Index
アーツセンターあきた、発進!
秋田公立美術大学がことし2月に設立したNPO法人アーツセンターあきたがこのほど、活動開始から半年を経てオープニング記念イベントを開催しました。
その名も「アーツセンターあきたのトリセツ」。
この半年間、どんな活動をしてきたのか、これからどんな広がりを見せるのか、企業や自治体と連携して何ができるのかをシンポジウムと懇親会とでお披露目しようという企画です。爽やかな秋晴れとなった10月13日(土)、アトリエももさだを会場に100名以上の方々にご参加いただき、「トリセツ」がスタートしました。
まずは理事長・藤浩志の挨拶と、事務長・三富章恵から紹介させていただいたアーツセンターあきたの行動指針や活動についてお送りします。
10年後、20年後の時代を、アートを生かしてつくっていく。
NPO法人アーツセンターあきた理事長・藤浩志(秋田公立美術大学副学長)
NPO法人アーツセンターあきたはこの4月から動き始めました。手探りでの設立だったため、これからどういうかたちで活動が進むのかも分からないまま始まりましたが、どうにか活動の方向性も見えてきて、動き始めた状態です。こういう形でご披露しながら問題意識を共有できる場を設けることができたことをうれしく思います。
秋田公立美術大学に赴任して、この10月で4年経ちました。それまでは青森県の十和田市現代美術館におりましたが、そこはアーツセンターでもありました。
美術館とアーツセンターの違いとは何かというと、美術館には基本的に、これまでの時代を作ってきたものを保存し、展示し、それを後世に伝えていく機能があります。一方で近年、いろいろな地域にアーツセンターができました。これまでの時代をつくってきたものを扱う美術館に対して、アーツセンターはこれからの時代、10年後、20年後の時代をアートを生かしてつくっていくためにどのような活動をしていくか考え、担っていく役割があると思っています。
十和田にいた頃、秋田に美大ができたと聞いて驚きました。公立の美術大学が設置されてから、秋田にいろいろな教員、助手、研究者などおもしろい人材が集まってくる。各地で活動をつくる仕事をしてきた視点から見ると、秋田市の文化行政がそのまま美術大学というかたちに集結しているように見えました。そこには多くの人材と多くの可能性が集まっていて、それが秋田市、東北全体、ひいては日本全体に影響を与えるようなこれからの時代に必要な新しい価値をつくる重要な場所として、拠点として、この大学は可能性を持っているのだと感じました。
当時から、大学の社会貢献センターには教員と事務局員、助手、学生はいましたがコーディネーターという存在がなかった。そこで、それまでの社会貢献センターを法人化して、新しく専門職としてコーディネーターを抱えながらこれからの秋田を一緒につくっていく拠点としました。企業や自治体と連携し、これからの若い人材に対して大学が本気で何ができるのか。その基盤となる重要な仕組みとしてつくったのがアーツセンターあきたです。大学の一部であるこのももさだの空間も、もっと活用していきたいと思います。こういうかたちで動き始めることに、喜びと興奮と期待を感じています。
秋田には美術大学があり、アーツセンターがあり、これからいろんな人たちと連携して何かができるのではないかと期待されるなかで、活動が動き始めています。一緒に盛り上げていただければありがたく思います。本日は1日、どうかお楽しみください。
秋田に眠っているクリエイティビティのタネが発芽し、芽が出て、まちを豊かにする力になる。
NPO法人アーツセンターあきた 事務長・三富章恵
秋田公立美術大学が設立したNPO法人アーツセンターあきたは、大学の社会連携、地域連携を担う窓口として機能しています。
この4月から活動をスタートし、ちょうど半年が経過しました。立ち上げに際して県内外からアート、デザイン、まちづくりなどに実績のある人材がコーディネーターとして集まり、ここアトリエももさだとフォンテAKITAにある美大サテライトセンターに総勢10名のスタッフが勤務しています。それぞれのスタッフが多様な専門性を持ち、こんなことをしたいという思いを持って活動しています。
この10名のスタッフが共有している行動指針がありますので、ご紹介したいと思います。
わたしたちは、誰もがクリエイティブであると考えています。
そして、そのクリエイティヴィティには、まちを変える力があると信じています。
萌芽的な可能性を積極的に探り、
全ての人々がクリエイティヴィティを発揮できる環境をつくります。
その実現のために、人々のアイディアに受容的態度をもって接します。
人と人を繋げていくことを意識して取り組みます。
この行動指針であり信念をもって、スタッフひとりひとりが活動に取り組んでいます。
秋田という土地には創造的な力、クリエイティビティが隠れている、眠っている。秋田に暮らすひとりひとりがクリエイティビティを持っているー。このように思っています。
秋田公立美術大学という組織があって、この大学には、隠れているクリエイティビティをより顕在化、より最大化できるようにサポートするスキルや経験、実績を持った人材がたくさん揃っています。クリエイティビティを育んだ土地と大学の人材をうまく橋渡ししてつなぐことができれば、秋田に眠っているクリエイティビティのタネが発芽し、芽が出て、それがまちを豊かにする力になるのではないかと考えています。
余談ですがこの行動指針は、夏にスタッフが新屋地区の空き家を改装したスペースに泊まり込んで作り上げた言葉です。
私たちはそれなりに信念を持っているわけですが、先日、書店で心理学者・河合隼雄の『こころの処方箋』をパラパラとめくっていたら、最後の章のタイトルに「すべての人が創造性を持っている」と書かれていてハッとしました。「すべての人は生まれながらに唯一無二の存在であり、皆が創造性を持っている。ただ日本という社会においてはその創造力をのびのびと発揮しようと思うとなかなか苦しいことがあって創造的にはなれない」というようなことが書かれてありました。
この言葉に勇気付けられたというか、私たちが信念としていることは間違っていなかったなと思った次第です。そういった信念を持ちながら、私どもがこの半年間に取り組んできた活動をご紹介させていただきます。
■秋田×高校生
高校生に秋田で「超おもしろい合宿」をしてみないかという公募企画「高校生クリエイティブキャンプ」を実施しました。日本全国の高校生に秋田をフィールドに「超おもしろい」という切り口のみで合宿プランを募り、ご応募いただいた中から長野県、東京都、大阪府の3団体を秋田にお招きして合宿していただきました。この事業の狙いとしては、高校生の目線で秋田の魅力、価値を発掘してSNS等を使って発信してもらうということにありました。
http://u18cc.jp
■地域×アート
地域とアートを結びつける事業としては、上小阿仁村で実施されている「かみこあにプロジェクト」に協力させていただきました。
美大の教員が協力し始めてすでに7年目を迎えるプロジェクトに今期はアーツセンターが関わって、教員、助手、学生が参加することをサポートしつつ、オリジナルグッズのデザイン制作にも協力。アートを通じて集落の魅力を県内外に発信するお手伝いをさせていただきました。
かみこあにプロジェクト
■地域×美大
美大が長い時間をかけて継続している事業のひとつに、大森山動物園と美大との連携事業があります。
今年はアーツセンターが関わらせていただき、動物園だけでなく大森山公園一帯をギャラリーに見立て、教員や学生さんに作品制作をしていただきました。
大森山アートプロジェクト
■地域×学生
アーツセンターでは、地域と学生をつなぐ事業も実施しています。
能代の町内会と学生や卒業生を結びつけて、商店街のショーウインドウに作品を展示して地域を盛り上げていく「まちなか美術展」に協力させていただきました。
■企業×学生
デザインの分野では、企業や自治体の方々にご依頼をいただく中で、社会課題についてデザインの力を使って解決に向けたアプローチをしてみようという試みをいくつか実施しています。
そのひとつが、秋田赤十字乳児院が実施している里親啓発事業です。学生が乳児院や里親制度の状況をリサーチする中で、より里親制度について地域の方々に理解していただく、さらにはそれを通じて里子を受け入れてくれる方を増やすきっかけになるポスターを制作して、展覧会を開きました。
■子ども×美術
アート、美術、デザインを通じた人材育成や担い手育成に関わる事業にも取り組んでいます。子どもとアートをつなげる意味合いのもので、美術に触れるなかで感性を育むことを目的とした子ども向けのアートワークショップを実施しています。
■中高生×美術
中高生と美術をより結びつけ、美術に関心のある生徒の輪を広げようと、秋田県内の中高生がデッサンを自習で学び、美大の教員が合評会に参加することでスキルを高めていただく「素描Lab(ラブ)」という取り組みをスタートしています。
すでにこの半年間で多様な事業に取り組んでいるわけですが、ことし1年、さらには今後に向けて取り組みをますます活性化する、加速化することで美大のリソースを秋田という地域に還元したいと思っております。
また、このオープニングイベントに合わせて、アーツセンターあきたのウェブサイトがようやくオープンしました。これまではフェイスブックのみでの発信でしたが、これからはこちらのウェブサイトを通じていろいろな取り組みや、その結果どういったことが起きているのかをニュース形式でご紹介させていただきたいと思っておりますので、ぜひ定期的にチェックしていただければと思います。 (つづく)