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能代北高跡地利活用可能性検討業務

秋田公立美術大学は能代市の委託を受け、更地となった能代北高跡地の利活用を探るため能代北高跡地利活用基礎調査を2020年度に実施しました。それを踏まえ、2021年度は高校生〜一般とのワークショップを開催し、2022年度から複数の実証実験プロジェクトを計画・実施しています。

Outline


委託者能代市
受託者受託者
事業期間2020年〜

秋田公立美術大学担当教員・助手

小杉栄次郎、井上宗則、石渡雄士、船山哲郎(秋田公立美術大学景観デザイン専攻)

アーツセンターあきたの役割

アーツセンターあきたでは、「北高跡地利活用」プロジェクトのコーディネーターとして基礎調査をコーディネートすると共に、能代北高跡地利活用スタートブック「これから、ここから」を制作しました。2021年度は市民とのワークショップを企画・運営し、ニューズレターを制作することでその経過を報告。2022年度から始まった実証実験プロジェクトではプロジェクトの企画・運営・広報を担っています。

担当スタッフ


能代の子どもたちに、どのようなまちを残すのかまちについて、未来について語り合う「思考継続型プロジェクト」

能代北高等学校と能代商業高等学校の統合に伴い、2014年3月に秋田県から能代市に譲与された通称「北高跡地」。空き地となった18,000㎡以上もの広さを誇る土地の利活用をめぐってはこれまで複数の提案や意見があり、商店街を含めた周辺とのつながりを考慮した検討が必要とされてきました。
秋田公立美術大学では能代市からの委託を受け、景観デザイン専攻によるプロジェクトチームが2020年度に基礎調査を実施。恒常的な施設を建設することを想定した地域の文化経済を底上げする文化施設プログラムの提案と、実験的に仮設建築物を増改築することを想定し、中心市街地活性化に向けた機運を醸成する思考継続型プロジェクトを提案しました。10年という長いスパンを見据えて語り合い、実験を繰り返しながら進めていく思考継続型のプロジェクトとして動き出しています。

#能代北高跡地利活用

プロジェクトを率いる秋田公立美術大学教授・小杉栄次郎
北高跡地の歴史的背景や利活用における基本コンセプトの検討、思考継続型プロジェクトの提案などで構成した能代北高跡地利活用スタートブック「これから、ここから。」

ワークショップを重ね、北高跡地の可能性を探りながら未来のまちの姿を描く

本事業では住民の意向把握やまちづくりへの関心を高めるため、利活用の可能性を検討するワークショップを開催しています。創造的な意見交換をおこなう「ワークショップ」と、ワークショップで提案されたアイデアを専門的な視点から検証する「技術的検討」を繰り返し、実施可能な「プロジェクト」によって検証していきます。2021年度は、高校生〜一般の市民とのワークショップを能代市にて複数回開催。ワークショップで提案された「北高跡地で取り組む実験的なプロジェクト」のアイデアを整理し、5つのプロジェクトとしてまとめました。

  • プロジェクト01 北高跡地に宿泊する(防災キャンプと天体観測)
  • プロジェクト02 北高跡地でスタートアップ(研究やリサーチのフロントオフィス)
  • プロジェクト03 北高跡地で展示する(文化財を楽しもう)
  • プロジェクト04 北高跡地でつくる(職人や企業とコラボしたワークショップ)
  • プロジェクト05 北高跡地で展望する(ランドマークはつくれるか?)
能代北高跡地利活用の可能性を探るワークショップ(2021年)

能代北高跡地の可能性を探る
実証実験プロジェクト、スタート!

能代北高跡地にはどのような利活用が考えられるのか、その可能性の幅を検証していくため、本事業では2022年度から実証実験プロジェクトに取り組んでいます。
実証実験プロジェクト第1弾「北高跡地に宿泊してみる」では、1泊2日の宿泊体験によって北高跡地の新たな可能性を探りました。キャンプをメインに、能代の歴史にふれるまちあるきや職人の指導による木工体験などを組み込んだ複合型のプロジェクトです。屋根のない北高跡地の広大な敷地にテントを張り、食事をつくり、参加者それぞれが自由に時間を過ごします。いつもの見慣れた空き地に長く滞在するという、いつもとは異なる体験が、この場所の新しい見方や公的な場としての可能性を探るきっかけになるのではと考えました。
第2弾として開催した「北高跡地で展望してみる」では、標高約18mの北高跡地で高所作業車に乗り、およそ15mの高さから能代のまちを見渡し、展望利用の可能性を探りました。「能代北高跡地に能代のランドマークはつくれないだろうか?」「秋田県内で一番長い米代川の流れや河口の様子を見たり、世界遺産の白神山地の山並みを一望したい」「気球を上げて、北高跡地から能代の街並みを眺めてみたい」。こういったアイデアをもとに計画したプロジェクトです。北高跡地からどのような展望ができるのか、いつもの街をいつもとは違う高さ、違う視点から見てみました。2023年以降も実証実験を繰り返しながら、能代のまちの姿を描いていきます。

実証実験プロジェクト第1弾「北高跡地に宿泊してみる」(2022年9月24日〜25日)
実証実験プロジェクト第2弾「北高跡地で展望してみる」(2022年11月20日)
実証実験プロジェクト第3弾「北高跡地でイロイロしてみる」(2023年10月14〜15日)

ワークショップと実証実験プロジェクトの経過は、ニューズレターで公開

ワークショップや実証実験プロジェクトの経過は、随時、アーツセンターあきたが制作する能代北高跡地のワークショップニューズレター「これから、ここから。」で公開しています。プロジェクトの経過に参加者やスタッフの声を交えながら、北高跡地の未来を共に考える媒体として編集中です。
能代北高跡地利活用スタートブック「これから、ここから。」とニューズレター「これから、ここから。」はこちらからご覧いただけます。

市民協働によるクリエイティブなまちづくりを、
アーツセンターあきたと共に

秋田公立美術大学教授

小杉 栄次郎 Eijiro Kosugi

公共施設は市民へ何かしらのサービスを提供するために整備されるものであり、それは今も昔も変わりません。近代以降に整備された日本のほとんどの公共施設は、行政主導で都市計画上の役割が明確に与えられた上で整備され、そこでの市民の立場は、サービスを享受する側というものでした。成長経済の只中ではそれが当たり前(と思い込んでいた?)で、なんとかやってこれたわけです。しかし、「縮小の時代」である現在、拡大経済成長路線時代のやり方で公共施設を持続させることは、財政的にも人材的にも困難であることが明らかです。

ではどうするか。

答えは簡単ではないですが、今言えることは、現在の街の状況を今後変えていくには、ここ数十年来かけて固定化されてきた公共事業の決定プロセスを見直す必要があることと、行政と市民の協働による公共施設の運営やサービスの在り方を模索せざるを得ないだろうということです。「自分たちの未来に本当に必要なものは何か」を、市民が議論する時間を増やし、実証実験なども含めた試行錯誤を経た上で公共事業の計画を進めることができれば、市民に愛される持続可能な文化と交流の公共施設が立ち現れる可能性は限りなく広がることでしょう。

市民と行政が一緒に未来を思考する創造的な場を、北高跡地利活用の計画プロセスに組み込めるかどうかが、従来型の公共施設を超えるための重要なポイントです。自分たちのまちのより良い未来を考えることは楽しいことですし、そのイメージを多くの人と共有す ることができれば、ここで何をすべきかが見えてきます。これはまさに市民協働によるクリエイティブなまちづくりです。北高跡利活用を考えることを契機に、能代のまちの未来を、より具体的に描いてみましょう。

撮影:伊藤靖史

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

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