arts center akita

のしろまち灯り2020 秋美生と地元高校生の有志がタッグを組み灯りづくり

今年で21回目を迎える能代市の冬の恒例行事「のしろまち灯り」。昨年に続いて、今年も能代市出身の秋美生を中心に祭りの「灯り部門」に協力しました。

昨年度から、能代出身の秋田公立美術大学の学生が中心となって「のしろまち灯り」の「灯り部門」に携わっています。「のしろまち灯り」は今年で21回目を迎えた能代市の冬のイベントの一つ。能代でお店をしている方、団体の方、支援学校などが屋台を出したり、催し物を出したり、面白い仕掛けのおもちゃが作られたり、そして夕暮れになると会場に灯りがともって賑わいます。
今年度も実行委員会「灯り部門」担当の平山はるみさんからお声が掛かり、2年生の五十嵐柚さん、村田葵さん、安倍陽菜さんが参加しました。

昨年度も関わっていた五十嵐さんと平山さんとの事前の話し合いで、〈考えるのは大学生、高校生は当日のお手伝い〉といった関係性ではなく、〈高校生と大学生が一緒に考え、一緒に作る〉ことが今年度の大切な目標に。

イベント当日を迎えるまでの様子を、担当者がレポートします。

顔合わせを兼ねた1回目の打ち合わせ(12月27日)

開催を1ヶ月後に控えた12月27日、能代市畠町のコミュニティスペース「畠町新拠点」で、1回目の打ち合わせが開かれました。五十嵐さんと村田さんが待っていると、平山さんの声がけで集まった能代高校と能代松陽高校の生徒が徐々に集まってきました。少し緊張気味の高校生たちと一緒にアイデアを出し合える雰囲気をどう作るか、共同制作にも取り組んでいる美大生の腕の見せ所です。

市内の店舗や製材所からご提供いただいた材料を見ながら、それらを使ってどんなことができそうか、能代の気候やまち灯り会場の条件なども考慮に入れて考え始めましたが、少し沈黙が続きそうに・・・

そこで、思いつきをたくさん出してみようとブレインストーミングに取り組んでみました。実際にできるかどうか、自分たちでできるかどうかを考えず、他の人が出したアイデアも膨らませ、思いつきをどんどん口に出します。大学の授業でグラフィック・レコーディングを学び、実践経験も積んでいる村田さんが、発言をホワイトボードに記録していきました。出されたアイデアがイラストと一緒に記録されていくことで、それらを見ながら違うことを思いついたり、アイデアを発展させたりすることがしやすく、包装紙をどう使うか、杉の端材をどう使うか、LEDろうそくの色は?など自発的にアイデアが出されていきました。最後に、出てきたアイデアから興味のあるものを各自選んで各々のやりたいことを確認し、次回の打ち合わせ日程をみんなで決めて終了となりました。

アイデアを再考した2回目の打ち合わせ(1月13日)

2回目の打ち合わせには、秋田公立美術大学から五十嵐さんと安倍さんが参加。今回のグラフィッカーは、村田さんと同じく授業でグラフィック・レコーディングを学んだ五十嵐さんが担当しました。前回出されたアイデアを踏まえつつ、能代で家具製作や木に関する様々な活動を展開しているミナトファニチャーの湊哲一さんも参加して、灯りの会場のレイアウトや参加型・体験型企画について再度アイデアが集められました。「やること」と「できるかもしれないこと」に分けられ、内容が深められたり、新たなアイデアも提案されました。

どのようにやるかを詰め、灯りづくりを行った3回目の打ち合わせ(1月19日)

「のしろまち灯り2020」灯り部門の最後の打ち合わせとなった3回目。大学からは安倍さんが参加して、いつもの高校生メンバーに湊さんも混じり、細かい部分の相談と来場者に配る灯りづくりの練習が行われました。そして前2回の大学生が描くグラフィック・レコーディングを見てきた高校生が“やってみたい!”と挑戦。灯具の個数やLEDろうそくの個数、準備や設置の時間など細かい数字も出てきた打ち合わせ最終回を、文字だけでなくイラストも取り入れた記録にトライしてみました。平山さんのネットワークで、能代支援学校の生徒さんに杉の端材を使った灯具づくりと、当日の灯りの設置を協力いただけることとなりました。「のしろまち灯り」の灯り部門が、能代の学校に通う同世代が集まる機会にもなってきました。

現地を見ながら最後の調整。寒く暖かかった「のしろまち灯り」(1月26日)

ついに本番の1月26日。例年ならしっかり雪が積もった中で開催される「のしろまち灯り」が、今年は全く雪がありません。昨年関わっていた人も、白い雪の上での灯りづくりとの違いに少し戸惑いがあったかもしれません。場所を見て、灯具を見て、レイアウトをもう一度検討することになりました。美大生からの提案に、高校生から質問があり、みんなでイメージを確認し合いました。

紙袋の灯具、杉の小さな丸太を袋に入れた灯具、杉の端材で作られた灯具を、実行委員の灯り部門の方々も一緒になって並べていきます。雪がないからなのか却って寒さを感じる中、レイアウトの計画を現場で調整しながら進めていきました。

徐々に暗くなり始めた17時頃、廃油を使ったろうそくなどにも点火され、今年の灯りがついに来場者に披露されました。まだ少し明るかった周囲がどんどん暗くなっていき、オレンジ色の灯りが暖かい雰囲気を醸し出し始めると、小さな子どもたちだけでなく、中高生や大人も集まってきました。全体を眺めたり、支援学校の生徒が作った端材の灯具を一つずつ見て廻ったり、灯りの間を走り抜けたり、色々な楽しみ方をしてもらえたようです。

そして今年の目玉の一つ、ナッツとドライフルーツのお店「木能実」からいただいた、平川慧さんの点描画がプリントされた包装紙を用いて作った「ペーパーきんちゃくライト」が配られ始めました。子どもを対象に限定100個の配布はあっという間に終了。子どもがたちが小さな灯りを持っている様子がかわいらしく、多くの方が写真を撮っていました。大人からもどこで配ってるの?という声が聞かれ、人気のほどを伺うことができました。

後日開かれたふりかえりでは、来年も関わりたい、もう少し早くから話し合いを始めて他の部門の人とも一緒に考えたいと、次回への希望や期待を持ちながら話し合われたようです。「灯り部門」の枠を超えるような企画も提案され、これからますます繋がりが深まっていきそうです。

田村 剛(NPO法人アーツセンターあきた)

Information

第21回 のしろまち灯り2020

■日時:2020年1月26日(日)14:00~19:00
■会場:能代市役所「さくら庭」「大会議室」
■主催:のしろまち灯り実行委員会
■後援:国土交通省能代河川国道事務所、秋田県山本地域振興局、能代市教育委員会、北羽新聞社、秋田魁新報社
■協力:のしろ白神ネットワーク、NPO法人アーツセンターあきた、能代市立能代図書館、能代市立中央公民館、夢灯りプロジェクト

Profile

田村 剛

NPO法人アーツセンターあきた プログラムコーディネーター。兵庫県生まれ。秋田公立美術大学景観デザイン専攻助手を経て、2018年4月より現職。 まちづくりに関連する事業を主に担当し、秋田市新屋や能代、八郎湖などの地域連携事業の企画・運営に携わる。

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた 事務局長

三富章恵

静岡県生まれ。名古屋大学大学院国際開発研究科修了。2006年より、独立行政法人国際交流基金に勤務し、東京およびマニラ(フィリピン)において青少年交流や芸術文化交流、日本語教育の普及事業等に従事。
東日本大震災で被災経験をもつ青少年や児童養護施設に暮らす高校生のリーダーシップ研修や奨学事業を行う一般財団法人教育支援グローバル基金での勤務を経て、2018年4月より現職。

一覧へ戻る