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菅江真澄の記録をもとに時空を超えた追跡へ
「幻の泥塑天子を探して」

2020.12.29

【ARTS & ROUTES展インタビュー③秋田人形道祖神プロジェクト】
江戸時代の紀行家・菅江真澄の足跡を起点に「旅と表現」を主題として開催中の展覧会「ARTS & ROUTES -あわいをたどる旅-」(秋田県立近代美術館)。秋田人形道祖神プロジェクトが見せたルポルタージュとは、取材のプロセスとはーー。

江戸時代後期の紀行家・菅江真澄の旅と記録を起点に、近世・近代、そして現代の美術のあわいをたどる展覧会「ARTS & ROUTES -あわいをたどる旅-」(3月7日まで秋田ふるさと村内、秋田県立近代美術館で開催中)。真澄の描いた図絵や文章を手がかりに、様々な領域のあわいから生まれる「旅と表現」の現在を探究する多層的なプロジェクトです。

本展では、現代のアーティストたちの作品に加え、『菅江真澄遊覧記』の写本をはじめとした博物館や美術館が収蔵する近世・近代の作品・資料などを現代の表現と対峙するように展開。過去から現在へと至る多様な表現の混交によって、出来事や時間などかたちをもたないものを展覧会として描き出す試みです。

秋田人形道祖神プロジェクトが、
菅江真澄の記録をもとに時空を超える!

出展プロジェクトのひとつである秋田人形道祖神プロジェクト(https://dosojin.jp/)の郷土史家・小松和彦とアートクリエイター・宮原葉月は、秋田県内各地に数多く祀られている人形道祖神を取材し、紹介する活動を続けています。小松は菅江真澄の軌跡をたどることから始まった本展に、リサーチアソシエイトとしても参加。起点ともなった2019年の第1回「菅江真澄をたどる勉強会」では、江戸時代に真澄が記録した人形道祖神や、真澄の観察眼についてレクチャーしました。

▼菅江真澄をたどる勉強会「菅江真澄をたどるプロジェクト 最も古い形態の人形道祖神を記録した観察眼」

通常は小松が文、宮原が絵を担当して書籍や新聞紙面という平面で発表しますが、本展では、その舞台は美術館の空間となりました。集落を訪ね歩き、地元の人から話を聞くことでかたちにしていくルポルタージュを美術館で、現代アートの展覧会においてどう見せるのか。200年前に図絵と文章で記録した真澄の足跡をたどり、追跡していく過程をどのように表し、空間をつくっていくのか。美術館で見せることは、二人にとって挑戦でもありました。

菅江真澄をオマージュした追跡で
2つのストーリーが交差する

疫病などの災いから人々を守る民間信仰の神様と地域コミュニティーの交わりを追う秋田人形道祖神プロジェクトの作品は「幻の泥塑天子を探して」

秋田人形道祖神プロジェクトによる出展作品は、「幻の泥塑天子(どうそてんし)を探して 人形道祖神の空白地帯『阿仁』のショウキサマ巡り」。『菅江真澄遊覧記』をオマージュした言葉と絵が壁面いっぱいに展開されていきます。

「菅江真澄が記録した人形道祖神のなかでも最も古い資料というのが、1802年、現在の森吉ダムの場所に存在していた桐内村で出会った神様です。真澄は『泥塑天子』という名前で記録して、雪の中で、恐ろしい形相の人形が立っているのを見てとても驚いたことを書いています。桐内村はダムに沈んでもう存在しませんが、祀られていた石碑などはダム湖を見下ろす神社に移設されています。真澄が記録した『泥塑天子』は今でも存在するのか、そこに調査に向かったのが始まりでした」

泥塑天子を追跡する阿仁・森吉山麓のルートマップ(絵:宮原葉月)

小松と宮原は、真澄が訪れた1802年から約200年後の12月21日、雪をかき分けて神社に入りました。そこで出会ったのが、木の板に顔が彫られた2柱の人形の頭部です。
「その時、2柱の頭部が二ツ井にある『小掛のショウキサマ』とよく似ていることに気づきました」と小松。小掛と桐内は約40km離れ、桐内村があった阿仁・森吉地区は現在、人形道祖神は祀られてない空白地帯とされています。
「もしかしたら、2つの地点を結ぶ何かがあったのではないか。現在は空白地帯とされている阿仁・森吉地区にも似たようなショウキサマが点在していたのではないか。その謎を解いてみたいと思い、お面を取材したのがこのルポルタージュのスタートとなりました」

展示は菅江真澄へのオマージュとして、『菅江真澄遊覧記』を真似ながら日記調に進んでいきます。リサーチを重ね、追跡していく小松の日記を主軸として、宮原の色彩渦巻く人形道祖神画が躍動感を、地元の人々の言葉の数々がルポルタージュにしみじみとした味わいを与えていきます。

小松の日記調の文章を軸として、宮原の人形道祖神画と地域の人々の言葉が壁面を埋めつくす

以前ショウキサマを作っていたというおじいさんから話を聞いて描いたショウキサマ(絵:宮原葉月)

現在も作り替えが行われている「小掛のショウキサマ」(絵:宮原葉月)

現在も作り替えが続けられ、祀られている「小掛のショウキサマ」と、失われてしまってはいるものの神社にお面だけ、あるいは地元の人たちの記憶の中に生きるショウキサマの2つのストーリーは、やがて時空を超えて交差します。

地元の人々の営みと紡ぎ出される言葉を追うことで繋がり、見えてきた回答とは、どんなものだったのでしょうか。謎かけをすることで見えてきた過去と現在、未来を繋ぐストーリーが、「小掛のショウキサマ」(1974年、秋田県立博物館所蔵)の姿と共に浮かび上がってきます。

地域の人たちによる作り替えの行事を線画で(絵:宮原葉月)

小松と宮原が2017年に秋田人形道祖神プロジェクトを結成して3年。二人の取材は、これまでどのようなプロセスで行われてきたのでしょうか。その手法やアプローチ方法、人形道祖神の魅力について聞きました。