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事務局長の旅日記Vol.10「ゴールにはまだ遠く」

アーツセンターあきたの事務局長が、旅先で広めた見聞を旅日記にまとめる不定期のコラム。第10回目は、アーツカウンシル東京による講座「パートナーシップで公共を立ち上げる」でお話しさせていただいたことなどの振り返り。

7月31日・8月1日に東京都とアーツカウンシル東京が主催した講座「パートナーシップで公共を立ち上げる」で、秋田市の企画財政部長・齋藤一洋さんとともに秋田市の事例を照会させていただく機会をいただきました。

ありがたいことに、このような機会をいただくことが増え、しかも話をしてほしいというポイントが共通することも多いために、自分の中ではややマンネリ感を覚えるプレゼンテーション内容。資料の準備を進めながらも、これでいいのだろうかといくばくかの不安を覚えます。
本番まで1週間ほどとなったタイミングで、参加者からの大量の事前質問をいただいて、目を通すうちにその熱量に圧倒され、不安というのか、しっくりこなさというのか、モヤモヤした思いがむくむくと沸いてきました。その原因を考えてみても、プレゼン内容のピントがすごくずれているわけでもないように思えて、モヤモヤは募るばかり。


そうこうしているうちに、発表当日を迎えてしまいました。昼前に東京に着き、会場最寄りの喫茶店で軽く昼食をとりながら齋藤さんと打合せていた折、思わず「この内容でいいのか、悩んでいます」と吐露。その様子に齋藤さんがどうリアクションされたかも記憶がないほどに、緊張していたのか、不安が募っていたのかもわかりませんが、会場に向かい、あれよあれよと予定のプログラムが進み、私たちの出番に。
肝心のプレゼンテーションは、齋藤さんとの事前の打ち合わせどおりに進行し、私自身が抱えるモヤモヤの一端を「秋田の事例は、何も苦労なく上手くいっているわけではなく、必要に応じて折り合いをつけているから」と説明して何とか終了しました。

なんだかしっくりこなさを抱えたまま、発表後に参加者からいただいた質問、会場を変えて夜の懇親会での激論、翌日の沖縄の事例から、さまざまな気づきをいただいて秋田に戻りました。そして、8月27日には報告会と称して、東京での発表の概要や、それを踏まえて考えたことなどを齋藤さんと放談する機会を秋田市文化創造館を会場に開催。そんな機会を経ても、まだモヤモヤは晴れないまま。
それでも、報告会の参加者からいただいたコメントに、また新たな示唆をいただいた気持ちになりました。それは、「複雑化する社会において、文化創造館には、あるべき未来を見せていってほしい」といった言葉でした。責任の重さを感じつつも、そういった期待を寄せられる存在であることを嬉しく思いました。

そして、報告会から一週間ほどが経過したある朝。職場に向かう途中で、再びモヤモヤの原因について考えながらトボトボと歩いていたときに、ハッと閃きました。それは、秋田市で私たちが形づくっている「今」が完成形ではないからだ、ということ。理想として描くゴールイメージ(そもそもゴールイメージもクリアではない)には、まだ遠く、発展の途上にある秋田の事例が成功例かのように認識されたら不本意、ということなんだろうと自覚しました。ゴールにたどり着くための手段であろうパートナーシップについても、まだ改善の余地は大いにあること。

モヤモヤが晴れてすっきりしたと同時に、この先をどのように組み立てていこうか、再び考えあぐねる日々です。

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた 事務局長

三富章恵

静岡県生まれ。名古屋大学大学院国際開発研究科修了。2006年より、独立行政法人国際交流基金に勤務し、東京およびマニラ(フィリピン)において青少年交流や芸術文化交流、日本語教育の普及事業等に従事。
東日本大震災で被災経験をもつ青少年や児童養護施設に暮らす高校生のリーダーシップ研修や奨学事業を行う一般財団法人教育支援グローバル基金での勤務を経て、2018年4月より現職。

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