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ドンパン娘キャラクター・ロゴ事業

秋⽥公⽴美術⼤学は2022年度、秋田県大仙市から委託を受け、同市中仙地域を代表するイベント「ドンパン祭り」の踊り子「ドンパン娘」のキャラクター・ロゴをコミュニケーションデザイン専攻の教員・学生が制作しました。2023年度は、その制作したキャラクター・ロゴを活用した商品デザインにも取り組みました。

Outline


委託者秋田県大仙市
受託者秋田公立美術大学
事業期間2022年5月〜

秋田公立美術大学担当教員

石川昌(コミュニケーションデザイン専攻)

秋田公立美術大学学生

吾妻楓子、高橋空乃、早坂七海、牧田颯平、増田美優、三塚陽菜
(いずれもコミュニケーションデザイン専攻)

アーツセンターあきたの役割

受託者と委託者との打ち合わせの日程調整や学生と教員が行う現地調査の手配、アーツセンターあきたWebでの事業広報や制作に関わるアンケート、制作物に関わる知的財産権の調整などを行いました。

担当スタッフ


地域に愛着が、思い出が、うまれるように

明るい曲調で親しまれている民謡「ドンパン節」。その発祥の地、大仙市中仙地域では毎年8月16日にドンパン祭りが開かれます。

ドンパン祭りのステージや地域内外のイベントで、お手本として踊るのが踊り子「ドンパン娘」です。そろいの絣衣裳と花飾りを身に付け、中学生から大人まで幅広い年代の約30人が活躍しています。

本事業ではドンパン節・ドンパン娘という中仙地域の伝統の知名度向上と継承を目的とし、ドンパン娘を題材に、2022年度に秋田公立美術大学コミュニケーションデザイン専攻の教員と学生がロゴとキャラクターを等身大版・ちびキャラ版の2体制作。市民が地域に愛着を持つきっかけとなるような、そして市外から訪れた人には中仙での思い出につながるようなキャラクターやロゴを提案しました。

ドンパン祭りで踊るドンパン娘
キャラクター・ロゴ制作に向けて話し合う学生ら

愛され続けるキャラクター・ロゴを目指して

キャラクター・ロゴ制作においては、中仙地域に訪れてドンパン娘らから聞き取りなどを行う事前調査を数回実施しました。さらに、市民が抱くドンパン娘のイメージとの乖離が起きないよう中仙地域全世帯、小中学校に対しアンケートを行うことで、市民の意見がデザインにも反映され、本事業の周知にもつながっています。

委託者の大仙市や、ドンパン祭りを開催するドンパン祭り実行委員会とは密に連絡を取り、ドンパン節・ドンパン娘のブランディングイメージを固め、デザインの変化がある度に4回のプレゼンテーションを実施し、よりよいキャラクター・ロゴが生まれるよう相互に協力しました。

フィールドワークでドンパン娘(左から2番目)のお手本を見ながらドンパン節を踊る学生

多くの方のご協力を得て完成したのがこちらのキャラクターとロゴです。

キャラクター「桜田まどか」等身大版・ちびキャラ版

【キャラクター名】
桜田まどか

【設定】
ドンパン踊りで人との輪を広げたくてドンパン娘になった女の子。
明るく積極的な性格で、1人の子を見かけると「一緒に踊ろ!」と声をかけている。
好きな食べ物はまんまるなお饅頭。おじいちゃん子。
「ド」の髪飾りと、たまに出る秋田弁がチャームポイント

【コンセプト】
同一キャラクターとして「等身大」と「ちびキャラ」の2種類を制作。
絣の柄が遠目だとドット柄のように見えること (ドット柄=円で構成された柄)」「円になって踊る盆踊り」などから『円』に着想を得てデザインした。
『円』のモチーフを元に、キャラクターの髪型やほっぺた、お花の髪飾りや絣の模様などから丸みを感じられるデザインとした。 踊りのポーズやドンパン娘の頭文字である「ド」の髪飾り、モチーフの『円』から展開した特徴的な髪型によって、他には無いオリジナリティを持ったキャラクターとなっている。特徴的な髪型、切り揃えられた前髪、太めのまゆ毛から素朴さとおばこらしさを演出した。

「等身大」は、色味を落として落ち着いた雰囲気をより強調し、ドンパン娘の凛とした女性らしさを表現した。
「ちびキャラ」は、元気いっぱいな表情にすることで ドンパン娘と私たちを繋いでくれるような親しみやすく明るいキャラ クターを表現した。

「ドンパン娘」ロゴ

【コンセプト】

ドンパン娘の髪飾りの「花」や大仙市にある水神社に祀られている鏡の意匠、カタカナの「ド」をデザインの要素として取り入れた。

「ト」の形は大仙市の地形から取り、白く抜かれた部分は ウサギのような形に見えるなど、大仙市の自然・文化・伝統がロゴから読み取れるようにし、ドンパン娘をはじめとした大仙市のさまざまな魅力を詰め込んでいる。 マークは「おばこ」にちなみ、中心から 8.5 度傾けている。配色は、ドンパン娘の衣装にも使われている赤と白の2色で、色数を少なくすることで、より使いやすいデザインにしている。また「これまで」と「これから」のドンパン娘の歴史の変遷が感じられるように、「ド」の濁点の境界線に掠れの表現を用いた。ロゴマーク単体でも、長く愛用されるように意識している。

ドンパン祭り実行委員会にキャラクターとロゴ案をプレゼンし、最終デザインを決定

制作過程をまとめたプロジェクトブックやマニュアルを制作

本事業の制作の過程をまとめた冊子も学生たち自身が制作しました。
学生たちがどのように考え、デザインしたかをご覧いただけます。

プロジェクトブック(クリックで全文をご覧いただけます)

キャラクター・ロゴは大仙市が管理をし、広報やお土産物へなど、広く事業者の方に使用されることを想定しています。そのため、設定や注意事項などをまとめたマニュアルを制作しました。
使用できるポーズや表情、色のほか、デザインを守るための注意事項も具体的に挙げています。

使用マニュアル(画像をクリックで全文をご覧いただけます)

キャラクター・ロゴの活用へ グッズを制作

2023年度は、制作したキャラクターやロゴを使ったグッズや商品デザイン案などに取り組みました。


2023年8月16日に大仙市中仙地域で5年ぶりに開かれたドンパン祭りでは、教員と学生がキャラクターとロゴを市民の方々に向けてお披露目しました。その際、お披露目用の横断幕やキャラクターの等身大パネル、ロゴの紙うちわなどを制作し、祭りでキャラクター・ロゴのPRを行いました。

ドンパン祭りでキャラクター&ロゴをお披露目する学生。等身大パネルや横断幕も制作
ロゴが入った紙うちわも制作。ドンパン祭りで学生が配布した

このほか、ドンパン祭り実行委員会(大仙市中仙支所)や地元のお菓子屋「藤田菓子店」、道の駅なかせんを運営する「物産中仙」の協力を得て、グッズ制作にも取り組みました。

グッズ制作においては、事業者にどんなグッズが求められているかなどの聞き取りを行い、今後の販売も見据えた試作品として多数のデザインを提案しました。

制作したグッズの一部(非売品)

今後もキャラクター、ロゴが大仙市中仙地域の「ドンパン娘」とともに人々に愛されていくよう、活用を進めていく予定です。

まどかのこれからの活躍が待ち遠しい

秋田公立美術大学コミュニケーションデザイン専攻

吾妻楓子、高橋空乃、早坂七海、牧田颯平、増田美優、三塚陽菜

吾妻楓子「メンバーが受身ではなく、全員で意見を出して考えて一生懸命でした。みんな1個1個のスキルが凄くて、いっしょに頑張ろうという気持ちになって、成長につながったと感じます。デザインも最初はメンバーそれぞれが提案したデザインから、良いところを話し合って組み合わせました。その過程があって、みんなが納得いく形で『まどかちゃん』に決まったのがいい流れだったと思います。
私は最終的にちびキャラのイラストを担当しました。お祭りで発表するときも想像以上にドキドキでしたが、お祭りに訪れた人たちも受け入れてくれていて、制作者としてとても嬉しかったです」

高橋空乃「チームで動けたことによる思い出がいっぱいできました。最初は拙い状態だったのが、フィールドワークを経て、話し合いを重ねて、案を出して、デザインを絞ってという過程を経て、すごい信頼感が生まれて。みんなと仲良くなれたことも含めてこの事業に関われてよかったと感じています。
キャラ・ロゴが完成した2年目から活動が加速したなと思います。今では大量のグッズがあるし、私たちが作ったもの以外を大仙市の方々で自主的にいろいろ作ってくださっています。作ったもの以上のものを得られたと思っています。すごいいいプロジェクトでした」

早坂七海「この大学に入ったのは、デザインで地域と関わりたい、地域活性化に携わりたいという理由でした。まさにそれを叶えられるプロジェクトに携われたのが良い経験になったと思います。学生でこんなに地域に反映されるデザインができるってなかなかないと思いますし、これは秋田だからこそできたと思うので、この大学に入ってよかったと思いました。こんなに地域に影響できるものを作れたという自信が、社会人になっても武器になります。2年目のスピード感が印象深いです。駆け足でお祭りの準備して、グッズ作ってという、忙しかったはずなのに、大変という記憶はなくて。ひたすらに楽しかったなという思い出です」

牧田颯平「メンバーとして声をかけていただいたのは3年生の編入学直後。正直、ドンパン娘って何?、大仙市ってどこ?という状態でした。でも、時間が経つにつれてドンパン娘やドンパン節のことを知って、デザインもメンバーの一人一人が得意なことを結集させて、この最強の『まどかちゃん』やロゴができました。チームで一つのものを作り上げていくという良さを言葉でなく、心で理解できたと感じます。結果的に出てきたもの以上の思い出、ものをつくることに対しての楽しさ、忙しさがあり、尊い時間を過ごさせていました」

増田美優「人から愛されるキャラクターを作るには、まず自分たちが愛してあげること。これこそが私が今回のプロジェクトで得た大きな学びです。リサーチからたっぷりと時間をかけ、大仙市の方々とも協力しながら創り上げたまどかちゃんですが、時間をかければかけるほど、創り手である私たちもまどかちゃんのことが大好きになっていきました。そしてそんなまどかちゃんが人々にたくさん愛されて欲しいと強く願いながら、メンバーの皆さんと試行錯誤しつつ制作に臨んだあの時間は、間違いなく自身の力になりましたし、何にも変えられない大切な思い出です。私たちが心から愛し、楽しみながら作り上げたまどかちゃんが、みなさんに楽しさを分け与え、愛される存在となりますように」

三塚陽菜「自分の好きなイラストを描いたりデザインをしたりというのは大学でもできると思いますが、この事業を通して、メンバーみんなとフィールドワークやチームとして関わりながら一つのものを作るという経験ができ、そもそも秋美に入った時にそういうことをしたいなと思っていたので、個人的にすごい嬉しかったです。1年目はドンパン祭りが中止で行けなくて、2年目でやっとお披露目できました。あの日が夢みたいでした。スタンプラリーを押している人を間近で見られたり、うちわ持って踊っているとか、パネルの写真を撮っているとか身に沁みました。またいつか、大仙市に遊びにいった時、道の駅などに『まどかちゃんコーナー』ができてたらと思うと、今から待ち遠しいです」

愛され続けるキャラクターへ

大仙市中仙支所地域活性化推進室

門脇 友梨華 Kadowaki Erika

当市では令和4年度から、旧市町村単位の地域内に拠点施設を設け地域の活性化を図る「彩色千輪プロジェクト」を進めています。当市中仙地域では「道の駅なかせん」を拠点施設として選定し、地域活性化に向けて様々な事業を実施していくこととしております。

本事業の中でドンパン節、ドンパン踊りを活用した事業の一つとして、秋田公立美術大学との共同で「ドンパン娘シンボルキャラクター・ロゴ制作事業」を実施いたしました。中仙地域の代表的な文化・観光資源である「ドンパン祭り」の踊り子「ドンパン娘」のより多様かつ効果的な地域PRと地域の利潤の創出、地域文化への理解増進を図る取り組みに広く活用するため、キャラクターとロゴの制作に取り組みました。

令和4年度、石川昌先生と学生の皆さんはフィールドワークやドンパン娘出演イベントへの参加を通して、ドンパン娘の活動や地域の文化、自然資源に触れ、イラスト制作のイメージづくりを行いました。フィールドワークの際は事前に自分たちの中でドンパン娘をイメージしてイラストに起こしてくださり、私たちもキャラクターやロゴのイメージがしやすくなりました。令和4年度のドンパン祭りは大雨により中止となってしまいましたが、中仙地域の小中学校や地域住民へのアンケートを実施してくださり、大変意欲的に取り組んでいただきました。

その後、アンケートの意見を取り込みながらドンパン祭り実行委員会へのプレゼンを経てドンパン娘のキャラクター「桜田まどか」とドンパン娘を象徴するロゴが完成しました。

令和5年度は完成したキャラクター・ロゴをさらに発展させ、実際に市の事業所と共に活用していく「ドンパン娘シンボルキャラクター・ロゴ活用事業」として実施しました。令和5年度のドンパン祭りでキャラクター・ロゴをお披露目すべく、祭りで配布できるうちわや展示にも活用できるのぼり旗、パネル等もデザインいただきました。実際に「まどか」ちゃんを見た方からはかわいいと非常に好評で、すでにグッズはあるのかといった問い合わせが入ってきております。道の駅なかせん内にてグッズの配布を行った際には、すぐになくなるほどでこれから先の活用にも期待が膨らんでおります。

ドンパン祭りへもご参加いただき、キャラクター・ロゴのお披露目発表も担っていただきました。地域内事業所ともそれぞれ密な打合せをしていただき提案内容についてもご満足いただけました。早速事業への活用を試みていただいております。

秋田公立美術大学の皆さんには、事業において非常に精力的に活動していただきました。皆さんから愛されるキャラクターを制作していただき、また活用方法について様々なご提案をいただき感謝申し上げます。

またアーツセンターあきたのご担当者伊藤さんには日頃から綿密な打合せをさせていただいたおかげで無事に事業を完了することができました。

令和6年度はこの2年間の活動をさらに飛躍させ、桜田まどか、ロゴマークを市民の皆さん、そして道の駅なかせんを訪れる皆さんにより愛される存在として活躍できるよう、またご協力いただきたいと考えております。石川先生、学生の皆さん、伊藤さん、2年間当市の地域活性化にご協力いただき本当にありがとうございました。

地域のアイデンティティをデザインする

秋田公立美術大学コミュニケーションデザイン専攻准教授

石川 昌 Ishikawa Masaru

デザインの現場では、「多数決によってデザインを決定しない」という教えが存在します。これは、単にデザインを行うだけでなく、その後のデザインの影響力について責任を負う必要があるというプロフェッショナリズムの観点からきています。したがって時流や一時の思いつきではなく、責任ある慎重なアプローチが必要です。

このプロジェクトは、依頼されたキャラクターやロゴデザインの必要性についての議論から始まりました。関係者へのヒアリングを通じて、若い世代が担う文化の継承と地域愛の両面から、このデザイン制作の妥当性を確信しました。複数の先行事例を調査・分析した後、最初に3つの方向性でデザインを進めます。具体的には、1: 一般的な好みに合致するアニメ系キャラクター、2: 要素を最小限に抑えつつも特徴を保持したシンプルなキャラクター、3: 多様性を反映し、個性的かつ挑戦的なキャラクターを提案しました。これらのアプローチにより、デザインの核心部分を抽出することが可能となりました。

地域への誇りや愛着、そして市民の自発的な意志や活動を「シビック・プライド」と言います。地域連携や協働の観点からも、製作者の単方向的な提案ではなく、地域住民がデザインプロセスに少しでも関与することが重要であると考え、市民アンケートを実施しました。多数決ではなく、3つの異なるデザインコンセプトに関する意見を収集し、その良い部分を取り入れながら何度も微調整を行い、最終的に1つのデザインに統合しました。

目のハイライトから等身比率、絣や帯の忠実な表現、指先からつま先までの細部に至るまで、1mm単位の精緻な作業は、キャラクターに生命を吹き込むために不可欠でした。
デザインは一見些細なもののように思われがちで、完成した作品は、単に「かわいいね」という一言で片付けられるかもしれません。しかし、我々デザイナーは、数多くの「かわいい」という概念の中から、各プロジェクトごとに適切な「かわいい」を幅広く考慮し、解像度を高めて「解を出す」任務を背負っているのです。

本プロジェクトは、地域のアイデンティティを視覚化することでもありました。デザインの開発において重要なのは、個々のデザインだけでなく、市民や事業者、各機関が利用する複合的なデザインを想定し、それを基盤として設計することです。デザイン教育の一環として、社会的課題や地域の発展に取り組むことは、客観的かつメタ的な視点を持ち、持続可能な視座を養うという点においても非常に意味深く有効です。

このプロジェクトを通じて、各々が持てる力を十分に発揮しながら協力し合う姿勢や意義のあるデザイン課題に真摯に取り組んだ学生たちに、私は誇りを感じます。今後は完成したデザインの活用やマーケティングの段階に進みますが、新しいメンバーと共に地域の発展に貢献できることを楽しみにしつつ、責任と決意を持ってデザインスキルの向上を目指します。

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた

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