務化にしている面があります。街中だと、お店の明かりがついていることだけでご近所にありがたいと言われることもありますし、さっき藤先生おっしゃったように、僕らにとってはある意味プレゼンの場所でもあるので、少し無理してもやっているっていうのはあると思います。
中須賀
ちょっと検討します。
小熊
バスを待ってる方に向けた物販でも居場所提供でも、ちょっとしたものがあれば、それは何か意味がある場になる。
中須賀
実は長年疑問をもっていたことが最近解決したんです。オルタナスの前のバス停で、私が帰宅する時間帯に、煙草を吸って、吸い殻を捨てていく人がいるんです。この間ちょうど帰宅した時にその人を目撃して、観察していたら、オルタナスの前で煙草を吸って、バスが来たら吸い殻を捨ててバスに乗っていったんですよね。その人にとって、オルタナスの前は、バスを待ちながら、ちょっと一服する場所になっているんだと思って。
その場所に灯りがついていたら、その人の行動も代わるかもしれないですね。 地域の中にスペースがあるということを考えてみると、何かのアプローチ次第で、影響を生み出すことができるかもしれない。
藤
例えばバス停って、日々の暮らしのなかで使っている場所じゃない。その近くに、季節の変化や、何らかの変化を感じるような空間があるだけでも、すごく魅力的だなと思うよね。さっき小熊さんがいったように、灯りがついているだけでも、全然いい気がする。
ちょっと規模感が違う話になるけど、十和田市現代美術館も、通りに対して灯りが演出されている。日が落ちてくると、夜の風景が演出されるようになっていて、そこを散歩したり、ジョギングしたり、通りを使う人がすごく増えたんだよね。そういうちょっとした変化が風景の一部になっていくと地域にとってはねすごくいいんだろうなっていう気はするね。

地域にとって「つくる場所」があること
中須賀
藤さんの話の中で「地域にとって」という言葉が出てきたり、小熊さんの話の中でも地域課題という言葉が出てきたんですけど、「地域のためにスペースがあること」ってどのぐらい意識されてますか。 例えば、ものかたりが地域の課題解決や、地域に対して何らかの意味をもたらしたいと思ってることがありますか。
小熊
さっき課題というふうに表現をしたんですけど、ただ五城目で少なくとも近しい中では課題を課題と表現しないみたいな捉え方をしているところがあります。例えば学生がフィールドワークに来て、五城目の地域課題を調査して、それに対して何かリアクションして帰るみたいな機会があったときに、最後に課題解決に向けた提案を発表をしていくことがある。それに対して、一つは課題っていうのは基本的に複合的で複雑だったりするので、学生がちょっといて考えただけで、解決できることはないと思っています。それを頑張って言語化してプレゼンテーションするという大変さもあるし、そこで表現しきれないことがもしあるとすれば、例えば資料で発表するのではなくて、ギャラリースペースを使って言語ではない表現手段で発表してみたらという無茶ぶりな提案をすることもあります。
もう一つは、僕たちにすると、提案される課題に対しての解決策はすごく参考になるアイデアもあるんですけど、じゃあ実践をするのは誰かというオーナーシップの話があると思うんですよね。 本来は言いだしっぺがやるべきことなんじゃないかとか、そういうこと考えたら、その場で、その日、学生が表現しきれないものも含めて、我々に置いてってくれた方が、なんか面白かったなと思えることもあるんじゃないかと思って。 今五城目町で活動する中で、少なくともものかたりはそういう役割ぐらいは、果たせるのかなと思っています。
中須賀
いいですね。言語に直結させないで表現するという行為。
小熊
一方で、いわゆるアーティストが直球の展覧会をしていただくとか、アーティストが作品をつくって発表する場としてもクオリティがしっかり出せるようなものも、両方できるようにいつも構えてはいますけどね。

地域を醸す新しい試み
中須賀
発酵パークについてもお話しを伺いたいんですけど。
小熊
発酵パークは2023年に地域の会社6社でつくった会社です。直接のきっかけは、朝市通りの入口にある酒蔵さんの古くなった蔵をどうしようかという仲間内での雑談から始まったことで、蔵を活用するだけではなく、地域の中での資源の循環をこれからどう生み出していくかを考え、包括的に進めていくための主体として構想しました。五城目町では大きなグランドデザインがなく、新しい人と地域の人たちが出会い、新しいことが生まれるという連鎖が、まさに発酵するかのうようにこの10年の間に動いて生まれてきている手応えあって。その街の中で生まれている発酵をより促していくための役割を、我々がリードしていくまちづくり会社という立ち位置ではなく、発酵促す菌のような、麹菌のようなささやかな役割を果たせるといいなということで、6社それぞれの会社の強みを生かしながら、第1弾として朝市エリアの中に空き家を活用した宿「市とコージ」を2年半前にオープンしました。
中須賀
宿はどういう方が利用されていますか。
小熊
ものかたりのつながりで作家の方やクリエイティブ関係の方がいらっしゃることもありますし、酒蔵経由でお仕事の方が泊まられたりとか、朝市観光を楽しみに来た方が泊まられたりとか。宿ができたことで、滞在時間がシンプルに伸びて、五城目が面白いなって思ってくださってる方が増えているのは大きいかなとは思います。
今までも五城目が気になって、いろんな方面から来てくださった方が、1泊だけではなくて2泊ぐらい滞在されたりというケースも少なくないです。五城目にも温泉宿があったりはするんですけど、街中へのアクセスが悪いのもあって、そこはシンプルに課題解決にはなっていると思いますね。
中須賀
五城目は以前から素敵な場所というイメージがあって、宿があることでもっと色んな人が集まるようになる兆しがあって、ますます楽しみですね。
小熊
いい話ばかりではないですけどね。商売ですし。ギャラリーももちろんですけど、一つ一つ向き合わなきゃいけないものは増えていくわけなんですよね。宿を1軒建てたからといって空き家問題が全て解決するわけでもない。間違いなく空き家は今増え続けていて、人口は減り続けているし、高齢化も進んでいる中で考えなきゃいけないことは増える一方です。
例えば空き家を活用したものをもっと増やそうとしながらも、循環についてもっと考えていかなきゃいけないという問題意識がずっとあります。宿については、一番最初はギャラリーの中に滞在できるスペースを整備しようとしていたんです。ただ、そうすると利用する層が限られてしまう。
五城目町の中でいろんな発酵が起きる状況をイメージすると、それよりは軸足を少しピボットして、他の業種の方々との繋がりを持ちながら、宿をやった方が何か相乗効果が生まれるんじゃないかということは意識しました。
中須賀
小熊さんが五城目の中で強いリーダーシップをもって牽引したというのではなくて、それぞれの繋がりの中でつくっていったように見受けられます。そういう発露の仕方が、私自身が抱く五城目のイメージの良さと地続きなんだろうなって感じますね。
小熊
やっぱりやってみたいことだったっていうのは自分の中にあるから始めたんだと思うんですよ。 その上で、環境とか、状況をみながら、それに合わせてアジャストしていった部分があって、自分の中ではでもこれを守るみたいなことを残しながら、ある程度折り合いをつけながらやってるっていうのが現状かなと思います。
もう一つは、五城目の中での関係性もあります。 秋田の中で今文化創造館でこういう話をさせてもらってるみたいなこともありますし、皆さんとの関係性もあります。そういったエコシステムというのは意識していかなきゃいけないなって考えていて。
つくる人を受け入れるだけの場というのではなくて、何かその間に本来あるべき役割を担う人や資源というものが、秋田の中ではまだまだ足りないなって思うところがずっとあって。 発表の場だけではなくて、発表の場を支えるためのマネジメントの仕組みもそうですし、その流通・サプライチェーンみたいな話や、県内でいろんな活動が織り成す術を含めて、活動しておられる方が少しずつそれぞれ地に足がついてきているからこそ、より具体的に考えていくフェーズになってくるんじゃないかなという気はしています。
藤
ちょっとずつでも場所ができて、滞在できる場所はすごく重要だったりするし、街の中に外からの滞在者がいて、地域とつなぐチャンネルがいくつかあった方がいい。アーティストが泊まれるような場所もあれば、一緒につくってくれる人だったり、つくれる場所があるとまたいいなとか。
小熊
例えば文化創造館が、外から来た方々にとってのプラットフォームになって、ここで確かに滞在制作はできるし、発表もできてしまうんですけど、より地域のリソースにアクセスしながら、その場所でしかない滞在体験をする制作体験をするとすれば、ここにこういう人がいるという形でワンストップで繋いでくださるようになっていくといいなと思っています。アクセスの問題というよりは、それぞれのフィールドの特色みたいなものに惹かれていかれる方々が多いと思うので。
藤
秋田の面白さは、やっぱりバリエーションだと思うんだよね。 それぞれの地域にバリエーションがあって、そこに行って滞在して、そこで活動してる人と出会えて、そこの人たちと話ができるっていうことの魅力がある。 各地でちゃんと受け入れるところがあるっていうのが重要ですよね。
小熊
例えばAir-Jという日本全国のアーティストインレジデンスのネットワークに登録させてもらってるんですけど、外からの問合せに対応するリソースが少ない。海外からも問い合わせがくるんですけど、興味はありながらも、返信して調整する体力がないというのは正直あります。例えばそういう方々の窓口となって、繋いでくださるところがあるとめっちゃいいなっていう気はします。
藤
クリエイティブ人材をつなげていく新しいプロジェクトの話も動きはじめているんだけど、人と場所をつないでいくようなこともできていくといいよね。ぜひ今後ともよろしくお願いします。

藤 浩志 Hiroshi Fuji
1960年鹿児島県生まれ。京都市立芸術大学在学中演劇に没頭した後、公共空間での表現を模索。同大学院修了後パプアニューギニア国立芸術学校に勤務し原初表現と人類学に出会う。バブル崩壊期の土地再開発業者・都市計画事務所勤務を経て土地と都市を学ぶ。「地域資源・適性技術・協力関係」を活用し地域社会に介入するプロジェクト型の美術表現を実践。取り壊される家の柱で作られた「101匹のヤセ犬」、給料一ヶ月分のお米から始まる「お米のカエル物語」、家庭廃材を蓄積する「Vinyl Plastics Connection」、不要のおもちゃを活用した「Kaekko」「イザ!カエルキャラバン!」「Jurassic Plastic」、架空のキーパーソンを作る「藤島八十郎」、部室を作る「部室ビルダー」等。十和田市現代美術館館長を経て秋田公立美術大学教授(2026年3月退任)、NPO法人プラスアーツ副理事長、NPO法人アーツセンターあきた理事長。 https://www.fujistudio.co
小熊 隆博 Takahiro Oguma
1981 年秋田県(五城目町)生まれ。京都造形芸術大学大学院(現:京都芸術大学)芸術文化研究専攻修了。2016 年にみちひらきを創業。地域の芸術資源に焦点を当てたリサーチプログラム開発や、芸術教育活動支援に携わる。2023 年に五城目の異業種6 社の共同出資によりまちづくり事業に取り組む発酵パーク社を設立し、共同代表。
中須賀 愛美 Manami Nakasuka
広島市出⾝、秋田市在住。美術作家として忘れられていく物事への視点を軸にした作品制作を行っている。2020年、秋田市にあるかつて青果店だった空き家を改修し、オルタナティブスペース「オルタナス」を有志と設立。2021年よりアーツセンターあきたに勤務。
Information
藤浩志「Project Goodbye」関連企画
素材と制作と循環を考える現場
「かえる、かえる。」
●会期:2026年3月7日(土)~4月6日(月)10:00~18:00 ※火曜休館
●会場:秋田市文化創造館スタジオA1(秋田市千秋明徳町3-16)
●主催:秋田公立美術大学、NPO法人アーツセンターあきた
●後援:秋田県、秋田県教育委員会、秋田市、秋田市教育委員会、秋田魁新報社、朝日新聞秋田総局、読売新聞秋田支局、毎日新聞秋田支局、河北新報社、秋田経済新聞、NHK秋田放送局、ABS秋田放送、AKT秋田テレビ、AAB秋田朝日放送、CNA秋田ケーブルテレビ
●お問い合わせ:NPO法人アーツセンターあきた
TEL 018-888-8137 E-mail program@artscenter-akita.jp
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