同世代の現状に受けた衝撃
「やっと貯まった」。秋田公立美術大学への進学が決まった時、齋藤はSNSで偶然そんなつぶやきを目にしました。
投稿主は大学の学費をパパ活で稼いでいた女子高校生。自分がどれだけ恵まれた環境にいるかを感じると同時に、自分と同世代の女性が自分を売り、それを都合よく利用する大人が社会に存在することを齋藤は強く思い知ったといいます。
高校生まで自分の心の内を描く絵画を中心に制作していた齋藤ですが、この出来事をきっかけに「女性の社会的な扱われ方・生き方」という社会的なテーマに目を向けるようになりました。
フェミニズムアートとジャンクアートの融合
大学入学後は、簡単に捨てられるゴミと、若さや純真無垢さを失うと切り捨てられる女性を重ね合わせた作品などを手掛けてきました。
食欲と性欲を結びつけ、社会での女性の息苦しさをお弁当という媒体で表現した《餌食》(2025年)。「食べる」という行為が持つ食事の意味と性的な意味を掛け合わせ、女性の生活状況を反映した具材や女体の造形をお弁当箱に入れ込みました。お弁当という気軽な日常の出来事のように、性の消費が行われているという恐ろしさを表現しました。

2024年に制作された《ぷらぷら死体遺棄》は、万物に霊魂を見出す「アニミズム」の考え方に影響を受けた作品です。着なくなった服や靴下、コンビニのプラスチックフォーク、薬の錠剤シートなどを材料に人型のぬいぐるみを制作。「気軽に捨てることは、殺すことかもしれない」という視点から、日常的に捨てられるものにも魂が宿っている可能性を表現しました。

また、「ものに魂が宿る」という一貫した視点から、架空の「理想の妹」を人形として制作し、共に暮らす長期的なプロジェクトを続けています。頭と体がある人型にすることで魂が宿ると捉え、元々は役割があったはずのハギレなどの廃棄物を用いて「妹」を形作り、語りかけ、過ごしています。

ピンクの偏見を皮肉る
8月29日(土)から始まる本展のタイトル「PINKITSCH(ピンキッチュ)は「ピンク(色)」と「キッチュ(安っぽい・低俗という批判的な意味の言葉)」を組み合わせた造語です。ピンクからイメージされる「女性的」「ぶりっ子」「性的」「ピンクカラージョブ」といった固定観念や偏見を皮肉るためにキッチュという言葉を結びつけました。
会場では、インスタント食品やお菓子の空き箱で形作られた等身大の人形や、自分を売ることは自分を捨てることだというメッセージを込めた作品など、新作インスタレーションを過去作とともに展示します。
「パパ活や売春などの問題について、当事者の女性だけを責めるのではなく、そうせざるを得ない社会構造に目を向けてほしい」と話す齋藤。SNS等で広まる「楽して大金を稼げる」と女性たちをそそのかす風潮と、性を「買う側」が存在し続ける限り問題解決に向かわないという現状を作品を通して来場者へ問いかけます。

2026年度ビヨンセレクション採択企画
本展は2026年度ビヨンセレクション採択企画です。
ビヨンセレクションとは、2021年よりスタートした秋田公立美術大学の学内公募事業です。個展・グループ展などのBIYONG POINTでの展覧会を通じて、意欲的な学生による日頃の研究・創作の成果を発表します。展示期間中にレビューを受ける機会を設け、作品の撮影記録とともに評論を公開し、学生らの将来の作家活動を視野に入れた支援を行っています。
Profile 作家プロフィール

Information
齋藤姫佳 個展「PINKITSCH(ピンキッチュ)」
■会期:2026年8月29日(土)〜9月28日(月)
入場無料、会期中無休
■会場:秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT
(秋田市八橋南1-1-3 CNA秋田ケーブルテレビ社屋内)
■時間:9:00〜17:30
■主催:秋田公立美術大学
■協力:CNA秋田ケーブルテレビ
■企画・制作:NPO法人アーツセンターあきた
■お問い合わせ:NPO法人アーツセンターあきた
TEL.018-888-8137 E-mail bp@artscenter-akita.jp
※2026年度秋田公立美術大学「ビヨンセレクション」採択企画