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不確かな自分の輪郭とは。存在を形作るものとは
アニメーションが映す「現在」と「未来」

2022.08.08

秋田公立美術大学にてアニメーションや実写映像、イラストレーション等を制作の軸とする学生9人が参加したアニメーション作品展「Now Playing 2」。存在することの曖昧さや日々の不安、不確かさ。あるいは何気ない日常を見つめて切り取った短編アニメーション9作品を公開します。

短編アニメーション9作品が描く「現在」と「未来」
アニメーション作品展「Now Playing 2」

秋田公立美術大学は、それぞれの思考、時間、視線を通して描いた学生9人によるアニメーション作品展「Now Playing 2」をサテライトセンターにて開催しました。短編アニメーション作品のほか制作過程の絵コンテや人形なども公開した「Now Playing 2」の全9作品をアーカイブします。


Now Playing 2メインビジュアル:石前詞美、CM撮影・編集:中川舞

コロナ禍にあって、日々の不安や不確かさ、曖昧さ、心に抱くもどかしさや切なさは学生生活にどう影響しているのでしょうか。学生たちは日々何を考えながら制作を続けているのでしょうか。そんな思いから2021年度に開催したアニメーション作品展「Now Playing」は学生たちの現在「再生中」のいまを問い、「日常」をあらためて見つめ直す試みでした。
2回目となる2022年度は「Now Playing 2」として7月に開催。アニメーションや実写映像、イラストレーション、3DCGなどを制作の軸とする秋田公立美術大学2〜4年の学生9人が出展しました。

心の微妙な揺れ動きや不安感を描いた《ハーバリウム》

心の不安定さや不確かさ、感情の機微をアニメーションで表現する菊地美咲(コミュニケーションデザイン専攻4年)は、女性の微妙な心の揺れ動きを短編アニメーション《ハーバリウム》に描きました。
ハーバリウムとは、ブリザーブドフラワーやドライフラワーを専用オイルに浸け、ガラス瓶などで長期保存する植物標本のこと。生花の美しさとはまた違った趣きが現実から離れた浮遊感や幻想感をもたらします。
アニメーションに登場するのは、日々のささやかな暮らしのなかで病んだ心を「異食」の行為で紛らわせる女性。「幸福と苦痛と孤独を飲み込もうとする彼女は、彼の一時的な感情の表象として存在する花に強く依存している。そうしながら彼女は自分の役割を全うしている」と菊地。
この日々は続くのか、いつか破綻する日を迎えるのか。淡いトーンで描く画面とは裏腹に不穏な空気を感じさせます。


菊地美咲《ハーバリウム》

ケチャップのシミを使ったコマ撮りアニメ

オリジナルキャラクターのアニメーションや食べ物を使ったコマ撮りアニメを制作する村田晴加(ビジュアルアーツ専攻4年)は、食卓を舞台にプロジェクションマッピングを展開。ギャラリーに設置した食卓の上でゆるやかに動き出すのは、ケチャップで描いた赤いシミです。
「いつの間にか付いているシミ。あっちにもこっちにも広がっている。もしかしたら、動いているのかもしれない」と村田。トマトを切ってお湯を沸かし、パスタを茹で、フライパンでソースを絡めて仕上げる動きや、食卓にテーブルクロスを敷いて皿を並べて食べる様子をコマ撮りと音で描きます。

昨年の「Now Playing」で村田は円形のスクリーンや窓枠にキャラクターを投影しました。日常のなかに何気なく存在して動く様子や気配が、昨年から今年にかけての1年のなかで少しずつ変化を見せています。


村田晴加《シミアニメ「食卓」》

展示台はコンロとなり、テーブルとなって、調理と盛り付けが行われます

奇妙な生き物の観察記録

同じくオリジナルキャラクターのアニメーション作品《ウサギアタマクラゲ》は、大場明(ビジュアルアーツ専攻4年)の作品。うさぎの耳のような頭部の突起はまるで腕であるかのように動き、透けて見える内臓はあたかもうさぎが泣いているかのように見えます。「この奇妙はクラゲは、何者なのか?」と大場。

水槽の中を行き来したり、崩れて落ち込んだり、分裂したり…。不思議な生命体の観察なのか、あるいは自分自身の心の動きの観察なのか。ひとつひとつの動きに一喜一憂しながら見つめた観察日記でもあります。


大場明《ウサギアタマクラゲ》

実験記録ともいえる《働きと効果のアニメーション》

イラストレーションを表現手段とする三國楓太(2年)の《働きと効果のアニメーション》は、3つの作品。
普段何気なく使っている、日常生活に欠かすことのできないもの。シャワー、ガスコンロ、蛍光灯とスイッチといった日々使用している機器の働きと効果、面白さに注目。つぶさに見つめ、アニメーションとして描いた三國自身の実験記録ともいえる作品です。会場では3画面としてそれぞれのアニメーションを同時に映しました。


三國楓太《働きと効果のアニメーション》

赤いレバーを操作することで変わる「軸」

白い展示台から飛び出た赤いレバーが目を引くのは、岡部悠太(ビジュアルアーツ専攻3年)の《axes》。
「axes」とは「軸」のこと。壁面に映し出された白い物体は上下に跳ねる動きを続けるだけですが、レバーを操作することで背景が動き、白い物体の進行方向が変わったように見えます。一方、地面だけに注目すると、変わっていくのは背景の動きだけ。白い物体と背景、そのどちらに主軸を置くかで、見え方、感じ方が変わるアニメーション作品です。


岡部悠太《axes》