秋田県横手市出身の蒐集家・油谷満夫さんが、70年以上にわたって集め続けてきた50万点を超える膨大なコレクション。かつて人々の暮らしの中で使われていた民具や日用品、用途のわからない不思議な道具まで、その一つひとつには、さまざまな時代の人々の営みが刻まれています。
これらのコレクションを、これからどのように残し、社会にひらいていくことができるのでしょうか。
「民具とアートとアーカイブの研究所(民具ラボ)」では、民具を単に過去の暮らしを伝える資料として保存するだけでなく、現代を生きる私たちの想像力や創造性を刺激する存在として捉え直す活動を続けています。
2026年夏には、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで展覧会「蒐集がアートになるとき」を開催。現代美術の視点から油谷さんの蒐集を見つめ直し、ものを残すことの意味や、その価値の可能性を問いかけました。
今回、秋田市文化創造館で開催する「うごめく、民具。-ものの記憶、これからのかたち」は、その取り組みをさらに展開するプロジェクト型の展覧会です。
京都展で発表された作品の一部を紹介するとともに、アーティストによる滞在制作や、市民とともに民具を分類・整理するプロジェクト「1/1000油谷コレクション」などを行います。制作や活動の過程も公開するワーク・イン・プログレス形式で展開し、日々新たな発見や表現が生まれ、会場の様子も変化していく展覧会です。ものを観察し、手に取り、誰かと語り合う。その過程で、これまで気づかなかった価値や新しい表現が生まれるかもしれません。
収蔵庫の中で眠っていた民具が、人と出会い、さまざまな関わりを通して、再び動き始める。
「うごめく、民具」は、ものと人との新たな関係を探りながら、50万点のコレクションのこれからを、みなさんと一緒に考える展覧会です。

民具と蒐集の営みを、アートの視点から見つめ直す
50万点を超える民具や日用品を集め続けてきた油谷満夫さん。その膨大なコレクションだけでなく、70年以上にわたる蒐集の行為そのものにも目を向けます。京都で開催した展覧会「蒐集がアートになるとき」の出展作品の一部を紹介するとともに、アーティストが秋田に滞在し、新たな作品制作に取り組みます。民具の新たな魅力や可能性を探りながら、油谷さんの蒐集の軌跡を記録し、その営みが持つ意味や価値をアートの視点から捉え直します。
参加作家
油谷 満夫 Michio Aburaya
昭和9年、秋田県横手市生まれ。県立大曲農学校卒。昭和25年から民具の収集を始める。昭和54年から13年間、角館町「青柳家」に「民具の館」を開き、「平鹿町農村文化伝承館」の主任に就く。その後、秋田県湯沢市秋の宮温泉郷に秋乃宮博物館を平成4年に開館(平成22年閉館)。平成24年4月「(特活)油谷これくしょん」を設立(令和6年解散)。現在も秋田市を拠点に資料の整理・保存に取り組む。
イタイ ミナコ Minako Itai
1994年福岡県生まれ、2014年8月広島で土砂災害に遭うことをきっかけにあらゆる地域の潜在的な可能性を探る文化ツーリズムを始める。現在広島市営基町高層アパート自治会長を務め、ライフワークとして住民との対話を日々繰り返しながら活動している。
岩根 愛 Ai Iwane
フィールドワークをベースに無形文化や自然伝承を紐解いて、写真、映像作品を制作している。写真集『KIPUKA』(青幻舎)にて第44回木村伊兵衛写真賞等受賞。著作に『キプカへの旅』(太田出版)『Coho Come Home』( bookshop M)等。
國政 サトシ Satoshi Kunimasa
名古屋芸術大学講師、民具ラボ副所長。染織の技法を自身の身近な素材を使い再構築して作品制作している。同時に地域によって培われた様々な染織の素材や技法をリサーチしながら、いま生きるための創造を実践していく。2024年から「1/1000油谷コレクション」プロジェクトに参加し、現在民具ラボのメンバーとして活動。
服部 浩之 Hiroyuki Hattori
愛知県立芸術大学教授、国際芸術センター青森[ACAC]館長。キュレーターとして、参加や協働を軸にしたプロジェクトにアジア圏の表現者たちと取り組む。数年にわたる油谷満夫氏への聞き取りを元に、地域とミュージアムの未来を模索するべく書籍『蒐集がアートになるとき』を上梓。
藤 浩志 Hiroshi Fuji
京都市立芸術大学大学院修了 パプアニューギニア国立芸術学校講師、都市計画事務所、藤浩志企画制作室、十和田市現代美術館館長、秋田市文化創造館館長、秋田公立美術大学教授を経て東京藝術大学客員教授 国内外で様々なアートプロジェクトを実践。 www.fujistudio.co
山岸耕輔・瀬戸彩花 Kosuke Yamagishi, Ayaka Seto
山岸は映像や身体表現を用いた作品を制作しており、瀬戸は情報工学を基盤とした研究や3Dデジタル技術を用いた作品制作に取り組む。二人は秋田公立美術大学で助手として活動する傍ら、作品や展示空間の新たな記録・保存手法について共同研究を行っている。

50万点のこれからに、あなたも関わってみませんか?
油谷満夫さんが集めた膨大なコレクション。その一つひとつを手に取り、観察し、記録する分類整理活動に参加してみませんか。専門的な知識や経験は必要ありません。何に使われていたのか、どんな暮らしの中にあったのか。参加者同士で発見や疑問を共有しながら、ものに向き合います。民具を未来へつなぐための活動に、ぜひご参加ください。
■活動内容
・民具の搬入出
秋田県内にある油谷さんの倉庫から民具を搬出し、秋田市文化創造館に搬入する作業を行います。また、分類整理が終了後、倉庫に民具を搬入します。※重い物の持ち運びが発生します。
・民具の清掃・修繕
民具の埃を落としたり、磨いたり、壊れた部分を補修・修繕したりします。
・民具の分類整理
民具を種類などに応じて分類、整理します。
・民具の記録
一つひとつの民具の用途などについて、油谷さんや詳しい方に聞き取ってカードに記入します。また、民具一点一点を写真撮影します。
・民具の活用
分類、整理した民具の使い方のアイデアを出したり、実際に使ってみたり、展示をしたりします。
■お申込み方法
募集要項を確認の上、お申し込みフォームよりお申し込みください。
▼募集要項
▼お申し込みフォーム

見る、聞く、描く、語り合う。民具をめぐるさまざまな出会い
展覧会の会期中には、書籍『蒐集がアートになるとき』の出版記念トークや、参加作家によるアーティストトーク、民具を描くワークショップなど、多彩なイベントを開催します。さらに、50万点のコレクションのこれからを参加者と語り合う場も設けます。さまざまな角度から民具に触れ、考え、語り合うことで、ものと私たちの新しい関係を探ります。
①アーティストトーク
國政サトシ、イタイミナコ、山岸耕輔・瀬戸彩花らが登壇。油谷コレクションと向き合う中で見いだした発見や、作品制作の背景を紹介します。アーティストのまなざしを通して、民具の新たな魅力に迫ります。
●日時:2026年11月28日(土)13:30~14:30
●登壇者:國政サトシ、イタイミナコ、山岸耕輔・瀬戸彩花ほか
②書籍『蒐集がアートになるとき』出版記念トークイベント
70年以上にわたって民具を蒐集してきた油谷満夫さん。その人生とコレクションを記録した書籍の刊行を記念し、制作の過程や取材を通して見えてきたこと、ものを残すことの意味について語り合います。
●日時:2026年11月29日(日)13:30~14:30
●登壇者:服部浩之、岩根愛
③カタルバー「50万点と、これから」
油谷さんの50万点を超えるコレクション。これから、どう残し、どうひらき、どう関わっていけるか。集まった人がそれぞれに気づいたことや感じたこと、アイデアを持ち寄って、50万点とのこれからをざっくばらんに話します。
●日時:2026年12月5日(土)13:30~14:30
④ワークショップ「draw-ming(ドローミング)」
油谷コレクションの中から、気になる民具をひとつ選んで、じっくり眺め、描いてみます。アーティスト・藤浩志と一緒に、描くことから民具に出会うワークショップです。
●日時:2026年12月6日(日)13:30~15:00
●講師:藤浩志
●定員:20名(要事前予約、参加無料)
●お申し込み:
Googleフォームに必要事項をご記入の上、お申込みください。
https://forms.gle/SEiavyLU1M1dmCEo8
⑤アーティストによる滞在制作
アーティストが会場に滞在し、油谷コレクションと向き合いながら作品を制作します。倉庫から持ち出されたものを眺め、触れ、そこから着想をえたり、ときには素材として用いたりしながら、新たな表現へと展開。日々変化していく制作の過程も含めて公開します。
●期間:2026年11月21日(土)~12月10日(木) ※作家により滞在期間が異なります。
●作家:イタイミナコ、藤浩志 ほか

Information
民具ラボ展覧会「うごめく、民具。-ものの記憶、これからのかたち」
50万点を超える民具や日用品を集め続けてきた蒐集家・油谷満夫。その膨大なコレクションと蒐集の営みを、アートの視点から見つめ直す展覧会。アーティストによる作品展示や滞在制作、市民とともに取り組む民具の分類整理プロジェクト「1/1000油谷コレクション」などを通じて、ものを残すことの意味や新たな可能性を探ります。制作や活動の過程を公開しながら、日々会場が変化していく展覧会です。
●会期:2026年11月21日(土)~12月10日(木)10:00~17:00(火曜休館)
●会場:秋田市文化創造館2FスタジオA1(秋田市千秋明徳町3-16)
●参加作家:油谷満夫、イタイミナコ、國政サトシ、服部浩之、岩根愛、藤浩志、山岸耕輔・瀬戸彩花
●主催:NPO法人アーツセンターあきた、民具とアートとアーカイブの研究所(民具ラボ)
●助成:公益財団法人 小笠原敏晶記念財団
●後援:秋田市、秋田公立美術大学、秋田魁新報社、CNA秋田ケーブルテレビ、日本民具学会
チラシダウンロード
Instagram @aburaya.aca