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卒展・専攻展で見たあの作品も! 学生による「AKIBI ARTs MARKET 2020」開催中

秋田公立美術大学の学生が展覧会形式で作品を展示販売する「AKIBI ARTs MARKET(アキビ・アーツマーケット)」がフォンテAKITA6階の秋田公立美術大学サテライトセンターで始まりました。作品の売上金は作家へと支払われ、今後の活動資金となります。2月21日〜24日の4日間。もっと身近に、秋美のアート!

「AKIBI ARTs MARKET 2020」開催中!

秋田公立美術大学の学生が展覧会形式で作品を展示販売する「AKIBI ARTs MARKET」が2月21日(金)、秋田公立美術大学サテライトセンター(フォンテAKITA6階)で始まりました。4年生と大学院生による卒業・修了展が終わったばかりのこの時期、秋田公立美術大学とNPO法人アーツセンターあきたが昨年から始めた試みです。

会場には、1年から4年の学生14人の作品約300点がずらり。4年生からは、ものづくりデザイン専攻の3人が参加。卒展に出品したそれぞれの器が会場を彩っています。

撮影・編集:伊藤達也
卒展や専攻展などに出品された作品も並ぶ「AKIBI ARTs MARKET 2020」

人が意図するものを超えた自然現象の美しさ

今年の卒展で、その大胆な制作方法と繊細さ、美しさで注目を集めたのが加藤正樹(ものづくりデザイン専攻4年)の≪Pendulum≫シリーズです。

pendulumとは、振り子のこと。自ら制作した装置の振り子に合わせて白い磁器土が上から下へと滴り落ち、それを回転する石膏型が受け止めてかたちが出来上がります。「人の意図の限界を超える自然現象の美しさに着目。振り子運動と回転の運動を組み合わせた」という加藤の発想によって、人の手を介さずに生まれた器の姿が魅了します。本シリーズはこの度、秋田公立美術大学学長賞を受賞しました。

揺れ動く振り子の軌道が幾重にも重なり、形作られた

加藤はこの≪Pendulum≫シリーズのほか、ドラム缶で焼成し、おが屑で燻したアメリカン楽焼の器も展示販売。赤、黄、緑、黒、銅などに鈍く光る土肌が目を引きます。

アメリカン楽焼

カスタマイズした工芸品

陶芸や漆芸など複数の工芸技法を組み合わせた作品を制作する正保千春(ものづくりデザイン専攻4年)は、卒業制作でもある≪うつわカスタマイズ≫を出品。これは工芸技法に“カスタマイズ”を組み入れた試みです。
「工芸品を使い手に合うようにカスタマイズすることで、道具としての機能性が変化するのではなく、新品の道具には決して存在しない、個々の使い手の個性が与えられる」と正保。複数の技法によって“カスタマイズ”が可能となります。

素体となるのは、誰もが目にしたことのある器の典型的なフォルムやロングライフデザインとされる器をモチーフとしたもの。これに好みの図案を色漆で塗布してカスタマイズする
卒展では毎朝、パンを焼いて作品と共に食卓を演出した松下直史≪bread dishes≫から、カップ&ソーサーや土鍋、シュガーポットなど

ギャラリーの一角に、不思議なたたずまいを見せているのが佐々木大空(ビジュアルアーツ専攻3年)の作品。音の出る作品、音が出せる作品を作る佐々木は、今回、専攻展にも出品した楽器を並べました。電気のスイッチを使って弦を響かせる≪ツケテケス≫、合板で作った打楽器≪オクタベ≫などを展示販売しています。

≪おとのかぶりもの≫は頭にかぶって演奏。ホルンのような響き

巨大な玉ねぎのような形が目を引く≪おとのかぶりもの≫は、ホースの管と木製のベル部分を持つ楽器です。演奏者はこの楽器を頭からかぶり、内部のホースの穴に唇を当てて空気を送り込みながら唇を振動させて音を発します。そのため、トランペットやホルンなどの金管楽器と同じ発音原理を持つとのこと。また、唇を振動させながら同時に声を出して演奏すると、特殊な音を奏でることもできます。

また、≪radio made radio≫は、画家であり音楽家のルイジ・ルッソロが騒音や雑音を音楽として演奏するために創作した「イントナルモーリ」から着想を得た作品。ラジオから発せられるノイズを複数使用することで異なった周波数のノイズを重ねます。佐々木は、「その中に潜む不規則なリズムやうねるような高音に耳を傾けられる。本来は情報を持ったはずの話し声や歌声が騒音に変化する逆転現象も」と解説。その他、佐々木が制作した楽器を写真で見ることもできます。

足し算≪主張≫

足し算(ビジュアルアーツ専攻2年 伊藤達也、景観デザイン専攻2年 岩崎一耕)による≪主張≫の素材は、自転車のチューブやタイヤ。リサイクルされることなく廃棄される運命にあるタイヤやチューブに、可能性を見出し、大きく羽ばたく翼に。本作品はリサイクルアート展において審査員特別賞を受賞しています。

松山さくら(アーツ&ルーツ専攻3年)は、アクリル画や油彩画などを出品。鳩の形をしたサブレから発想した≪サブレの哲学≫のシリーズは、さまざまな形に切り取ったアクリル画が壁面を飾ります。専攻展にも出品した≪あれ≫は、日常生活の中にふと現れ出てくる感覚をインクで描いた線画のシリーズ。「◯◯のような」という感覚を名付けることなく≪あれ≫と表現した作品が並びます。

≪サブレの哲学≫(奥)と≪あれ≫(手前)
ジャンパースカートやアクリル画、ピンバッジなどが並ぶ小林真由(ものづくりデザイン専攻3年)の空間

「AKIBI ARTs MARKET 2020」は24日(月祝)まで。作品をお買い求めいただくと、売上金は作家へと支払われ、今後の活動資金となります。ぜひ足をお運びください!

Information

AKIBI ARTs MARKET 2020

AKIBI ARTs MARKETチラシダウンロード
Facebookイベントページ

◼︎開催期間:
2020年2月21日(金)~2月24日(月祝)10:00~18:00※最終日は17:00まで
◼︎会  場:
秋田公立美術大学サテライトセンター(秋田市中通2-8-1フォンテAKITA6階)
◼︎出  品  者:
正保千春(ものづくりデザイン専攻4年)、加藤正樹(ものづくりデザイン専攻4年)、松下直史(ものづくりデザイン専攻4年)、佐々木大空(ビジュアルアーツ専攻3年)、松山さくら(アーツ&ルーツ専攻3年)、小林真由(ものづくりデザイン専攻3年)、足し算(ビジュアルアーツ専攻2年・伊藤達也、景観デザイン専攻2年・岩崎一耕)、大場明、佐々木きらら、髙橋小春、服元彩、藤澤萌、松森萌佳(以上1年)ほか
◼︎お問い合わせ:
NPO法人アーツセンターあきた
TEL.018-888-8137 FAX.018-888-8147
info@artscenter-akita.jp

※入場無料
※お支払いは、当日現金払いのみの対応とさせていただきます。

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

高橋ともみ

秋田県生まれ。博物館・新聞社・制作会社等に勤務後、フリーランス。取材・編集・執筆をしながら秋田でのんびり暮らす。2016年秋田県立美術館学芸員、2018年からアーツセンターあきたで秋田公立美術大学関連の展覧会企画、編集・広報を担当。ももさだ界隈で引き取った猫と暮らしています。

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