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あそび×まなびのひろば
森で紡いだ「ことば」から、森と人との関係を知る

2022.08.23

【大森山アートプロジェクト2022レポート】
秋田市大森山動物園と秋田公立美術大学が取り組む大森山アートプロジェクトが今年も大森山公園一帯で開催中です。グリーン広場や彫刻の森では、森で紡いだ「ことばのしるし」の数々が森の奥へと誘います。

大森山公園で「大森山アートプロジェクト2022」開催中!

秋田市大森山動物園〜あきぎんオモリンの森〜と秋田公立美術大学が取り組む「大森山アートプロジェクト」が2022年度も大森山公園一帯で開催中です。
大森山公園グリーン広場から彫刻の森にかけて展開する「あそび×まなびのひろば」は、遊びのなかで学び、学びのなかから新たな遊びをつくる創造的な広場として2019年に始まり、今年4回目を迎えました。大森山の魅力を掘り起こし、アートを通した発見や遊びをつくることを目的に運営するプロジェクトの今年のテーマは「ことば」です。
あそび×まなびの広場Vol.1〜Vol.3
▼大森山アートプロジェクト2019 大森山公園「彫刻の森」に秘密基地が出現!?
▼大森山アートプロジェクト2020 冒険しに行こう!大森山の「森の居場所」へ
▼大森山アートプロジェクト2021 「鳥の巣画廊」の巣箱をのぞいて、森のなかへ!

大森山公園のグリーン広場から彫刻の森にかけて展開する「あそび×まなびのひろば」へ

「あそび×まなびのひろば -ことばのしるし-」は大森山公園グリーン広場周辺にて9月4日(日)まで。会期初日には学生が案内・解説するオープニングイベントを開催

オープニングイベントでは先着20人に学生お手製の記念品をプレゼント。何が入っていたのかな?

森で紡いだ「ことば」の数々に
森で出会う

「あそび×まなびのひろば」の今年のテーマは「ことば」。コミュニケーションが十分には行えない違和感が続くなか、学生・卒業生の16人それぞれがいま感じていることばを紡ぎ出し、詩、歌、文章などのことばをしるし、森のなかで制作しました。

佐藤雪乃《呼吸の残痕》は木々や足もとの草むらを麻紐で結び、弛ませながらも繋いでいった作品。樹木に取り付けた板には「私たちの生活が変わっても 森は変わらず息をする」のことばがありました。
「私たちが今見ている風景は、この場所に流れる長い時間の中の僅かな一部分でしかない。その時間は森の中で息づくモノたちが歩き、呼吸をし、積み重ねてきた命の営みである。この場所に立った時、私たちの呼吸もまた時間となり森と一つになる。結ばれた紐で現れるのは時間の姿である」

麻紐を使った佐藤雪乃《呼吸の残痕》

齋藤涼花《あ、居る。》は、階段を登って歩いた先の草むらで出会う小さな椅子で紡ぐことば。
「お日様が出ていても、そこは暗い森。夜はもちろん、深く暗い森。耳を澄ましてみて。なかで蠢く生命の音。どこまで続くのかわからない森だけれど、森があればそこにいのちは居る。森から音がするということは、そこに何かが居るということ」

齋藤涼花《あ、居る。》

「そっとすわってください。そして 本をひらいて森をみてごらん」

風の「声」は聞こえるだろうか

グリーン広場に吹き渡る風を受けてたなびくのは、瀧澤采未《風に声》。麻布が大きく動く風は、何かの「声」なのでしょうか。麻布のはためきは「より風を可視化させ、風の『声』を表現したもの」と瀧澤。
「新屋の街に吹き止まないこの風は、巡りめぐって私の故郷にも届くのだろうか。そんな風ともし話せたら、私はみんなが元気か訊きたい」

大きくえぐるような足跡を草むらに刻んだのは、古谷優々子《Be there》。これは誰のものなのか。どこへ行くのだろうか?
「足跡はその時そこに何者かが存在していたという存在証明である。またそれは文字として残ってゆく『ことば』ともどこか共通しているように感じた」と古谷。

この足跡は、なぜここにあるのか。
なぜここにいるのか、なぜここにいたのか…。

森のなかで足跡に出会った人の数だけ、物語が始まります。

瀧澤采未《風に声》

古谷優々子《Be there》

木村麟之輔《森のキノロ》はオープニング日限定のワークショップを開催。ところで「キノロ」とは?

「キノロ」は移動する自作のきのこ型電気炉。稼働時は中にあるコイル状の電線が真っ赤に輝き、800度ほどの高熱を放つ

植物や枝葉を積み重ね、
ことばのちからを吹き込んで

なだらかな傾斜の草むらに、横たわっているかのような身体。あるいは動物の死体のような黒い物体…。服部正浩《コトダマ》は大森山公園で枝や雑草を拾い集め、麻紐を使って形作ったもの。
「ことばにはちからがある。真名(まな)というものをご存知だろうか。古来より呪術や魔術にとって文字やことばは重要なものであるが、西洋では真名を悪魔に知られると魂を支配され、逆に悪魔の真名を知るとそれを自在に操れるという。
私はこの作品に真名を与えた。はたして彼は動いてくれるだろうか」

編み込むように形作られた物体の体内を覗き込むと、文字が書かれた紙が見えます。
何が書かれているのか、どんな魂を吹き込んだのか…。
時間とともにその姿も変化していきます。

服部正浩《コトダマ》

自然環境のなかでの「連歌」が「前後の句だけでなく、ここ大森山のような自然環境にも影響を受けながら一つの大きな連歌をつくっていく」という早坂葉《環境の連歌》

グリーン広場のなだらかな地形にことばが連なる

遠藤緋那《思いを馳せて》

麻布で覆った小さなテントが目を引くのは、遠藤緋那が縄文時代の人々の暮らしを想像して制作した《思いを馳せて》。中にある土器のようなものは、信仰のために使われた縄文土器をイメージしたもの。
「自然との境界が僅かしかなく自然と一つになって暮らしているような感覚を感じることで、自然に対する信仰心が生まれてきたのだと感じさせられます。自然の美しさや神聖さと、縄文時代の人々が自然と共に暮らして生まれた信仰を感じてほしいです」

「かれら」と対話し、交信する
森の木々や人との関係性

藁を編み、水をたたえた小さな溜池を作ったのは都竹泰河《ともに とどく かれらに》。大地に根を張りめぐらすかのように力強くうねる藁は、森や大地とのつながりや関係性を示唆します。
「この場に参与していくために、あらゆる『かれら』との対話・交信を図っていく。私たちは意味を持たないことばが書かれた紙をイメージと共に水に溶かす。藁籠によってつくられた溜池には濾されたグルーヴのようなものだけが充満する。その水は少しずつ大地に溶け出し、『かれら』に届く。
元々ことばだった物たちは空想と現実の間で揺れ動く微細な波として私たちと、木々や水、魚たちなどとの対話を促してくれるだろう」

二次元バーコードで読み取った動画をスマホで見ながら、導かれるように、切り株の上にあるケースを開ける。
くるくると巻かれた1枚の紙を取り出す。
文字を読む。
溜池を覗き込み、その紙を水の中へ。

もともとことばだった物たちは、波となり、
揺れめきとなってやがて消えていく。


▲都竹泰河 アニメーション《ともに とどく かれらに》

ことばをしたためた紙が水に溶けていく。ことばは森に届いただろうか?