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「11月3日の小さな物語」まちを楽しむ方へ、ささやかなクリスマスプレゼント

中心市街地を歩いて楽しむツアー企画シリーズ「マチアルキ」。第1弾として開催した「まちあるきツアーをつくる」において、高校生・大学生と一緒に探ったまちの新名所をマップにまとめました。

秋田市中心市街地活性化協議会が主催し、NPO法人アーツセンターあきたが企画運営に協力したツアー企画シリーズ「マチアルキ」。11月~12月に計3回のまちあるきツアーを実施しました。

第1回目は、建築リサーチプロジェクトのRAD―Research for Architectural Domainをアテンダントに迎えて、「まちあるきツアーをつくる」と題し、自分たちでまちの楽しみ方を開拓する、まちあるきツアーをつくるワークショップを開催。高校生・大学生を中心とした参加者を得て、中心市街地の新名所を探ります。

≪第1回の開催レポート≫
自分なりのまちの楽しみ方を開拓する 「まちあるきツアーをつくる」開催レポート

素敵な喫茶店や、なぜか落ち着く画廊、思わずスタッフも手を伸ばしかけた醸造所のクラフトビールなどなど、まちのメインストリートや路地裏を徘徊しながら、探り当てたとっておきの新名所を、この度マップとしてまとめ公開しました。

まちがもっと楽しくなる

ツアーの参加者から「想像以上にディープ」、「行ってみるとかなり個性にあふれていて、とっても面白い」などと感想が聞かれたとおり、普段何気なく通り過ぎてしまうまちなかには、面白いスポットがたくさん。

参加者と一緒にみつけた新名所に関する情報やまちの楽しみ方を、もっと多くの方々と共有したい!と思い、マップ制作を開始。馴染みのまちの風景が、少しでも違ってみえるように、かわいらしいイラストを中心に構成しました。

▼ マップダウンロード

Illustration & Design: Kaho Saito

小さな10篇の物語

秋田市文化創造交流館(仮称)や県・市連携文化施設「あきた芸術劇場」のオープンによって、今後変化してくであろうまちの姿。そんなまちに暮らす誰かの一瞬を切り取った小さな物語10篇を、マップに挟み込みました。

「11月3日、ダンナの誕生日なんだよね」「マジで?大丈夫?」「夜予約してるし」「しっかりしてんなー」「すいません、お待たせしてしまって。今度はクリスマスリースもやりますので」「やりたーい」「えっと、瓶ビール二つ」「グラスは三つでいいですか?」「はい」「お疲れ様でーす」「久しぶりー」「スキー行きたい」「マジで?滑れる」「うん、ウェア持ってないけど」「マジで?」「あ、でもなくても大丈夫じゃん」「マジで?あーでも小学校の時そうだったか」「そうそう」「うん、でもめっちゃしゃっこくなるけど」「うちのダンナがさ、モンベルのめっちゃいいの持ってて」「マジで?ガチじゃん」「すいませーん、フルーツサンドくださーい」「めっちゃ食うな」

「11月3日が記念日だな」「何が?」「いや、俺らのさ、茶碗記念日」「何それ、ダサっ」「なあ、こっちの方が良くないか?」「こっちがいいけど」「そう?うちもここお世話になってんだよ。さかいださんとは昔からの付き合いでさ」「私、夫婦茶碗とか嫌い」「は?じゃあ、最初からそう言えよ」「だって」「だってってなんだよ、じゃあ百均でいいよ」「百均はやだ」「じゃあさ、好きなの選ばない?それぞれ」「うん」「前途多難だよ」「何が?」「別に」「大袈裟」「まだキッチンマットだけだよ、買ったの」「キッチンマット大事じゃない?私、これがいい」「これ?」「なんか文句ある?」「じゃあ俺も」「真似しないでよ」「最初から俺もこれが良いって思ってたし」「あっそ」

11月3日、私はこの日を決して忘れはしないだろう。モンパルナス通りの響画廊で、私は運命の人に出会った。それは運命ではなく必然だった。昨日から降りしきる雨は私がモンパルナス通りに足を踏み入れた途端、ピタリと止み、雲の切れ間から燦々と太陽が注いだのだ。私は正直、モンパルナス通りのことを知らない。どこにあるかさえもわからない。だがここは本家よりも本家らしい。そう、それは真実なのだ。ああ、そうだ間違いない。そんな路地がこの街にはたくさんあるのだ。そう確信した私は街を歩き、ありとあらゆる路地に名前をつけることにした。恥ずかしいので名前は避けるが、この街はそんな路地で埋め尽くされた。闇雲にでっち上げた街の地図を広げて、私は一人、占い師や預言者のように、この街でこれから起こることを夢想している。

11月3日、昼過ぎに起きる。いつものようにベッドでスマホを見ていると、偶然フェイスブックでダンス公演の情報を見つけた。予約はしてなかったけど、タイトルに惹かれた。場所はココラボラトリーというスペースだという。時間がギリギリだったので、自転車を飛ばして会場へと向かう。いつもバイトしてる居酒屋を通り過ぎて、青い建物の中へ。会場内には静かでキラキラした音楽が流れていた。「予約してないんですけど……」と言うと、「全然大丈夫ですよ」との声。静かに開演を待つ。こういうダンス?コンテンポラリーダンスって言うらしい、は初めてだったけど、なんかよかった(感想は難しいけど)。今日は学校をサボろうと思って、自転車を飛ばす。いつもは行かない路地の中を行ってみる、風が気持ちよかった。

11月3日、秋田に引っ越してきてちょうど1ヶ月がたった。以前暮らしていた街はパン屋が多い街だった。OLさんの昼食の定番はパンだったし、主婦や学生が帰路の途中のパン屋で翌朝の朝食を購入する光景もよくみかけた。私も休日に街中を散歩しながら、行き当たりばったりで知らないパン屋を見つけるのがちょっとした日々の喜びだった。秋田に来て、生活が整い始めた頃、ふと最近パンを食べてないことに気が付いた。そういえば、毎日お米ばっかり食べている。少し寒いけど、散歩がてらパン屋でも探そうと家をでる。しばらく歩いた頃に、白い外壁の建物と「亀の町ベーカリー」という看板を見つけた。ああ、神様。どうか私の新生活に祝福を‼期待と興奮と緊張が入り混じった手つきで、その扉を引く。

11月3日、日曜日。12時に待ち合わせって言ったのに、彼女はまた直前になって「今起きた!」とLINEしてくる。「今起きたなら、おそらくあと1時間はかかるな。一緒にランチする約束だったから、飲食店で待っているのは躊躇われるし……かと言ってこの辺で時間潰す場所なんかないよなー」と思っていたところ、いつも通る時は閉まってる「川端角のレトロ博物館」の扉が開いていた。外からでも昭和テイストなものがチラチラ見えていて、前から気になってはいたけど。思い切って足を踏み入れる。ものすごい物量。所狭しとレトロな玩具や雑貨、ポスターなんかが並べられている。両親も自分と同じ年の頃はこういう風景の中で過ごしていたんだろうか。知らないはずなのになんだか懐かしく思えてきた。

「11月3日さ、どこで飲む?」「この前言ってた、秋田駅前の日本酒たくさん置いてるって居酒屋は?」「うーん、そこ最近行ったしな、てか日本酒と郷土料理系の店ばっかり行って飽きてきちゃった」「確かに。新しい店、開拓したいよね」「……あ!あそこ!えっと、トピコの立ち飲みバーみたいなとこでさ、飲んだじゃん。クラフトビール、なんだっけ、あ、そう、あくらビール!」「ああ、飲んだねー。美味しかったね、あれ」「そのさ、あくらビールの直営のレストラン、大町にあるみたいで、なんかピザが美味しいって」「良いね。じゃあ、そこにしよう」「いやー、たまには知らないお店にトライする気持ちも必要だね。常に人生には新鮮さとトキメキが必要!」「なにそれ、どういう意味?」「だから、生活にも新陳代謝が大事ってことですよ」「なに?もう酔っ払ってる?」

マップは12月25日から、秋田市内の公共施設などで配布されます。まちに出て、残り3篇の小さな物語をぜひ探してみてください。

Information

マチアルキ

≪まちあるきツアーをつくる≫
■ 日時:2019年11月3日(日)13:00~17:00
■ 集合場所:秋田市民市場2階 会議室(秋田市中通4-7-35)
■ アテンダンド:RAD-Research for Architectural Domain-

≪SPACE LABOをみに行こう≫
■ 日時:
対話のスタディツアー 2019年11月10日(日)14:00~16:00
鑑賞のガイドツアー 2019年12月15日(日)10:00~12:00
■ 集合場所:秋田公立美術大学サテライトセンター
(秋田市中通2-8-1 フォンテAKITA6階)
■主催: 秋田市中心市街地活性化協議会
■企画運営: NPO法人アーツセンターあきた

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた 事務局長

三富章恵

静岡県生まれ。名古屋大学大学院国際開発研究科修了。2006年より、独立行政法人国際交流基金に勤務し、東京およびマニラ(フィリピン)において青少年交流や芸術文化交流、日本語教育の普及事業等に従事。
東日本大震災で被災経験をもつ青少年や児童養護施設に暮らす高校生のリーダーシップ研修や奨学事業を行う一般財団法人教育支援グローバル基金での勤務を経て、2018年4月より現職。

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