アーツセンターあきたでは、現在秋田公立美術大学社会連携事業のコーディネーションに従事するコーディネーター人材の募集を行っています。「美大の社会連携事業ってどんなことやるの?」「コーディネーターって、どんな仕事?」などと、質問を寄せられることが少なくない職種。外からはわかりにくいコーディネーターの仕事内容や職場の雰囲気について、現場のスタッフとともにざっくばらんに話す座談会を含むオンライン説明会を8月8日に開催しました。
YouTubeでのライブ配信を予定していた説明会ですが、事前準備不足と経験不足、機材の不具合が重なり、ライブ配信に失敗!
気を取り直して録画した説明会の様子を、進行を務めた三富がレポートします。
多様な経験をもつコーディネーター
今回の説明会に登壇したのは、2018年のアーツセンターあきたに立ち上げと同時に加わった田村さんと、2022年に中途採用で入社した伊藤さんの2人。前職の職種は知っていましたが、大学卒業からどんな経歴をたどってきたのかや、志望動機等を改めて聞いてみると、意外と知らないこと、忘れていたことが多いこと、またそれぞれの経験の多様性を実感します。
ちなみに田村さんは、海外で暮らしたいという夢があって、最初のメーカーでの仕事を辞めてロンドンで1年暮らした経験があったそう。その後に大学院に進学し、今の仕事にたどり着いたそう。伊藤さんの前職は地方紙の新聞記者。離島や中山間地にも赴任し、事件、事故、医療関係など幅広いニュースをカバーしていたとのことです。
6つの質問で探る、コーディネーターの仕事
座談会では、「どんな仕事を日々しているの?」「どんな働き方?」「必要なスキルは?」「入社前後のギャップはあった?」「一番楽しかった仕事と辛かった仕事」「社内はどんな雰囲気?」という6つの質問を糸口に、美大の社会連携事業のコーディネーターとしての仕事内容や働き方、必要なスキルやマインドセットなどについて深掘りしていく形で進行しました。
■どんな仕事を日々しているの?
田村さんからは、壁打ちを含む相談対応、企画提案、契約、調達、予算管理、報告書執筆といった、タスクベースでの仕事内容の紹介がありました。伊藤さんには、実際に担当したプロジェクト「ドンパン娘キャラクター・ロゴ事業」と「新屋横断歩道橋色彩計画プロジェクト」を例に、プロジェクトの進行にあたってどんな役割を自身が果たしてきたかを説明していただきました。
■どんな働き方?
2人からは、1日の勤務スケジュールや1年間の事業の流れについて紹介いただきました。
秋田公立美術大学の社会連携事業は、県内の地方自治体と連携する事業が比較的多いのが現状です。4月の年度初めは契約事務が多く、6月から9月が多くのプロジェクトが稼働し、秋以降は次年度の企画提案と調整、3月は報告書の作成で最も忙しい時期というのが通常のスケジュールとのこと。季節によって比重の大きいタスクの種類や繁忙の具合が異なりますが、フレックスタイム制の勤務体系を上手く活用しながらプライベートの充実も図れているようです。
■必要なスキルは?
応募資格で示した以外にあった方が良いスキルやマインドセットについて質問したところ、田村さんからは「あったら良い」という具体的なスキルの例示がありました。ワークショップのプログラムをつくる、会場のレイアウト設計ができること、Adobeのソフトが使いこなせること、車の長距離運転が苦じゃないこと等々。例示されるスキルノバリエーションをみると、コーディネーターとしての業務の幅を改めて実感します。また、段取りを組むスキルや、情報を積極的に共有するマインド、美大と地域の間をつなぎ、時代の変化に対してチューニングしていく力も大切だという補足もありました。
伊藤さんは、事務作業を丁寧にこなせる力、相談先の想いを聞き取る傾聴力、美大教員の発想を受け止める柔軟性やその発想を相談先に伝える提案力の4つを指摘。地域の方と美大とをつなぐ役割を果たすコーディネーターは、時に板挟みにもあいますが、関係者の想いや予算、納期という諸条件を見極めながら、最も良い形に落としどころを見つけ、いかにそこに向けて調整していくかが腕の見せ所でもあります。
■入社前後のギャップって、正直あった?
アーツセンターあきたの事業開始とともにチームに加わった田村さん。設立前の様子も知っていたために、ギャップは特になかったと言いつつも、自分自身がプロジェクトを企画して動かすよりも、美大の教員を中心に専門家を巻き込みながらやたり、学生に任せたりと、細かく役割分担していく点がイメージとは違ったと説明。伊藤さんは、書類仕事が多いことを真っ先にあげつつ、美大の社会連携事業はキャラクターデザイン等の制作系の仕事が多いイメージをもっていたが、調査・研究に係るプロジェクトも比較的多いということがイメージと違ったそうです。
確かに、美大の社会連携事業は、地域への貢献のみならず、研究や学生たちの実践経験の蓄積という教育的側面を有している点で、調査・研究的なプロジェクトにも力をいれているという点が特徴ですが、そこは伝わりにくいポイントかもしれません。
■一番楽しかった仕事、辛かった仕事?
伊藤さんは、契約事務に関する業務は未経験が故に辛かったとのこと。コーディネーション業務の中では、著作権の処理についても重要なポイントになるため、権利の取扱いについては専門家に相談しながら、知見を蓄積していくことが重要になっています。一方で、楽しかった仕事として、担当したプロジェクト「新屋横断歩道橋色彩計画プロジェクト」で完成した歩道橋の渡り初め式の際の地域の人たちの反応をあげていました。自分が担当したプロジェクトが地域の方々に喜ばれている様子を見るのが嬉しいとの発言には、大きくうなずきます。
田村さんは、辛いことはないと断言(頼もしい!)。楽しい仕事としては、視察や知らない人と出会うことをあげました。知らない土地、知らない人、知らない価値観に出会うことを楽しむ、面白がれることは、コーディネーターとして必須の条件かもしれません。
■社内の雰囲気は?
事業チームが勤務するのは、秋田公立美術大学のキャンパス内にあるアトリエももさだの一角。収録は、事務室内のデスクや打合せスペースで行いました。キャンパス内にあるが故に、美大の先生や学生、地域の方々の出入りが多いのも特徴です。
少ない人数で複数のプロジェクトを担当しているため、普段は各自が作業に集中して、やや静かな雰囲気ですが、時に社内チャットを用いて議論や雑談が展開されたり、オンライン/オフラインをうまく使い分けながらスタッフ同士のコミュニケーションが図られている様子が紹介されました。
たくさんの方のご応募をお待ちしております!
初めて開催したオンライン採用説明会。座談会では、日頃の業務の中ではあまり話すことのない、仕事への向き合い方や興味関心のポイント等を率直に聞くことができて、私自身も楽しみながら進行しつつ、改めて秋田公立美術大学の社会連携事業の意義や、意義を発揮するために必要なコーディネーターの役割を確認することができました。
アーツセンターあきたの事業チーム コーディネーターの求人募集の締め切りは9月8日(日)。たくさんの方のご応募をお待ちしております。
▼募集要項「事業チーム コーディネーター」
登壇者プロフィール
田村 剛 Tsuyoshi Tamura
兵庫県生まれ。農機工機メーカーにて勤務後、3年の濃密な空白期間の後に大学進学。個人の風景体験と社会的な風景認識との関係を研究。秋田公立美術大学開学と同時に景観デザイン専攻の助手として赴任。地域住民と学生との個人間ネットワークづくりを目指し、学生時代から学んでいたまちづくりやプレイヤー育成を学生と一緒に取り組んだ。現在、アーツセンターあきたにて、主に秋田公立美術大学の地域連携事業を担当する。
伊藤 あさみ Asami Ito
新潟県生まれ。元新聞記者。地域の話題から医療・政治・司法関連まで幅広く執筆。2022年より、アーツセンターあきたにて主に秋田公立美術大学の地域連携事業を担当。離島暮らしや豪雪地帯を経験した中で、伝統が残る祭事や風土などに触れ、どんな所でもその土地ならではの良さがあふれているなと感じています。好きなゲームはDQ11。
三富 章恵 Yukie Mitomi
静岡県生まれ。名古屋大学大学院国際開発研究科修了。2006年より、独立行政法人国際交流基金に勤務し、東京およびマニラ(フィリピン)において青少年交流や芸術文化交流、日本語教育の普及事業等に従事。東日本大震災で被災経験をもつ青少年や児童養護施設に暮らす高校生のリーダーシップ研修や奨学事業を行う一般財団法人教育支援グローバル基金での勤務を経て、2018年4月より現職。