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映像制作ワークショップ 「からだでアニメーションをうごかそう」

【こどもアートLab2020レポート③】
こどもたちの感性を育み、自由な発想を引き出す「こどもアートLab」。2020年度の第3回目は、自分でアニメーションをつくって身体で動かす映像制作のワークショップです。みんなどんなアニメをつくったのかな? 参加者の作品を公開!

第3回 こどもアートLab
「からだでアニメーションをうごかそう」開催!

秋田公立美術大学が主催する「こどもアートLab」は、こどもたちの自由な発想を引き出す創造のプラットフォームとして、主に秋田公立美術大学サテライトセンターを会場に2019年度から開催しています。「たくさんの新しい発見と、あふれる発想に出会いたい」という思いから、教員や卒業生、秋田県内外で面白い活動をしている人をLabリーダーに迎え、2020年度も幅広い内容で活動しました。

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2020年11月21日(土)におこなった「からだでアニメーションをうごかそう」のLabリーダーは萩原健一さん。秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻の教員として映像やメディアアートを専門としているほか、小中学生、高校生を対象に視聴覚を扱ったワークショップをおこなっています。

2019年度は自分で採取した音を身体の動きと合わせ、演奏するワークショップを開催。今回もさらに視聴覚をテーマに組み立て、こどもたちと映像をつくりました!

▼「からだでアニメーションをうごかそう」記録映像はこちら

映像はどうやってつくられているのかな?

「からだでアニメーションをうごかそう」では、こどもたちにとって身近な存在である“映像”をつくりました。テレビやYouTube、ゲームなどで映像に触れることの多いこどもたちですが、それはどうやって生まれ、どうやってつくられているのでしょうか。ワークショップの始まりです!

Labリーダーの萩原健一さん

まずは自分のこと、好きなアニメのことなどを話してもらって自己紹介。そこにこどもたちをサポートする秋田公立美術大学の学生も加わります。最初は萩原さんが、映画の誕生以前からの映像装置についてレクチャー。歴史上の映像装置に用いられた動力に触れながら、「映像における運動」に着目しました。

絵が動いて見える映像の原理の根本には、1コマ1コマを連続で表示する間欠運動が存在します。映画誕生以前の視覚玩具を見返してみると、伸縮するゴムやゼンマイ、振り子など様々な動力を工夫してダイナミックに「運動」をつくっていたことがわかりますね!

いつも見ているアニメーションにはどういう意味があるの?
映像のつくり始めのころの工夫を知ることで、映像の原理を学びます

4コマの“うごき”をつくってみよう!

会場にはテーブルとライト、そして映像を映し出すモニターを設置。折り紙やテープ、マジックなどもあります。これから何が始まるのか、こどもたちはそわそわ、わくわく…。それを見守る学生たちも緊張気味です。

今回、小学生向けに企画した「からだでアニメーションをうごかそう」では、アニメーションを即興的に制作するソフトを新たに開発しました。Labリーダーの萩原さんが林文洲さん(秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科)と共同で開発した即興アニメ制作装置[4koma]を活用します。

この撮影ソフトは、テーブルに設置したカメラがテーブルの上を4分割に切り出すというもの。時計回りに進む4コマの撮影に合わせて、リアルタイムで素材を配置し、即興的に“うごき”をつくっていきます。萩原さんや林さん、学生たちのサポートで、こどもたちも少しずつ触っていきました。

撮影するカメラの下に素材を配置。カメラはテーブルの上を4分割に切り出していきます

初めての体験ながら、こどもたちには4フレームという限定されたコマ数を効果的に活用する観察力と素材選びが求められました。画用紙を切ったり、描いたり、テープやモールを使ったり…。4コマで小さなストーリーがそれぞれ出来上がっていきます。みんな、どんなアニメーションをつくったのかな?

テーブルの上にハサミが4本…

即興的なトライアンドエラーにひそむ創造性

ワークショップで使用した即興アニメ制作装置[4koma]の面白いところは、「常に更新されていく画面を見ながら即興的にトライアンドエラーを繰り返していく、そのスピード感にあります」と萩原さん。テーブルの上に素材を置いて、そこからほんの少し位置をズラすだけで、動いて見えたり、見えなかったり。4コマの世界には創造的な試行錯誤が常に存在しています。

「アニメーションに必要な『うごきを分解する』という思考が刺激され、直感的に学べます。あえて4コマに制限しているのが効いていて、うまくいかなかったら止めて、すぐ新しいものをつくり始めればよい気楽さもあります」と萩原さんが言うように、こどもたちはトライアンドエラーを繰り返しながら、様々な4コマをたくさんつくっていきました。

テーブルに紙テープを並べました
紙テープになにやらキラキラしたものもくっつけて…

▼まるで宇宙空間での爆発のよう!?

4コマアニメを発表!

猫がけんかをしたり、何かが爆発したり、花びらが舞い散ったり、雨が降ったり…。たった4コマなのに、それぞれが自分の世界を試行錯誤しながらつくっていきます。そして、いよいよ発表会です!

▼猫がけんかしてるよ

▼カエルが雨宿りしているね

▼花びらが舞う様子はきれいだけれど、ちょっぴり切ない…

アニメーションを顔の表情で動かす

発表会では、4コマの“うごき”を自分の表情(顔の運動)を動かすことで操作します。会場の壁に、アニメーションと制作者の顔が大きく映し出されました。顔認識システムを用いることによって、制作者の表情に連動してアニメーションが進みます。

顔認証システムを用いて、顔の表情を動かすことでアニメーションを動かします
発表会では、制作したアニメーションと自分の顔を大きく投影
顔の表情を動かすことで、アニメーションのコマを進めます

Labリーダーの萩原さんにとっても、「からだでアニメーションをうごかそう」はとても面白いワークショップだったようです。[4koma]の活用に加え、顔認証システムを使ったのはコロナ禍だからこその意味もありました。

「現在の映像体験からは、コマが進むダイナミックな運動を想像することは難しいです。そこで今回は、自分の身体を動力に『運動』をつくり出す体験を持ち込みたいと考えました。ルームランナーを使って走ったり、手回しハンドルを使ったりなどいろいろな構想があったのですが、普段は使わない筋肉を取り入れたいと思い、顔の表情を存分に動かす発表会にしました。ちょうどコロナ禍のマスクによって、人の表情が見えにくい世の中になってしまったというのも理由のひとつです。会場の壁に大きく投影して発表をおこなったのですが、顔とアニメーションがモンタージュされて、それぞれ単体のイメージとは異なる鑑賞体験が生まれたのは予想外で面白い効果でした」(萩原)

映像はどうやってつくるのか、面白い動きを見せるのはどうしたらいいのか・・。「からだでアニメーションをうごかそう」は、即興的で、ダイナミックで、創造的なワークショップとなりました。

Profile 作家プロフィール

秋田公立美術大学准教授

萩原 健一

写真表現を基本にスチル、ムービー問わず多様な映像メディアを用いて作品制作を行っている。アーティスト支援を目的とした映像ソフトウェアのディレクションや教育現場での実践、プログラマーやエンジニアと協働したメディア教育教材の開発を研究の軸とする。近年は秋田県内企業とコラボしながらデジタル漁具の開発に取り組み、秋田の自然とクリエイターの新しいつながりを模索中。

Information

こどもアートLab2020「からだでアニメーションをうごかそう」

[日時]2020年11月21日(土)10:00~14:00
[会場]秋田公立美術大学サテライトセンター
[Labリーダー]萩原健一(秋田公立美術大学准教授)
[4koma開発]林文洲
[WSスタッフ]朝倉泰臣、乙戸将司
[音楽制作]國府田拓郎

Writer この記事を書いた人

アーツセンターあきた チーフ

高橋ともみ

秋田県生まれ。博物館・新聞社・制作会社等に勤務後、フリーランス。取材・編集・執筆をしながら秋田でのんびり暮らす。2016年秋田県立美術館学芸員、2018年からアーツセンターあきたで秋田公立美術大学関連の展覧会企画、編集・広報を担当。ももさだ界隈で引き取った猫と暮らしています。

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