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「『応答』〜SUMMER STATEMENT 2018
報告とその後〜」の報告1

2019.02.22

秋田市八橋南の秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT(ビヨンポイント)では現在、展覧会「『応答』〜SUMMER STATEMENT 2018 報告とその後〜」の後期「秋田|Akita」が開催中。秋田公立美術大学大学院2年に在籍する藤本悠里子の企画であり、修了研究報告展でもあります。2月24日(日)まで。

SUMMER STATEMENT 2018

「2018年9月4日から16日まで、関西から4名のアーティストが秋田に滞在した。その滞在は少し変わっていて、作品制作を目的としなくてもよいという名目のもとであり、同じ家で共同生活をしながら、それぞれがその滞在の時間に見合った使い方をした。」

アーティストのそんな語りから始まる「『応答』〜SUMMER STATEMENT 2018 報告とその後〜」。作品制作を目的としない滞在ではあったものの、その後、はからずも展覧会という形式で発表することに。そこで滞在期間中の出来事を軸に編集し直し、時間を経て“動詞化”した記録を秋田への「応答」として発表したのが本展です。

秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINT(ビヨンポイント)では現在、後期「秋田|Akita」が開催中。秋田公立美術大学大学院2年に在籍する藤本悠里子の企画。これは、藤本の修了研究の報告展でもあります。

BIYONG POINTで開催中の展覧会「『応答』〜SUMMER STATEMENT 2018 報告とその後〜」

「展覧会の外」には、アーティストの思考や言葉が溢れている

「これまで若手アーティストの支援や展覧会の企画に携わってきましたが、『展覧会では見えていないところ』、つまり『展覧会の外』にもアーティストたちの活動は存在しています。作品としてのかたちを得たものの周りには、作品には現れていないたくさんの思考や出来事、言葉が溢れているんです。これらの要素に目を向けて、企画を立てられないかと考えました」という藤本。

前期「Out of Exhibition」では、作品制作を目的としない秋田での滞在「SUMMER STATEMENT 2018」の記録をもとに、アーティスト4名(寺岡海、神馬啓佑、船川翔司、来田広大)が滞在中に関わった人たちにどのような影響をもたらしたかを考察。展示替えした後期の展覧会「秋田|Akita」では、藤本による報告会が開かれました。1月24日(木)の報告会の様子をレポートします。

BIYONG POINTで行われた報告会

「『応答』〜SUMMER STATEMENT 2018 報告とその後〜」の報告

藤本 「SUMMER STATEMENT 2018」ではたくさんの方々にお世話になりました。まずはCNA秋田ケーブルテレビ、NPO法人アーツセンターあきた、そして秋田公立美術大学の教員や学生の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。この報告会は、「新しい表現が生まれる現場をどう創造するか、またその現場にどう関わることができるか」をタイトルとしています。このことについて、皆さんには頭の片隅に置いていただきながら話を進めたいと思います。

藤本悠里子(秋田公立美術大学大学院2年)

藤本 「展覧会の外にあるアーティストの創作活動との交差。アーティスト秋田滞在企画『SUMMER STATEMENT 2018』の実践から」が私の修了研究のテーマです。

秋田公立美術大学大学院に進むまでは、京都で若手アーティストの支援や作品と鑑賞者とをつなぐマネージメントについて学んでいました。授業の一環としてアーティストと協働しながら展覧会をつくり、開催していくことを学部の4年間で行ってきました。
その中で、最終的な成果とされる展覧会や、作品をつくっていく過程やその周辺にはアーティストの言葉や思考、意思といった発表することを前提としない行為が溢れていると思いました。

日常に現れるアーティストという特異点

藤本 鑑賞者が展覧会や作品に会いに行く時は、「そこには特別な意図があるだろう」「特別な造形が鑑賞できるだろう」と、何か特別な鑑賞体験を与えてくれると期待して見にいくと思います。一方で、日常の中に現れたアーティストという特異点に偶然、第三者が触れるという体験は、展覧会とは違った角度から驚きを獲得する可能性があるのではないかと考えました。そのように芸術活動について、美術館ではなく別の出会いを提供したいと思ったのがこの企画の始まりです。

展覧会という形式に落とし込んだもの以外にも、アーティストがもたらす効果が何かあるのではないか。秋田という土地を考えたとき、形式が決まっている作品よりも状況が常に変化する企画にした方がいいのではないかとも思いました。

アーティストの効果を確認する実験的な試み

藤本 秋田公立美術大学ができたことで、秋田のアートシーンは変化している時期でもあります。外から来たアーティストや専門家と直接的な批評のやりとりや情報の交換をすることで、状況が変化するような企画にしたいと思いました。秋田ではいま、専門性を持ったゲストを迎え入れ、アーティストと受け取る側とをつなぐ役割が必要であり、人材の育成やプラットフォームの創出が望まれています。その中で、何が次の秋田への糧になるのかといったことや、アーティストがもたらす効果を確認する機会にもなるのではないか。そのひとつの実験的な試みになればと思っています。

前期「Out of Exhibition」

SUMMER STATEMENTとは?

藤本 今回の企画に参加してくれた4名のアーティストのうち、寺岡海、神馬啓佑、船川翔司の3名は2014年から17年まで、彼らを中心に集まったアーティストたちと広島の尾道で自主的な合宿を行ってきました。滞在には作品をつくる目的があると思われがちですが、作品制作以外にもリサーチや観光、地元の人との交流などアーティスト一人ひとりの興味に応じて活動を展開しています。

アーティスト・イン・レジデンスでは作品をつくることで滞在が成立することが多いと思います。でも彼らは自主的に、勝手に活動を行なっていました。その過ごし方は一人ひとりが違っていて、海やプールに行くこともあれば、バーベキューをしたり、はたから見れば遊んでいるようにも見える時間の使い方がありました。これを尾道で4年間継続しているのですが、同じことを繰り返していたわけではなく、新しいアーティストを入れたり、活動を切り替えらえるような枠組みを持って継続していました。

彼らは、「創作活動をすることがアーティストの行為の中で上位に位置付けられるものであるなら、それ以外の日常生活で起こる出来事も制作活動にとって重要かどうかの基準が設けられる」という言い方をします。そして「SUMMER STATEMENT」は、「制作の外部にあるものを肯定的に受け入れるために設けられた時間と場所だった」と言っています。彼らは制作についてではなく制作の外部にある時間や空間に対して声明文を発表して、それをなぞるように滞在をしていました。そこで、それまで使われてきたタイトルを踏襲して、「SUMMER STATEMENT 2018」として秋田でやってもらおうと思いました。

前期「Out of Exhibition」の展示室内。4人の滞在記録のインスタレーション