「1/1000油谷コレクション」は、膨大な油谷さんの私蔵民具等の1000分の1程度を収蔵庫から取り出し、アーティストの藤浩志さん、國政サトシさんと市民ボランティアによる分類整理と、多様な分野の専門家による価値検証が並走するアートプロジェクト。 プロジェクトレポートの第2回は、7月1日から7月12日まで約2週間にわたって行った分類整理活動の後編をお届けします。
分類整理活動(前編)のプロジェクトレポート#1はこちら。
埃を落とし、磨き、観察し、記録する
油谷さんによれば、今回持ち出したモノは32年間収蔵庫に眠っていたそう。集まったボランティア方々と、モノの埃を落として磨く作業をひたすらつづけていきます。「綺麗にしてもらって、美人になった」と、油谷さんはモノを見つめながら話します。
カビ臭かった体操服は、洗濯していい匂いに。壊れていたパチンコ台を修理し、錆びたパチンコ玉を磨き、遊べるようになりました。くしゃくしゃの書類や新聞紙をアイロンがけしたり、新聞の切り抜きを日付毎に並び替えたり、共通項でまとめたり、眠っていたネガを現像したり、毎日少しずつ更新していきます。未開封の箱や鞄、手帳の内ポケットをさぐると、新たなモノが出てきたり、裏紙として使われた紙をひらいてみると美しい絵が現れたり、触り、探り、観察することで、新しい発見に出くわします。 また、日々会場を訪れる方々に教えてもらって、ボランティアではわかりかねたモノの用途が判明したり、修理されたりということもありました。そういった発見や気づきを、またシートにしたため、記録していきます。



収蔵庫に戻すための準備
分類整理活動も残すところ2日となった7月11日からは、モノ1点1点の記録撮影と梱包に着手していきます。撮影された写真は795枚。写真1枚に複数点を収めているものも多く、今回分類整理したモノの総数は2,000点程になると推測されます。






撮影を終えたモノは、記録シートとともに収蔵庫から持ち出した箱や桶、鞄等に詰めなおし、収蔵庫に戻すための準備を進めます。詰めなおす過程では、壊れた箱を補修したり、活動中にいただいた差し入れの菓子箱を活用したり、活動期間中に発行された新聞を緩衝材として用いる等、油谷さんの収納の手法を応用していきます。最後に、どの箱に何が入っているかがわかるよう、モノを詰めた状態で改めて写真撮影し、封をしてトラックへの積込みを待ちます。
活動最終日の7月12日午前の時点では、ほとんど梱包作業が進んでおらず、作業が終わるか危ぶまれましたが、午後から集まったボランティアさんの協力を得てのラストスパートで何とかすべてのモノの梱包を追えることができました。



トラックに積み込む
7月12日の午後3時頃から、トラックへの積み込みを開始。浅舞の収蔵庫に収納する作業をシミュレーションしながら、小物から先に積み込み始めます。積み込み作業は、油谷さんの指導の下、1時間半ほどで無事に終了。6月30日に収蔵庫から持ち出した際には、2tトラックの荷室いっぱいにつまっていたモノは、埃を落とし、綺麗に箱等に詰めなおした結果、荷室の3分の2程度に収まりました。
収蔵庫におさめる
翌朝は浅舞に移動し、いよいよ収納。今回持ち出したのは収蔵庫の1部屋の約2分の1。次回の分類整理活動に備えて、残りの2分の1を取り出しやすくするため、部屋の手前に残ったものを移動します。臼やタンス等の什器やふすま、書籍や大量の箱を寄せ、空いた空間を清掃・養生し、分類整理したものを手際よくおさめていきます。昼休憩をはさみながら、およそ4時間ほどですべての作業を終えました。
活動が終わって「なんだか寂しくなるな」とこぼす油谷さんでしたが、次回の分類整理活動のスケジュールを確認し、帰路につきました。


Information
1/1000油谷コレクション
油谷満夫さんの私蔵民具等の1000分の1程度を倉庫から取り出し、アーティストと市民ボランティアによる分類整理と、多様な分野の専門家による価値検証が並走するアートプロジェクト。
開催期間:2024年7月~
開催場所:秋田市文化創造館ほか
主催:NPO法人アーツセンターあきた
監修:服部浩之
参加作家:藤浩志、國政サトシ
スタッフ:三富章恵、前田優子(NPO法人アーツセンターあきた)、大村香琳(秋田公立美術大学大学院)
協力:油谷満夫
助成:公益財団法人野村財団
https://www.artscenter-akita.jp/archives/50154
Instagram
https://www.instagram.com/aburaya.aca/